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低用量ピルの服用を開始

隠れミサンドリストに心境の変化はあったのか?

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 私はまだまだ隠れミサンドリストである。差別意識を表で出せば生きていけないことは分かってきている。だから隠すようになっていった。
 まだ彼が付き合ってくださっているということは、限られた時間内であればボロが出ず、隠し通せるようになってきたということなのかもしれない。もしかしたらムッとさせる失言の一つや二つ……いや、もっとしているかもしれないが。

 しかし彼の優しさに触れたことで、ミサンドリー自体緩和されたのかもしれない。
 まだピルの飲み忘れとか、妊娠や出産の可能性を考えるとものすごく不安なんだけれど。これと男性嫌悪は、やや別物な部分もある気がしてきた。

 とはいえ、男性にはどうも、「女性が男性を性的に恐れている」心情は伝わりにくいような気がしてきた。
 ただそれはある程度しょうがないのでは。子どもが欲しいとか考えていようといなかろうと、そういう本能があるのだから。もし女性の恐怖が完全に伝わり、男性が性的なアクションを一切しなくなったのなら、それこそ人類は滅びるのかもしれない。


 というか私が憎むべきはやはり、世界のシステムそのもの……。肉食獣が嫌いなんじゃない、弱肉強食が嫌いなんだ、みたいな。
 だから「あらしのよるに」とか「BEASTARS」とかが刺さる。肉食獣が持つ無意識な加害性と、草食獣が肉食獣に対して持つ不信感、嫌悪感。それを互いに堪えて惹かれ合う、残酷ともいえる宿命にゾクゾクくる。

 まぁ現実的に、女性が男性に惹かれるのは宿命としても、草食獣が肉食獣に惹かれる必要はないのだが。





 さて、相変わらず彼は優しく、かなりの時間を割き、食事やプレゼントにお金も費やしてくださっている。
 彼と私では稼ぐ桁が違うかもしれない。男女の違い、金銭感覚、色々あるかもしれない。とはいえ、ドブに金を捨てるようなことはするはずない。

 こんなに惜しみなくお金を使ってくださっているんだから、私も、たかが月額3000円の低用量ピル代くらいでガタガタ言うもんじゃないな。……でも……。「月額3000円ごとき余裕っしょ」と言えるほどに稼げてはいないので、往生際が悪い。


 彼が私に近づいてきてくださったとき。それまではただ「仲良し」あるいは「誰にでも優しいのだろう」という印象だった。が、一線を越えそうなほど近づいてこられたときは、意図が読めなかった。
 私は恋愛とかが全然分からない。というようなことを、こちらが素直に伝えたとき、「(俺のことを)利用してくれればいいじゃんか」というようなこともおっしゃった気がする。私の解釈違いでなければ。

 一体どうなのだ。彼は私に惚れたのか? って、惚れるような要素何一つないんだけど?
 こうなる(デートしたりする)直前といえば、私は職場の害虫について嬉々として語ったりしていた。それで「この子と付き合いたい!」となるか? 普通。

 私の虫好きキャラは、男性を遠ざけるための演技ではなく、ただの趣味。とはいえ、(世間一般的に見て)変な趣味も、非常識なところも、好戦的なところも、化粧せず毛剃りもせずボロい恰好をしているところも、「これで誰からも恋愛対象として見られないだろう」という安心材料ではあった。恋愛対象として見られなければ、告白されることもないし、断るとか断らないとか、あれこれ悩むこともないからと。

 でもこうなった。断れなかった。


 どっちなんだ? 私が彼に憧れて、うっかり近づきすぎてしまって(構ってもらえて嬉しかったし、仕事後に残って喋ったりした)、私は恋愛とかに疎いものの、好意がダダ漏れだったのか。それで彼が振り向いてくれたのか。

 いや、彼が構ってくださったのは、私のことを「なんか良いな」と思っていたから? つまり彼が先に私に惚れていて、私がその状態を心地良いと感じていたとか?


