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決断
19.
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津田が腑に落ちない顔で液晶に指を滑らすのを見ながら、乾はゆっくりと彼の背後に立った。そして、その細い腰に後ろから腕を回すと、襟足の茶色い髪の上からうなじに唇をつける。
「ちょ…… っ、おい…… 」
「少しだけ、こうさせてください。律君が帰ってきたら、津田さんを取られるんですから」
津田が居心地悪そうに身じろぎするのを腕の中で感じながら、乾は触れることを許された甘いうなじの匂いを胸に吸い込んだ。
「ただいまーー 」
玄関ドアが開く音の後に、子どものように間延びした佐伯の声がした。家主である彼が「帰ってきたぞ」とわざわざ強調するのは、やはりニアミスを警戒してのことだろう。
津田と二人でリビングを出ると、もこもこに厚着をして頬を赤く染めた律が津田に飛びついてきた。
「ユーーキ!」
津田は慣れた仕草で律を抱き上げ、柔らかい笑顔で頬ずりをした。
「おかえり律。いっぱい遊んで来たか?」
「たらいま!こーえ、あげゆー」
律は津田の目の前に、小さな拳を突き出した。開いた手のひらにはツヤのある茶色い木の実が一つ乗っているのだが、鼻先1㎝の距離では津田に判別はできない。
「あぁ、どんぐりだね。きれいだなぁ」
乾が津田の隣から覗き込むと、律は再び拳を握りしめ、グーの手のままで津田の首にしがみついた。
あからさまなその態度に、津田が目だけで詫びてくる。乾が微笑んで小さく首を振ると、彼はまだ三和土にいる佐伯夫妻に
「ありがとうございました」
と頭を下げた。
「やっぱり外は寒いねぇ。動き回っている子どもはいいけれど、大人は凍えてしまう」
上がり框に腰掛けて靴紐をほどきながら佐伯が言うと、
「律を連れて外で遊んでこいと言ったのはあなたですよ」
もっと長い時間を真冬の公園で過ごした妻にたしなめられた。
「ちょ…… っ、おい…… 」
「少しだけ、こうさせてください。律君が帰ってきたら、津田さんを取られるんですから」
津田が居心地悪そうに身じろぎするのを腕の中で感じながら、乾は触れることを許された甘いうなじの匂いを胸に吸い込んだ。
「ただいまーー 」
玄関ドアが開く音の後に、子どものように間延びした佐伯の声がした。家主である彼が「帰ってきたぞ」とわざわざ強調するのは、やはりニアミスを警戒してのことだろう。
津田と二人でリビングを出ると、もこもこに厚着をして頬を赤く染めた律が津田に飛びついてきた。
「ユーーキ!」
津田は慣れた仕草で律を抱き上げ、柔らかい笑顔で頬ずりをした。
「おかえり律。いっぱい遊んで来たか?」
「たらいま!こーえ、あげゆー」
律は津田の目の前に、小さな拳を突き出した。開いた手のひらにはツヤのある茶色い木の実が一つ乗っているのだが、鼻先1㎝の距離では津田に判別はできない。
「あぁ、どんぐりだね。きれいだなぁ」
乾が津田の隣から覗き込むと、律は再び拳を握りしめ、グーの手のままで津田の首にしがみついた。
あからさまなその態度に、津田が目だけで詫びてくる。乾が微笑んで小さく首を振ると、彼はまだ三和土にいる佐伯夫妻に
「ありがとうございました」
と頭を下げた。
「やっぱり外は寒いねぇ。動き回っている子どもはいいけれど、大人は凍えてしまう」
上がり框に腰掛けて靴紐をほどきながら佐伯が言うと、
「律を連れて外で遊んでこいと言ったのはあなたですよ」
もっと長い時間を真冬の公園で過ごした妻にたしなめられた。
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