うだつの上がらないエッセイ集(2)

月澄狸

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もしかして断れない?

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 時々「断れない性格」みたいな言葉を耳にしますね。何か誘われたり頼まれたりしたとき断れないという、騙されやすそうな性格(失礼)。
 個人的に「断れない性格」の方って、「いつも人に気を使ってしまう人」のイメージです。気を使うから本音が言えない、疲れていても気が乗らなくても忙しくても断れない、みたいな。いつも仲間に囲まれていそうな感じもあります。人に気を使い、優しいから友達も多い、みたいな。

 私は気を使うタイプではないので、「断れない性格」とは無縁だと思ってきました。いや、自分としては常にオドオドビクビクしている感じなのですが、ふと気が緩むと無意識に傲慢な言動をしているらしく、なぜか怒られるのです。「攻撃的だね」とか「常識がない」とか。自分で「私は気を使うタイプ」と思っていたとしても、人から「ワガママだね」「自己中だよね」と言われるならワガママで自己中なのでしょう。……というわけでまわりの反応を見ると私は、「断れない」ような繊細なタイプではないはずなのです(むしろ断りすぎ?)。

 ところが何か……誰かから「こうした方がいいよ」と言われると、まるで命令のように重荷に感じてしまうのです。「この曲すごく良いから聴いてみてよ」なんて言われたら、次にその人と会うまでに絶対聴いておかなきゃいけないような。「聴けたら聴くね」って言えば良いのですが、「聴けたら聴く」って言ってしまったらやっぱり聴かないといけないような。
 これってもしかして、「断れない性格」の原型というか心理?

 曲くらい試しに聴いてみりゃ良いじゃん、って思う人もいるかもしれませんが、私は集中力がないというかストライクゾーンが狭いというか、たとえ数十秒でも、自分の趣味と違うことをするのは苦痛なのです。性に合わない話を聞くのも苦手。授業中に教室を飛び出すようなことはなかったけど、こっそり絵を描いたり工作したり、集中できてはいなかったような。今になって、一生懸命人に合わせ、人の心理を知ろうとしているけど、人に合わせられない根本は変わらない気がします。仕事では一生懸命合わせているのだから、それ以外は外したい、みたいな。

 でもちょっと進歩した部分もあって。今は、「攻撃的だね」「常識がない」というほどのきつい言葉を面と向かってかけられることはなくなりました(うっかり陰口を聞いてしまったときは二日ほど沈みこんだけど)。現在まわりの方が比較的穏やかな人ばかりであること、また私が挨拶など必要最低限のコミュニケーションを頑張っていること、そして余計なことを言わず基本的に黙っていること(重要)、などが理由であると思われます。

 多分ですが、前は人の気持ちがまったく分からなかったのですが、今は少し理解していると思います。辛うじて会話が成立する程度には。無難な言葉をワンパターンに繰り返すだけですが、以前より会話になっています(失言狂なので慣れない言葉は言わない方がうまくいく、特に対面では。あとまわりの人が急いでいるときに引き留めて雑談したらダメですね)。

 中高生の頃からネットに入り浸り始め、コメント欄覗き魔となって、人の気持ちをじわじわ学習しました。友達は今も昔もいないけど、ネットなら人同士が喋っていることや投稿など、友達じゃなくても人間の心理を覗けます。これで学習し、現実世界においても当たり障りない言動ができるようになってきたのではないでしょうか。とか言ってみんな我慢してるだけで、いつかいきなり怒られたら怖いけど……。

 このように(?)、まわりから見たらけっこうワガママでも、私自身の性格としてはやはり「断れない」「気を使う」なのかもしれません。
 たまにありますよね、普段失礼なことしか言わない人が、妙なところで気を使おうとするとか。「なんでそこだけ急に?」と。それってその人の感覚がまわりとズレているだけで、その自身は気遣い屋(?)なのかもしれません。

 しかし変なとこで気遣って、肝心の部分で外しまくっているようでは、なんというか……台無し。
 ポイントを抑え、不必要なことろで自分の意志を抑えすぎたり、「ここで我を出してはいけないだろう」という場面で自分を出さないよう、上手にワガママに生きていきたいですね。


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