 いや……でも……。いずれにせよ……。「振り向いてくれた」にしても、好きでもない人にこんなに優しくできないだろう。
 けどまぁ、誰にでも優しくできるからこそ、上司の器があるのではないか、とは思うけど……(アイツ嫌いとかコイツウザいとか言っているようでは上司の器ではないような)。

 私は相変わらず、理解できていない。一体私のような女の何が、どこが良いのか?


 彼が私を誘ってきた(彼からすれば逆に感じるのか?)とき、私は正直、「私のような者相手に、男性が勃つのか?」と思った。

 勃つ・勃たないって、鈍くて無知な私にはよく分からない世界ではあるが、興奮しない女性相手には勃たないのでは(緊張してとか、逆に相手のことが好きすぎてとか、あるいは病気? とか、色んな要因で勃たないことがある、デリケートなものだとは聞いた)。

 女として見られない相手に、そんな積極的に行けるわけないだろう。でも彼はグイグイ来た。本当に私で良いのか? と思ったら、実際イケるようだった。
 私で良いなんて。まさか男性に勃起されて喜ぶ日がくるとは思わなかった。

 あれだろうか。女性の恋心ってのもよく知らないけど、男性って、「あ、この子見てると勃つな……」とか、そういうことで自分の想いを測るとか? 違う?
 確信を持って近づいて来られるように見えて、こちらは「(私なんかに)本当に勃つのか?」と思ったけれど、相手の方はもう確認済みで、自信があるのかもしれない。


 まぁ分からないことは分からないで置いておくにしても、何かと分からないことが多い。
 分からないために不安にもなる。いつか「思ったよりつまらん女だったな」と捨てられるんじゃないか。浮気されるんじゃないかとか。

 疑いたくはないけれど。どうも自分に自信がないもので、責任転嫁(?)してしまう。
 たとえば母は、私と妹を比べてよく「妹だったらこう言ってくれるのに……」とか言う。
 妹は家族だけあって私に似ていて、でも私より賢くて勤勉で、ちょっとクールで、でも冗談好きで面白い。
 彼も冗談が好きだが、私は彼が冗談を言っても「そうですね」くらいのつまらない返ししかできない。

 彼が私の妹だとか、もっと好みに合う人を見たら、そっちに乗り換えちゃうんじゃないか。他にもっと魅力的な人との出会いがあれば、そっちの方が良かったんじゃないか。


 そんなこと考えつつ彼とカラオケに行くと、彼が微妙で複雑な恋心を歌った失恋ソング? をよく歌うもんだから、泣けてくる。過去に失恋して、そういう歌をよく聴いていたとか?
 私も失恋したら失恋ソング聴きまくって、彼との思い出の場所を巡って思い出に浸って、未練タラタラ、引きずりまくるかも。

 でも未練タラタラはまだ幸せな方で、たとえば結婚なんかして、お互い、あるいはどちらかが「思ったのと違った」とか、または片方に良くない変化があったとかで(病気で動けなくなり、自暴自棄になって性格まで荒れるとか)、険悪になったら?

 私は元々落ちぶれている。それを彼にだけは垣間見せたけれど、その程度が伝わっているんだろうか。
 っていや、社会不適合者だと開き直るより、更正(?)のために努力すべきだし、今のところ頑張っているように見えるから応援してくださっているんだろうけど。こちらはいつ堕ちるか分からない……。また、何らかのレベルアップを望まれていたとしても、期待には応えられないかも。


 ふと彼の仕事のスケジュールを見ると、なんか住んでいる世界が違うなと思う。同じ職場の人なのに……。しっかり働いている人、すごいよなぁ。

 まったく知らないこと、調べていないこと、避けてきたことに足を突っ込んでしまった不安はまだある。この先どうなるんだ?
 本当に……。彼は何を思って私を……。やっぱりサッパリ分からん。状況が分からん。未来も分からん。


 とりあえず、彼が「また今度」の話をしてくださることや、可愛い喘ぎ声を聞かせてくださることに癒される。今はこれを糧に生きよう。
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