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金に飢えた底辺作家の日常
ワンパターンはいけないと思っていたけれど
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小説を投稿し始めた頃、なんとなく「ワンパターンじゃいけない!」と思っていた。
似たようなキャラクター、似たような展開、似たような雰囲気……そんな作品ばかり並べば読者様に「またこのパターンか」と飽きられてしまう。
だから変化をつけた。詩集「良くも悪くも、星の回転は止まらない」では哲学的なのやら意見やら空想やら詩っぽいものやらストーリー仕立てにし、「悪魔」では主人公は人間、のちに悪魔化。「からくりの鼻唄」では主人公は人間だがロボットたちを登場させた。主に動物型(ペット)ロボットと人型ロボットだ。そして「月色の夏」では主人公たちが植物(雑草)で、友達は鳥。
発想力に乏しく引き出しが少ない底辺作家なりに、わりとバリエーション豊かにしたつもりだ。ワンパターンにならないようにと。
しかしワンパターンかどうかということは恐らく関係なかった。なぜなら複数の作品を読んでくださった方がほぼいないからである。
ファンがつかず、いただいた反応も大抵こちらから他の方の作品を読みに行ったりしてお返ししていただいたもの。
1つだけ作品を読んでくださった方にとって、他の作品は関係ない。ワンパターンであろうとなかろうと。
最初作品の並び順にこだわっていたとき、ほとんどアクセスがなく、アクセスをいただいたとしても新作だけであることに私はガッカリした。私としては投稿作品の並び順にそれなりに意味を見出しており、過去作品から新作に近づくにつれ段々世界が開けていくような開放感がある気がしていたのだ。作品同士のちょっとしたストーリーの繋がりも感じていた。
現在も過去作品へのアクセスはほとんどなく、新作も1ページ読んでいただけたらいい方というところで、「この作品が良かったから他の作品も読もう」と全作品を読んでくださった方はまだいない。作品の投稿順もバリエーションも何の意味も為していない。
カクヨムではコレクション機能というものが付き、お気に入り作品を好きにまとめて並べられるようになったのでありがたい。が、せっかくコレクションを作っても今のところ最初から最後まで読んでいく人は見かけず、底辺作家のコレクションは意味を為していない。
さて、最近新作を完結させたので次回作について考えている。放置中のマンガも放置しっぱなしで申し訳ないが、文章作品も放置している連載やら最近浮かんだ案やら色々あるのだ。
今ある案を形にしたい。でも気がかりなことがあった。今自分の中であることがマイブームであり、今沸いてくるいくつかの作品の案がワンパターンなのだ。
今後ワンパターンな作品ばかり並ぶことになったらどうしよう……。
私はしばし迷っていた。
と、ここで気づいた。
「別にワンパターンで良くね?」と。
私は底辺作家である。私のそれぞれの作品がどうかとか、何が好みかとか、こだわりとか、そういうものは知られていない。読んでくれる人は通りすがりの人が多く、それも途中で「もういいや」と離れる方が多く、私の全作品を追っかけている人はいない。
ならワンパターンであることに気づく読者様は少ないはず。ワンパターンかどうかなど知ったこっちゃないはずなのだ。
それによく考えたら作家の「作風」というのは実は「ワンパターン」のことなのではないか?
国民的映画をいくつも生み出した宮崎駿監督の作品を思い浮かべてみると、ナウシカ・トトロ・もののけ姫・千と千尋・ポニョなどすべて「自然と人」的なテーマに見える。人間と不思議な力を持った自然的存在が出会い、交流し、時に争い、しかし共存の希望を見出す。大体そんな感じだ。
ワンパターンといえなくもない。でも人気である。そういった作品は私もまた見たい。
思えば大人気のディズニーとかでも、「お姫様と王子様が……」というのが定番。
一方ワンパターンに逆らう流れもある。私の好きな「ポケモン」では、キャラデザが近年「ポケモンらしくない」と古参ファンから言われており、賛否両論のようである。ポケモン側は「ポケモンらしくないポケモンを増やしたい」とおっしゃっていたような。
つまり製作者には「らしさ」を求められる場合があり、なんでもかんでもやると逆に「らしさ」が失われたと思われる場合もあるのだ。
そういえば私も「あの人の作品が見たい」「あれの続編が見たい」と思うとき、そこに何かしらの安心感、らしさ……つまりある種の「ワンパターン」を求めている。セカオワにハマったときも、あのチクリと世界を刺すような、人類の在り方に触れるような歌詞が好きだった。最近の歌はあまり知らないけれどなんだか丸くなられたような。
ファミコンドラクエしかやったことがない私が3DSのドラクエをやったときも、「なんかドラクエじゃないような……」という感じがした。私は今のドラクエもポケモンも好きだが、雰囲気が変われば来る人も去る人もいるのだろう。
ということでファンは「ワンパターン」を求めている場合がある。
それをあえて裏切るもよし、形を変えず続けるのもよし。
そんなこんなで「ワンパターンを増やしていくのも良いじゃん」という結論に至った。
底辺作家だから私の名前による影響力がなく、作品1つ1つはバラバラであり、過去作品のことなど気にされていないということもあるが、逆にワンパターンで作品を増やしていった場合、一つの作品がどツボにハマった人はワンパターンな他の作品にもハマってくださる可能性がある。
