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女は美しくあるべき、みたいな風潮とか。老いへの恐怖って肉体的なことだけじゃないのでは

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 病気になる、衰える、これは肉体の作り的にしょうがない。しかし人々は老化や死を恐れ、抗う。
 好きなときに好きなことをしたい、自分の力で生きたい、できるだけ健康でいたい、それは分かる。が、テレビやチラシでよく言ってくる、シワやたるみやシミの話は「女は美しくあるべき」「女は美しいことが価値である」と言われているようでなんだかなぁ。

 一見、「女は美しくあるべき」と思っているのは女性側であり、商品はそう思う女性に寄り添って悩みを解決しようとする立場に見える。けど、シワやシミやたるみが悪いことみたいに洗脳してくるのはあっちじゃないか。
 向こうは商品を売りつけにかかってくるのだから、「あなたはそのままで良いんですよ」なんて決して言わない。「あなたはそのままで良いんですか?」と不安を煽ってくるのだ。

 シワやたるみやシミの何がいけないんだ? ナチュラルで良いじゃないか。と、最初からそういう空気だったら誰も何も思わなかっただろう。


 例えば虫が嫌いな人間が多いのも、多数派に流され、煽られているからだと思う。「虫は恐ろしく気持ち悪いもの」というイメージ付けが盛んに行われているのだ。殺虫業界の策略か? 農業やガーデニングにとって虫が天敵なのは分かるけれど、「気持ち悪い」は関係ないだろう。

 地球温暖化による猛暑で夏の虫が減った気がするのでウェブ検索したら、ネットニュースにそのようなことを調べた記事があり、殺虫剤会社の人が「殺虫剤の売れ行きが悪くなるから心配」みたいなことを言っていると書いてあった。

 そりゃ、人間もお金がなきゃ生きていけないから商品の売れ行きを心配するのは分かる。でも地球温暖化や環境破壊、昆虫カタストロフィといった地球の壊滅的危機の前で殺虫剤の売れ行きを心配するのはなんか違くない? 人類はできれば虫を殺さない解決策を模索するか、現状食べねば生きていけないから、虫に感謝しつつ昆虫食を取り入れるか、なんかそのへんを考えないといけないんだと思う。


 と、話がそれたが、要するに「悪いものだから嫌われる」だけでなく、それに感化されて関係ない人まで「多くの人に嫌われているから悪いものに違いない」と認識してしまうのだ。自分に関係なくても先入観を持つ。
 ニュースとかを見ていてもそうだろう。あの問題がどう、この問題がどうとかつい言いたくなるけれど、その何割が自分に関係あるのだろうか?

 そんなわけだから、子どもの頃から「◯◯は悪い」と言われていれば当たり前のようにそれを鵜呑みにするし、「虫は気持ち悪い。シワやシミやたるみは避けたい。老いは怖い」と言われればそう認識する。「自分は嫌いじゃないけど人からそう見られたくない」と思えば、人に合わせようとするし、「どんなふうに思われているだろう?」と怖くもなる。


 私はそもそも昔から美しくないし、美しくなろうとしたこともないけれど、美に関してネットで辛辣な意見を見ると意気消沈する。
 女は美しくあるべき、と男も女も思っている。人は若々しく整った女性がお好き。

 美って何だろうな……。
 あるがままの星や生き物たちの姿は間違いなく美しいけれど、多くの人には虫の美しさすら通じない。人間の美に関する議論は面倒で、何もかも放り出して逃げたくなる。


 若さってそんなに美しいだろうか? 老いってそんなに隠すべきものだろうか?
 多分やっぱり、若さを美と捉え若さを求めるのは、生物が元気な子孫を残そうとする生殖本能だ。


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