生や社会への恐怖、老いや年齢に関する疑問。誰にも聞けないから自問自答する。

月澄狸

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個人の命より社会の存続が大事なのか……安楽死議論が怖い

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 なぜ生まれたのか。どんなふうに死んでいくのか。未来が怖い。楽しい世界になっていくなら良いけれど、動けなくなった途端、急に冷たくされ、殺されるかもしれないと思うと怖い。


 不安。恐怖。そういうものに弱い人は弱い。
 私は身近な大人に恐怖をぶつけたかった……それで「大丈夫だよ」と、ものすごい包容力と安心感で包んでもらいたかった。

 ところが人生の先輩たちも忙しくて疲れていて短気で、不安そうなのだ。不安や恐怖をぶつけたら倒れてしまうかもしれない。誰も答えを持っていそうにないし、「あなたは絶対大丈夫」などと無責任なことも言ってくれない。無責任になだめてくれたところで、実際自分の人生がそのようにならなかったら、「嘘じゃないか!」と思ってしまいそうだ。
 誰も先のことなんて分からないし、責任など負いきれない。

 なぜ生きていかねばならないのか。なんで生まれてしまったのだろう。それでも、死の恐怖から逃れるように生きてゆく。何かに追い立てられるように。


 もしも「一週間後に惨殺される」ということが確実に分かっていたらどうだろう。
 最後の一週間、楽しめる?
 私は無理だ。

 なら一ヶ月後だったら?
 半年後は? 一年後だったら?


 こんな話をしていると、世の中には余命宣告された方もいるのに、不謹慎というか不安を煽るというか、ひどいことを言っているようで、「黙った方がいいぞ」と思う。けれど頭の中だけで考えていても、どうにもモヤモヤする。いつ、どうやって死ぬか分からないという圧倒的事実を、目に付かないところに隠したところで、忘れることができない。

 一年後でも二年後でも、殺されること、死ぬことが分かっていたら私は楽しめない。
 仮に「余命三年」と言われても抗いたい。絶対死ぬと決まったわけじゃない、奇跡的に病気が治った人だっているじゃないか、と。


 私は生きるべき人間か? この世に貢献できる、価値ある人間か?

 そんなのどうだっていい。生まれたから生きている、死にたくないんだ。
 いや、死にたくないというより苦しみたくない。精神的にも肉体的にも。こういうことでクヨクヨ不安になってしまう。心が弱い。でもしょうがないじゃないか。


 小学1年生の頃、予防接種から泣いて逃げ回った。みんな泣きはしても逃げ回らなかっただろうに……。いや、泣いてすらいないのか?
 歯医者に行くのも憂鬱だ。痛い治療をしなければならなかったら嫌だ。

 子どもを生むのも痛いらしいから嫌だ。苦痛大嫌い人間なのだ。セックスをするのも最初は特に痛いとか聞いたから嫌だ。

 とにかく痛いと分かっていることを選ぶのが嫌だ。痛いか痛くないか実際には分からない、安楽死も嫌だ。誰かが言っていたけど、傍目には安らかな死に見えても、本人は苦しいかもしれないじゃないか。


 私は怖い。病院とか、命をコントロールされるとかが。
 骨折したときも、湿疹が増えたときも、しばらく病院には行かなかった。病院が苦手なのかも。

 そして「みんなこうしているんだから」という同調圧力みたいなのが苦手だ。
 昔、「お国のために死になさい」と言われてみんな死んでいった……なら、今だってそれは実現できてしまうはず。

「日本は高齢者や障がい者を養いきれなくなりました。働けない人は安楽死させてください」というような世界になるかもしれない。戦争などという意味不明なことが起こってしまうこの世界、何が起こってもおかしくないのでは。


 誰かに殺されるとしても、「いつ」とかはまったく知らされず、銃で頭だか心臓だかを一発で撃ち抜かれて、即死するんだったらまだ良い。原爆の話を聞いても、即死できず苦しんだ人がとても気の毒で、爆心地で即死できればまだ良かっただろうに、と思ってしまう。他の人がどう考えるか、私とは違うかもしれないけれど、苦しむのも、苦しませるのも嫌だ。


 ところが創作ストーリー上はけっこう残虐なものを好んでしまう。
 あえて残虐なものを見て、現実ではそれを回避する道を探りたいと願うからなのか? 実はヤバいレベルの加虐趣味があって、それを無意識に抑えこんでいるだけなのか?