ワンパターンではないと、私の一つの作品を気に入ってくださった方が作品一覧を覗いて「なんだ、他は全然毛色が違うものばかりか……」と去っていく可能性もある。
一つの作品・一人の作者じゃなく何かのカテゴリーにハマるときも、同じパターンを求めている。そしてウロチョロしている中で同じパターンの作品をたくさん出している作者様を見つけると、その作者様自体にハマる。
作品は作風がバラバラだと単品になるが、ワンパターンだとセットになり、さらにそれが作家名のイメージになるのだ。作家名が一つのカテゴリーを指し示すものとなる。
有名作者であれば「この人のことを知りたい」と思われるかもしれないが、私のような底辺作家は「この人自体を知りたい」と思われていない。なら「私の持っているものすべてを出さなきゃ」などと思う必要がない。
ということで私はワンパターンだなんだと気にしないことにした。ワンパターンならワンパターンで良いし、マイブームが変わって全然違うものが浮かんだらそれはそれでいい。ワンパターンかどうかにこだわるより、今筆が進みそうなジャンルで書いて作品数やページ数を増やした方がいいだろう。
*
よく考えたら私の「ワンパターンじゃなくしよう」というこだわりは読者様のためというより、イメージを縛られ期待されることへの抵抗心や、マイペースを守りたい気持ちから来ていたのかも。
何かのカテゴリーについて褒めていただいたり期待していただいたりすると緊張してしまうのだ。
これが私の非常に悪い癖であり、底辺作家であり続ける理由なのだと思う。
一人でも、1カテゴリーでも認めてくださる方が現れるのはものすごく光栄なことなのだ。期待されるのはすごいことなのだ。「これからも楽しみにしています」と言われたらプレッシャーを感じるんじゃなく飛び跳ねて喜ぶべきである。
こういうとき他の案や己の欲望など放り投げて、お求めいただいたカテゴリーのものをすかさず増やすことができれば、違う道が開けるのかもしれない。
たくさんの人に見ていただきたいなら、イメージが固定されたり、何か一つのことを期待されたりするのを恐れてはいけないだろう。
マイペースな私はやっぱりこれからも底辺作家だと思う……。
「自分が行きたい方向」と「求められるもの」が常にジャストフィットしていたら最高だけどね!
(勉強が好きな子供、仕事が趣味な大人、みたいな。)
似たようなキャラクター、似たような展開、似たような雰囲気……そんな作品ばかり並べば読者様に「またこのパターンか」と飽きられてしまう。
だから変化をつけた。詩集「良くも悪くも、星の回転は止まらない」では哲学的なのやら意見やら空想やら詩っぽいものやらストーリー仕立てにし、「悪魔」では主人公は人間、のちに悪魔化。「からくりの鼻唄」では主人公は人間だがロボットたちを登場させた。主に動物型(ペット)ロボットと人型ロボットだ。そして「月色の夏」では主人公たちが植物(雑草)で、友達は鳥。
発想力に乏しく引き出しが少ない底辺作家なりに、わりとバリエーション豊かにしたつもりだ。ワンパターンにならないようにと。
しかしワンパターンかどうかということは恐らく関係なかった。なぜなら複数の作品を読んでくださった方がほぼいないからである。
ファンがつかず、いただいた反応も大抵こちらから他の方の作品を読みに行ったりしてお返ししていただいたもの。
1つだけ作品を読んでくださった方にとって、他の作品は関係ない。ワンパターンであろうとなかろうと。
最初作品の並び順にこだわっていたとき、ほとんどアクセスがなく、アクセスをいただいたとしても新作だけであることに私はガッカリした。私としては投稿作品の並び順にそれなりに意味を見出しており、過去作品から新作に近づくにつれ段々世界が開けていくような開放感がある気がしていたのだ。作品同士のちょっとしたストーリーの繋がりも感じていた。
現在も過去作品へのアクセスはほとんどなく、新作も1ページ読んでいただけたらいい方というところで、「この作品が良かったから他の作品も読もう」と全作品を読んでくださった方はまだいない。作品の投稿順もバリエーションも何の意味も為していない。
カクヨムではコレクション機能というものが付き、お気に入り作品を好きにまとめて並べられるようになったのでありがたい。が、せっかくコレクションを作っても今のところ最初から最後まで読んでいく人は見かけず、底辺作家のコレクションは意味を為していない。
さて、最近新作を完結させたので次回作について考えている。放置中のマンガも放置しっぱなしで申し訳ないが、文章作品も放置している連載やら最近浮かんだ案やら色々あるのだ。
今ある案を形にしたい。でも気がかりなことがあった。今自分の中であることがマイブームであり、今沸いてくるいくつかの作品の案がワンパターンなのだ。
今後ワンパターンな作品ばかり並ぶことになったらどうしよう……。
私はしばし迷っていた。
と、ここで気づいた。
「別にワンパターンで良くね?」と。
私は底辺作家である。私のそれぞれの作品がどうかとか、何が好みかとか、こだわりとか、そういうものは知られていない。読んでくれる人は通りすがりの人が多く、それも途中で「もういいや」と離れる方が多く、私の全作品を追っかけている人はいない。
ならワンパターンであることに気づく読者様は少ないはず。ワンパターンかどうかなど知ったこっちゃないはずなのだ。
それによく考えたら作家の「作風」というのは実は「ワンパターン」のことなのではないか?
