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三日後のセマダラコガネ

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 六月中旬のある日、家の外壁に1cmくらいの丸い甲虫がいた。

 あまり見かけたことのない綺麗な虫だったので、パシャパシャと写真を撮ってみた。よく見ると触角が人間の手のように動いており、触角の先は指のように閉じたり開いたりしている。
 撮った虫の写真をネット上の情報と見比べていくとセマダラコガネという虫に似ていた。セマダラコガネには様々な色や模様の子がいるらしい。



 セマダラコガネはその後しばらく家の外壁でじっとしていたが、夜になると家の中に入ってきた。網戸は閉めてあるのだけれど、虫はどこからか入ってくる。

「ちゃんと飛んでいけるだろうか……」
 そんなことを思いながら、ベランダから逃がした。


 さらにその三日後。
 同じ子かどうかは分からないのだが、セマダラコガネが家の中にいた。

 こんなに何度も会うとは思わなかったので驚いた。
 コメツキムシやルリジガバチやジョウカイボンなら一時期多くいたりするが、コガネムシが頻繁に入ってきた覚えはない。

 その日セマダラコガネはカーテンに付いていたのでカーテンごと窓から出し、飛ぶのを待った。しかし飛ぶつもりはないのか、セマダラコガネはトコトコ歩いて手の上に乗ってきた。


 手に乗ったところを見るとますます小さく感じる。大変可愛らしい。ゆっくりと歩き、飛ぼうとしたのか少し前翅を開きかけ、そのまま迷って閉じてしまった。手の上では歩きづらそうで、時々足を滑らせてコロンと転がるので、虫を落とさないよう包むように持った。不安定だから飛ぶのも難しいのかもしれない。

 数日前に写真を撮ったセマダラコガネに直接触れ、仕草を間近で見ることができた。感動しつつ庭の花壇に下ろす。

 また家の中に入ってくるのだろうか。
 可愛らしい姿を見るとなんだか、いつまでも元気でいてほしいと心から思う。


 ところでセマダラコガネに三度も会うなんて何かのメッセージだろうか。花言葉ならぬ虫ことばがあるなら教えてほしい。
 ……いやでもちょっと怖いな……。

 とはいえ名前からして縁起の良さそうなコガネムシ、不吉の象徴などとは思えない。

 まぁもし不吉の象徴と言われる生き物に出会ったとしても、そんなことは人間が勝手に言っているのだから気にする必要はないと思うけれど。縁起が良いか悪いかで生き物を判断するのも変だ。

 などと言いつつ一応コガネムシのスピリチュアルメッセージを検索して確認してみたら、金運アップの意味がある縁起のいい虫だと書いてあった。
 金運は喉から手が出るほど欲しいので信じておく。私も随分自分勝手だ。


 あとセマダラコガネについて調べていて知ったのだが、コガネムシは後ろ足を高く持ち上げるポーズをとることがあるらしく、それは威嚇行動と言われているようだ。

 今回は威嚇された覚えはないけれど、可愛い虫に威嚇されたら凹むなぁ……。あんまりコガネムシに嫌がられないように、威嚇のポーズを覚えておこうと思う。
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