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漏洩と波紋
11.
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増井は部署の中をきょろきょろと見回して、なぜか里谷の姿を探しているようだ。それから二言三言会話をした後、
「はいはーい」
と言って受話器を置いた。
乾が社食から戻ってきた時から、そういえば里谷の姿も見ていない。午前中は都内の研究所を訪問していたが、確か一度帰社したはずだ。とはいえ食事に行っているなら気にするほどの長い不在でもなく、気になるのはやはり津田の方だった。
先月は思いのほか早いタイミングで発情期が来たが、あれから20日も経っていない。今朝の津田が普通だったことは確認済だし、またどこかで動けなくなっているということはないだろう。
「これからはもっと頼るようにする」と言った津田の言葉を、乾は信じていた。遠慮や意地で連絡してこないということは、もうないはずだ。念のため携帯を取り出してみたが、彼から連絡があった形跡はない。
一応増井の気にしている書類を見てみようかと乾が立ち上がったとき、美馬が息を切らせて部署に飛び込んできた。
「主任!」
普段おっとりした彼女には珍しく慌てた様子に、オフィスにいる部下たちが一斉に注目する。美馬はさっとフロアを見渡すと、小走りに乾に近づいた。
「急ぎの用件なので、一緒に来てください!」
「どうしたんですか、何が……」
美馬は目の動きで、周りに人がいるところでは話せないことを示唆した。
「歩きながら話しますから、早く!」
訳が分からないが、ただならぬ雰囲気であることは間違いない。乾は習慣的に背もたれの上着を掴み取ると、美馬について足早に歩きだした。
ゆるくウェーブのかかった髪を揺らした彼女はエレベーターの降下ボタンを押すと、
「地下駐車場は、何階ですか?」
と聞いた。
美馬は正社員だが内部勤務で、社外の研究所を訪問することはなく社用車については何も知らない。このビルの駐車場は地下2階から6階にあるが、今聞かれているのはそういうことではないだろう。
「はいはーい」
と言って受話器を置いた。
乾が社食から戻ってきた時から、そういえば里谷の姿も見ていない。午前中は都内の研究所を訪問していたが、確か一度帰社したはずだ。とはいえ食事に行っているなら気にするほどの長い不在でもなく、気になるのはやはり津田の方だった。
先月は思いのほか早いタイミングで発情期が来たが、あれから20日も経っていない。今朝の津田が普通だったことは確認済だし、またどこかで動けなくなっているということはないだろう。
「これからはもっと頼るようにする」と言った津田の言葉を、乾は信じていた。遠慮や意地で連絡してこないということは、もうないはずだ。念のため携帯を取り出してみたが、彼から連絡があった形跡はない。
一応増井の気にしている書類を見てみようかと乾が立ち上がったとき、美馬が息を切らせて部署に飛び込んできた。
「主任!」
普段おっとりした彼女には珍しく慌てた様子に、オフィスにいる部下たちが一斉に注目する。美馬はさっとフロアを見渡すと、小走りに乾に近づいた。
「急ぎの用件なので、一緒に来てください!」
「どうしたんですか、何が……」
美馬は目の動きで、周りに人がいるところでは話せないことを示唆した。
「歩きながら話しますから、早く!」
訳が分からないが、ただならぬ雰囲気であることは間違いない。乾は習慣的に背もたれの上着を掴み取ると、美馬について足早に歩きだした。
ゆるくウェーブのかかった髪を揺らした彼女はエレベーターの降下ボタンを押すと、
「地下駐車場は、何階ですか?」
と聞いた。
美馬は正社員だが内部勤務で、社外の研究所を訪問することはなく社用車については何も知らない。このビルの駐車場は地下2階から6階にあるが、今聞かれているのはそういうことではないだろう。
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