 夢の中でよく小動物を握りつぶしていたところを見ると後者かもしれないが、そこはまぁ、制御不能にならなければ大丈夫だろう。うっかり調子に乗っておかしい言動をしたり、不注意なことをするのはよくあるので、とにかく今は人に怪我を負わせないように、気をつけながら毎日を生きることだ。


 中学生の頃に、通学路で何度も動物の死骸を見た。なぜか異常に動物の死骸が多く、ネコ、ウサギ、カメ、トンビなど、グチャグチャになった遺体を見た。すごくショックで、動揺した。

 傷、血、腐敗。見開かれた目。怖くて、死というものを目の当たりにして悲しくて、そこから私は何かに取り憑かれたのかもしれない。動物の屠殺や殺処分について調べ、「検索してはいけない言葉」などを検索しまくり……。「人はギロチンで首を切断されてもしばらくは生きている」という説について検索したり、首を切られても動く動物の動画を見て回ったりした。

 どうも興味の方向性がおかしいが、「なぜそういうことをしているのか」理由はよく分からない。「こうかも」「ああかも」と後から理由付けすることは可能だが、私の言動は理由が先立っておらず後付けのため、文章にしてみても矛盾が多い気がする。

「分からない」が本音だが、昔「なんでこんなことしたの!」「なんで分からないの!」とよく怒られたので、自分の言動に理由を付ける癖が付いたのかもしれない。

 残虐なことに興味を示す、いわゆる「怖いもの見たさ」……。
 実はみんな人に言わないだけで、多かれ少なかれそういうものなのか? 今でもたまに「ロードキル」など検索する。


 頑張って生きても、国のお役に立てなくなった途端、「安楽死だね」などと言われかねない、狂った未来への恐怖。先が見えなくて不安で、「誰かに殺されるくらいなら自分で死んでやる!」と自殺する人が増えてしまうのだろうか。

 AIと会話した人が自殺したニュース。AIに洗脳の意図はないだろうが、洗脳のような形になったのかもしれない。
 恐怖につけ込み、恐怖から逃れられない方向に追い込む。精神的にまだ余裕のある人なら、嫌な感じのする情報から離れ、「楽しいことでもして忘れよう」と思えるだろうが、元々心配性で恐怖に取り憑かれ気味だったり、心や身体が疲れていたりする人にネガティブな言葉を延々と浴びせかければ、当然、死に追いやってしまう可能性があるのだろう。

 つまり別にAIだ何だというのは関係ない……いや、AIに神のような力があると思っている人には、AIが吹き込む不安は重いかもしれないけれど……。
 私の文章でも、心が弱った人をさらに弱らせ、不安に同調して恐怖を増幅し、「だったらもう死ぬ」と思わせてしまう可能性がなくはない。人間は人間を追い込んでしまう。


 だから私は、元気ハツラツ、楽しく過ごすべきなのだ。
 が、「二年後に惨殺される」と分かっていれば人生を楽しめないように、この先世界が冷酷になる可能性を思うと、恐怖や不安が先にきてしまって、それを無視して楽しそうに振る舞い続けることができない。