国民的映画をいくつも生み出した宮崎駿監督の作品を思い浮かべてみると、ナウシカ・トトロ・もののけ姫・千と千尋・ポニョなどすべて「自然と人」的なテーマに見える。人間と不思議な力を持った自然的存在が出会い、交流し、時に争い、しかし共存の希望を見出す。大体そんな感じだ。
ワンパターンといえなくもない。でも人気である。そういった作品は私もまた見たい。
思えば大人気のディズニーとかでも、「お姫様と王子様が……」というのが定番。
一方ワンパターンに逆らう流れもある。私の好きな「ポケモン」では、キャラデザが近年「ポケモンらしくない」と古参ファンから言われており、賛否両論のようである。ポケモン側は「ポケモンらしくないポケモンを増やしたい」とおっしゃっていたような。
つまり製作者には「らしさ」を求められる場合があり、なんでもかんでもやると逆に「らしさ」が失われたと思われる場合もあるのだ。
そういえば私も「あの人の作品が見たい」「あれの続編が見たい」と思うとき、そこに何かしらの安心感、らしさ……つまりある種の「ワンパターン」を求めている。セカオワにハマったときも、あのチクリと世界を刺すような、人類の在り方に触れるような歌詞が好きだった。最近の歌はあまり知らないけれどなんだか丸くなられたような。
ファミコンドラクエしかやったことがない私が3DSのドラクエをやったときも、「なんかドラクエじゃないような……」という感じがした。私は今のドラクエもポケモンも好きだが、雰囲気が変われば来る人も去る人もいるのだろう。
ということでファンは「ワンパターン」を求めている場合がある。
それをあえて裏切るもよし、形を変えず続けるのもよし。
そんなこんなで「ワンパターンを増やしていくのも良いじゃん」という結論に至った。
底辺作家だから私の名前による影響力がなく、作品1つ1つはバラバラであり、過去作品のことなど気にされていないということもあるが、逆にワンパターンで作品を増やしていった場合、一つの作品がどツボにハマった人はワンパターンな他の作品にもハマってくださる可能性がある。
ワンパターンではないと、私の一つの作品を気に入ってくださった方が作品一覧を覗いて「なんだ、他は全然毛色が違うものばかりか……」と去っていく可能性もある。
一つの作品・一人の作者じゃなく何かのカテゴリーにハマるときも、同じパターンを求めている。そしてウロチョロしている中で同じパターンの作品をたくさん出している作者様を見つけると、その作者様自体にハマる。
作品は作風がバラバラだと単品になるが、ワンパターンだとセットになり、さらにそれが作家名のイメージになるのだ。作家名が一つのカテゴリーを指し示すものとなる。
有名作者であれば「この人のことを知りたい」と思われるかもしれないが、私のような底辺作家は「この人自体を知りたい」と思われていない。なら「私の持っているものすべてを出さなきゃ」などと思う必要がない。
ということで私はワンパターンだなんだと気にしないことにした。ワンパターンならワンパターンで良いし、マイブームが変わって全然違うものが浮かんだらそれはそれでいい。ワンパターンかどうかにこだわるより、今筆が進みそうなジャンルで書いて作品数やページ数を増やした方がいいだろう。
*
よく考えたら私の「ワンパターンじゃなくしよう」というこだわりは読者様のためというより、イメージを縛られ期待されることへの抵抗心や、マイペースを守りたい気持ちから来ていたのかも。
何かのカテゴリーについて褒めていただいたり期待していただいたりすると緊張してしまうのだ。
これが私の非常に悪い癖であり、底辺作家であり続ける理由なのだと思う。
一人でも、1カテゴリーでも認めてくださる方が現れるのはものすごく光栄なことなのだ。期待されるのはすごいことなのだ。「これからも楽しみにしています」と言われたらプレッシャーを感じるんじゃなく飛び跳ねて喜ぶべきである。
こういうとき他の案や己の欲望など放り投げて、お求めいただいたカテゴリーのものをすかさず増やすことができれば、違う道が開けるのかもしれない。
たくさんの人に見ていただきたいなら、イメージが固定されたり、何か一つのことを期待されたりするのを恐れてはいけないだろう。
マイペースな私はやっぱりこれからも底辺作家だと思う……。
「自分が行きたい方向」と「求められるもの」が常にジャストフィットしていたら最高だけどね!
(勉強が好きな子供、仕事が趣味な大人、みたいな。)
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【うだつの上がらないエッセイ集】
生き物の話や夢の日記、思い出や星占いの話など、思いついたことを色々詰め込んだ連載です。
【良くも悪くも、星の回転は止まらない】
詩集です。すぐ読める短いものが多いです。20編で完結しました。
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