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終章
9.
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「今のどっちだろうな。いっぱいかわいい人がいた、なのか、かわいいって言ってもらった、なのかわかんねぇ。どっちにしても、律の女好きは特別かも」
「男が好きなんじゃなくて良かったですよ。津田さんを真剣に取り合っても勝てる気がしません」
穏やかに微笑みながらそう言われ、津田は思わず緩む顔を伏せた。
「律君、おいで。これ、昨日のお姉さんたちからのプレゼントだよ」
呼ばれた律が乾の隣の椅子によじ登り、ケーキを見て歓声をあげた。興奮した幼児の突飛な行動を、乾に予想しろというのは無理がある。好奇心に後押しされた手の素早さも、想定を超えていただろう。
「あ…… っ!」
と言う間に、律の手のひらはケーキのほぼ中央にめり込み、その腕は肘の上までスポンジに埋もれた。乾がとっさに身体を支えなければ、勢いあまって頭から生クリームに突っ込んでいたに違いない。
「あぁーー…… 」
美しくデコレーションされていたケーキは真ん中が陥没した無残な姿になり、乾に抱えられた律は目をまん丸にして、クリームまみれになった腕を上げている。
「すみません、予想外でした…… 」
乾ががっくりと肩を落とす。律は普段それほどやんちゃではないので、ケーキに手を突っ込むような奇行に走るとは思わなかったのだろう。
津田は、ぱちぱちと瞬きを繰り返す律と情けない顔をした乾に、声を上げて笑った。
「ユキ、わらっちゃらめ!」
失態を笑われた律がばたばたと暴れ、腕についたクリームが飛び散る。
「わっ、ちょ、待って待って!」
慌てた乾の腕を逃れてフローリングの床に着地した律は、クリームにまみれた腕で津田の胸を叩いた。
「らめ!わらっちゃらめ!」
律は目に涙をためて全力で抗議している。
(めんどくせぇなぁ…… )
津田はそう思いながら、愛しさが溢れて笑みが止まらなかった。
「男が好きなんじゃなくて良かったですよ。津田さんを真剣に取り合っても勝てる気がしません」
穏やかに微笑みながらそう言われ、津田は思わず緩む顔を伏せた。
「律君、おいで。これ、昨日のお姉さんたちからのプレゼントだよ」
呼ばれた律が乾の隣の椅子によじ登り、ケーキを見て歓声をあげた。興奮した幼児の突飛な行動を、乾に予想しろというのは無理がある。好奇心に後押しされた手の素早さも、想定を超えていただろう。
「あ…… っ!」
と言う間に、律の手のひらはケーキのほぼ中央にめり込み、その腕は肘の上までスポンジに埋もれた。乾がとっさに身体を支えなければ、勢いあまって頭から生クリームに突っ込んでいたに違いない。
「あぁーー…… 」
美しくデコレーションされていたケーキは真ん中が陥没した無残な姿になり、乾に抱えられた律は目をまん丸にして、クリームまみれになった腕を上げている。
「すみません、予想外でした…… 」
乾ががっくりと肩を落とす。律は普段それほどやんちゃではないので、ケーキに手を突っ込むような奇行に走るとは思わなかったのだろう。
津田は、ぱちぱちと瞬きを繰り返す律と情けない顔をした乾に、声を上げて笑った。
「ユキ、わらっちゃらめ!」
失態を笑われた律がばたばたと暴れ、腕についたクリームが飛び散る。
「わっ、ちょ、待って待って!」
慌てた乾の腕を逃れてフローリングの床に着地した律は、クリームにまみれた腕で津田の胸を叩いた。
「らめ!わらっちゃらめ!」
律は目に涙をためて全力で抗議している。
(めんどくせぇなぁ…… )
津田はそう思いながら、愛しさが溢れて笑みが止まらなかった。
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