ただΩというだけで。

逡巡

24.

「大丈夫…… けど、これすごいな。タオルとか敷いといたらよかったかな」
「そんな余裕なかったですから。てゆうか全部津田さんが出したものですよ」

  自分たち、ではなかったか。

「俺さ、実はなんか途中から、あんま覚えてないんだけど…… 何回くらい、出した？」

  さっきまでの熱が嘘のようにスッキリしている。発情期の自慰の回数から考えても、この飛び散った体液を見ても、1回で済んだとは思えなかった。

「どうでしょう。3、4回じゃないですか。最後の方はなんと言うか、回数を数えられる感じじゃなかったんですが」

「どういう意味ーー」

「奥をね、突くと出るみたいになって。だんだん透明になるし、少し心配したんですが、気持ち良さそうだから大丈夫かなって思ったんですけど…… 大丈夫ですか？」

  気持ちよさそう、という自分がどんなだったのか、想像が及ばない。意識のない状態でどんなふうに「よさそう」だったのか聞いてみたい気もするが、実験結果を報告するような淡々とした口調で恥ずかしいことを言われるような気しかしなかった。

「そんなん聞かれても分かんねぇ。意識なかったし」

「ああ、やっぱり意識飛んじゃってたんですね。話しかけても返事がないから、そうかなって思ってたんですけど」

「つうかお前、失神してるやつを揺すり続けたのかよ」

「失神…… はしてなかったですよ。応答しないだけで、反応はあったんです。だいたい、失神してたらあんなに声は出ないし、何度も射精しないでしょう？」

  涼しい顔でそう言われ、津田は絶句した。
  性に関わる研究をしている者にはよくあることだが、あまり直接的な言い方をされるとデリカシーの欠如に唖然とする。15年前はもしかしたら自分もそうだったのかもしれないと思いつつ、津田は小さくため息をついた。

「お前さぁ、しゃべるとほんと理系だよな。言葉足んねぇっていうか選べっていうか…… 別にいいけど」