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謎ルートに入った
人間関係の混沌
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特に状況は変わっていない……セックスというのが本来子どもを授かるための行為なので、妊娠というリスクがついて回る……というのはそのままなのだけれど、相手の方に疑念とか性的な話とか色々ぶつけてみても、ちゃんと返してくださるもので、この人とはこのままずっと意志疎通が取れるのだろうと、安心感に繋がっていった。堕胎罪のこととかですごくショックを受けたが、時間と共に和らいできたのもあるかもしれない。この人の言うことなら、信じられるだろう。
彼との思い出の情景は、仕事と密接に繋がっている。同じ空間で働き、彼の存在には癒されてきた。彼はほとんど誰かの陰口を言ったり責めたりせず、ポンコツの私にも優しくしてくださり、丁寧に教えようとか育てようとかしてくださる姿勢を崩さない。分からないことを聞いたとき、忙しいからと一言二言答えて足早に去るのでなく、分かるように教えてくださろうとする。その態度に惚れた。
私は今まで落ちこぼれの社会不適合者だったので、社会に対しては、怯えたり圧力を感じたりしてきた。上司とか先輩とか仕事とか、そういう社会のシステムは覆せないものであり、私の落ちこぼれポジションを揺るがすことはできないのだと。
しかしうちの職場の上下関係や人間関係はそんな堅苦しいものではなく、けっこうみんな自由に交流しているようだった。それでも私はそういうコミュニケーションがまだ苦手で、プライベートにもコンプレックスがあって深く突っ込まれたくなくて、人と仕事以上に関われなかった。当たり障りなく、雰囲気よく振る舞うように努めている感じだった。
でも土足で踏み込んでこない彼にならなんとなく、私の落ちこぼれの面を晒しても大丈夫なのではないかと思い、弱みも晒しつつ雑談をしたり、相談することが増えた。「ろくに働きもせず……」とか「結婚もせず……」とか人のことを批判するような人には弱みを握られたくないが、実際私は落ちこぼれとしての不安があるもので、どういう部分に不安があるとか包み隠さずに伝えられそうな人が上司であることにホッとしていた。よく構って、遊んでくださるし。
私は社会にうまく馴染めなかった。いい職場であるとはいえ、まだ覆せない壁……働かなきゃいけないとか、上下関係とか、世の中のシステムとか……そういう無意識な壁を心の根底に持ち、鬱屈していたんだと思う。仕事もできない、プライベートもダメ、夢も叶わない、恋愛や結婚や子どもにも興味がない。私は何も持っていない。何しに生まれてきたんだろうと、劣等感に苛まれていた。
それが、彼から大切にしていただけるようになった。いや、まだ「なった」というほど進展もしていない段階なのかもしれないけど。友達付き合いもほぼない、恋愛など知らない、落ちこぼれの私からしたら怒濤の流れだった。
動かせない社会のヒエラルキーみたいなもの。変わらない日常。壊しようのない壁。そういうものが……あると思い込んで、劣等感に浸っていたけど……。あれ、これ案外柔らかいものなんじゃないか? と思えてきた。
この人を性的に……攻めてみたりすることは可能だろうか?
なんて、彼の方がサドかもしれないし、経験豊かだろうし、何も知らない私が彼をマゾに堕とすことなどできるわけもない。性的に堕とされるのは私の方だろう。勝てるわけがない。
でもなんかこう、ヒエラルキーに干渉できるかもしれないことに興味が沸いた。仕事もできないのに、仕事だけが世界ではなく、あれもこれも繋がってしまうとは。もう、職場の人にバレて人間関係がゴチャゴチャになってしまっても、それはそれで面白そうとか思ってしまった。
どこか社会への復讐心みたいなものがあるかもしれない。抑えつけられている、社会の底辺に落とされた、逆らえないなどと、自分が勝手に思い込んでいるだけなのに。
恋愛感情と、性欲や欲求不満と、でもなんか彼とは友達みたいなままでいたかったような、純粋に慕っているだけの面もあり。色んな思いが交差する。
上下関係があり、それがちょっとした主従関係みたいな感じでもあり。でも別にそういうところが堅いわけでもない職場で、自由さもあり。彼とは趣味や感覚が合いそうな感じもあり。
仕事とプライベート、恋愛感情とそれ以外、何もかも混沌としていく。そもそも恋愛が何か知らない、メンタルもニートなのだから、しっかり仕切り分けられるはずもない。上司と社会不適合者では住む世界が違う気がするが、何かそのあたりが掻き回されていくことに燃える。
いつまでも男性に怯え続けるのも嫌で、男性恐怖症を克服したいと思ったり。その方法が恋愛とは限らないが、どうしてもそちらへ流れていきそうなことが怖いならば、いっそ流されてしまってその光景を見たいとさえ思えてくる。もし心の整理がつかない結末になってしまっても、それはそれで受け入れて背負ってしまえば良いんじゃないか。
