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女に譲歩した表現が広く受け入れられがち

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 BEASTARSの演劇のエピソードで、死神役を肉食獣、魂を刈られる者を草食獣が演じることになったときに、草食獣が「肉食獣が草食獣の魂を刈るなんて、こんなのあまりにリアルすぎる」というようなことを言っていた。

 現代の創作では、「女は三歩下がってついて来い」とか「女は何もできない」というリアルより、男キャラとも対等に戦ったり、自分で考えて発言・行動できるような、強くてかっこいい女性キャラが好まれるようだ。それは男性側の好みなのか、男性が女性に譲っている部分なのか。

 男性がちょっとエッチなことをしてしまい、女性が「◯◯くんのバカ!」と平手打ちをかます。レトロな感じの一場面だが、そういう納め方は現在でも多いのではないか。女に怒られて、謝ったりうろたえたりする男。

 現実で実際に、女のビンタくらいで男を撃退できるならば性犯罪などなかっただろうし、ビンタで丸く収まるなら戦争も爆弾も必要ないのではないか。女は社会的にも抑圧されてきたのだろう。


 男性向け作品であれば、女性にとって不快な表現も多いだろうが、それでも決定的に差別的な表現をしてしまったら物議を醸すのだろう。「男向けなので」では済まされないこともあるかもしれない。多くの人に見てもらえる表現を目指すならば、現代では女心を理解し、女心に譲歩したものの方がウケるのだろう。まぁ裏ではけっこう凄まじい表現が溢れているようだけど(性的なワードの画像検索で出てくる)。


 この間、ブレスケアの広告ツイートが流れてきた。女性が電車内で死んだような目で臭い息を吐き、隣の男性が困っているというイラストが載っている。可愛い絵柄と、臭い息を吐く女性のインパクトにウケた。

 これに「女性蔑視」だの何だのリプ(?)が付いていたが、いや、息や体臭が臭いのは男でも女でもあるだろうから、別に蔑視じゃないだろうと思った。私の息も臭いだろうから気になる。

 しかし今「ブレスケア広告」で検索してみると、一悶着あったようで、話題にされていた。このイラストが女性蔑視というより、「男の方が息が臭いでしょう」「いやいや女の方が臭いだろう」とケンカになってしまったことの方が問題なようだ。

 世の中「どっちの息が臭いか」なんて平和な(?)ケンカをしている程度ならまぁ良いだろうが、女性蔑視だの女性差別だのという根底的なものは、もっと目に見えづらく、危険なものだろう。

 女性側が過剰防衛でギャンギャン言ったのか、男性側が「そういう表現はやめとけ」と言ったのか、どういう広がりになったのか分からないが……。男性が加害者、女性が被害者という構図が無難で好まれるというような意見もあった。


 なるほど、そう思うと、「男が女に危害を加える」という表現をよく見かけるのは、「女による男への被害」の実態がもみ消されているから、という可能性もあるか? 悪い意味での「社会はこうあるべき」みたいなイメージ図が形成されてしまっているのか。女の怒りに火をつける表現をするとケンカが始まってしまうから、無難というか、批判されにくい表現に留められることが多い?

 ただこれも、実態通りでない「男がいつも悪役」というイメージを植え付けてしまうと(実態を訴えるためなら仕方がないが)、「やっぱり男は乱暴でデリカシーがなくて臭いんだ」などと男性差別を助長するのでは。


 女性差別について考えるなら、男性差別についても考えなきゃいけないな……。
 まだ私には分からないことだらけである。
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