 となると必要なのは、何らかの救いを見つけること。
「信じる者は(神によって)救われる」でなく「信じることで(精神的に)救われる」だとしても良い。なんでも良い。

 私は、ザックリ言うと「自殺すると地獄に落ちる。天寿を全うすると天国に行ける」という説を信じている。
 地獄とか天国という言葉は宗教に関するものなので、言葉の意味が間違っているかもしれないが、「自殺せずに最後まで生きるのがこの人生の一つの目標であり、それができただけで合格。この世から逃れたくて自殺をすると、逆にこの世から抜けられない。最後まで生きることによって、天国のような世界に行ける。こことは違う世界も選べるようになる(そのために単位を取る必要がある、みたいな?)」という話を信じているのだ。

 ちなみに事故死や病死は自殺ではなく、定められた寿命を生きたということで合格だったような。
 とにかく自殺をすると不合格、同じ人生やり直しになる、と。


 私は自殺が怖いからしない。安楽死も怖い。「一週間後に安楽死ですからね~」とか「今からやりますよ」なんて言われること、そういう空気になること、どう想像しても耐え難い。

 かといって延命されるのもしんどいらしいが、一度「延命なし」と言ってしまうと、本人の意識が戻っても延命しないとか……何やら恐ろしげな話を小耳に挟んだ。恐ろしすぎて逃げ出したので、あんまり理解していないけれど、やっぱり自然死以外怖い。命を生かすだの死なすだの……。


 動物に関しては私は、安楽死させる発想が苦手だ。生き物は痛くても苦しくても生きようとするイメージがある。「子どもに自分の体を食わせる」など、壮絶な死を遂げることが生態にまで組み込まれている生き物もいる。生き物は「苦痛から逃れる」などという次元で生きているわけではないのではないか。だから、「不治の病だから安楽死」という話を聞くと「どうだろう」と思ってしまう。「苦しいから死ぬ」というのは動物本来の意志ではないのではないか。

 しかし人間は不必要な苦痛から逃れたい生き物だ。だからこそ、自殺や安楽死や延命といった概念があるのだ。
 生きたいもの、死にたいもの、そう単純ではない領域。

 延命されたら苦しいから安楽死? 治るかもしれないから延命? 安楽死は不自然だし苦しいかもしれないから延命? 延命って、何をどのレベルまで?
 私は安楽死が怖いと言っているが、実際「生きる方が苦しい」状態になればどうするだろう。


 しかし、そもそも生きたいか死にたいかだけの話でなく、「お金や手間がかかる、人手不足、介護が大変、増えてゆく高齢者」という問題が絡んでくるために、この先「色々な選択肢」などと悠長なことを言っていられるか分からないのだ。選択肢の一つとして、尊厳死とか安楽死とか、選びたい人のために存在することは大事かもしれないが、それが強制的な空気になっていきそうで。
 赤紙がきたら無視できない、特攻しろと言われたらしなくてはならない、そんな時代のように。


 すると、とにかく「お金がないから何も選べない」状態が怖くなる。そして人はお金を貯める。
 そうしたらどこぞの政治家が、「年寄りが金を貯め込んでいるから使わせないと」と言ったとか言わないとか。

 そりゃ、こんな不穏な世の中、お金を貯めたくなるに決まっている。現状、お金があれば色々選べるし、お金がある人がお金をすべて奪われることはないだろうから(税金とかで取られるのだろうけど)。

 特に、信頼できる人もそんなにいなければ、お金だけが信頼できるもので、お金がすべてだ。まぁ、お金がどうのというシステムも支配者が作ったものだろうから、都合の良いようにどうとでもされるだろうけど。

 お年寄りが貯めたお金は、自由のために貯めたものだ。貯めなきゃやっていられない。すごく頑張られたのだろう。
 それを奪おうなどと政治家が考えているのなら非道でしかない。社会は人から不安を取り除くものでなく、じわじわ不安に追いやる、使い捨て社会でしかなくなるのか。


 人生への希望、解決法が見つからないならもう、「不安を語り尽くす作戦」でいくか。あれも不安、これも不安……と不安のすべてを語り尽くせば、「そうなったらなったときだ」と腹を括れるかもしれない。


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