彼との思い出の情景は、仕事と密接に繋がっている。同じ空間で働き、彼の存在には癒されてきた。彼はほとんど誰かの陰口を言ったり責めたりせず、ポンコツの私にも優しくしてくださり、丁寧に教えようとか育てようとかしてくださる姿勢を崩さない。分からないことを聞いたとき、忙しいからと一言二言答えて足早に去るのでなく、分かるように教えてくださろうとする。その態度に惚れた。
私は今まで落ちこぼれの社会不適合者だったので、社会に対しては、怯えたり圧力を感じたりしてきた。上司とか先輩とか仕事とか、そういう社会のシステムは覆せないものであり、私の落ちこぼれポジションを揺るがすことはできないのだと。
しかしうちの職場の上下関係や人間関係はそんな堅苦しいものではなく、けっこうみんな自由に交流しているようだった。それでも私はそういうコミュニケーションがまだ苦手で、プライベートにもコンプレックスがあって深く突っ込まれたくなくて、人と仕事以上に関われなかった。当たり障りなく、雰囲気よく振る舞うように努めている感じだった。
でも土足で踏み込んでこない彼にならなんとなく、私の落ちこぼれの面を晒しても大丈夫なのではないかと思い、弱みも晒しつつ雑談をしたり、相談することが増えた。「ろくに働きもせず……」とか「結婚もせず……」とか人のことを批判するような人には弱みを握られたくないが、実際私は落ちこぼれとしての不安があるもので、どういう部分に不安があるとか包み隠さずに伝えられそうな人が上司であることにホッとしていた。よく構って、遊んでくださるし。
私は社会にうまく馴染めなかった。いい職場であるとはいえ、まだ覆せない壁……働かなきゃいけないとか、上下関係とか、世の中のシステムとか……そういう無意識な壁を心の根底に持ち、鬱屈していたんだと思う。仕事もできない、プライベートもダメ、夢も叶わない、恋愛や結婚や子どもにも興味がない。私は何も持っていない。何しに生まれてきたんだろうと、劣等感に苛まれていた。
それが、彼から大切にしていただけるようになった。いや、まだ「なった」というほど進展もしていない段階なのかもしれないけど。友達付き合いもほぼない、恋愛など知らない、落ちこぼれの私からしたら怒濤の流れだった。
動かせない社会のヒエラルキーみたいなもの。変わらない日常。壊しようのない壁。そういうものが……あると思い込んで、劣等感に浸っていたけど……。あれ、これ案外柔らかいものなんじゃないか? と思えてきた。
この人を性的に……攻めてみたりすることは可能だろうか?
なんて、彼の方がサドかもしれないし、経験豊かだろうし、何も知らない私が彼をマゾに堕とすことなどできるわけもない。性的に堕とされるのは私の方だろう。勝てるわけがない。
でもなんかこう、ヒエラルキーに干渉できるかもしれないことに興味が沸いた。仕事もできないのに、仕事だけが世界ではなく、あれもこれも繋がってしまうとは。もう、職場の人にバレて人間関係がゴチャゴチャになってしまっても、それはそれで面白そうとか思ってしまった。
どこか社会への復讐心みたいなものがあるかもしれない。抑えつけられている、社会の底辺に落とされた、逆らえないなどと、自分が勝手に思い込んでいるだけなのに。
恋愛感情と、性欲や欲求不満と、でもなんか彼とは友達みたいなままでいたかったような、純粋に慕っているだけの面もあり。色んな思いが交差する。
上下関係があり、それがちょっとした主従関係みたいな感じでもあり。でも別にそういうところが堅いわけでもない職場で、自由さもあり。彼とは趣味や感覚が合いそうな感じもあり。
仕事とプライベート、恋愛感情とそれ以外、何もかも混沌としていく。そもそも恋愛が何か知らない、メンタルもニートなのだから、しっかり仕切り分けられるはずもない。上司と社会不適合者では住む世界が違う気がするが、何かそのあたりが掻き回されていくことに燃える。
いつまでも男性に怯え続けるのも嫌で、男性恐怖症を克服したいと思ったり。その方法が恋愛とは限らないが、どうしてもそちらへ流れていきそうなことが怖いならば、いっそ流されてしまってその光景を見たいとさえ思えてくる。もし心の整理がつかない結末になってしまっても、それはそれで受け入れて背負ってしまえば良いんじゃないか。
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【うだつの上がらないエッセイ集】
生き物の話や夢の日記、思い出や星占いの話など、思いついたことを色々詰め込んだ連載です。
【良くも悪くも、星の回転は止まらない】
詩集です。すぐ読める短いものが多いです。20編で完結しました。
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