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年の瀬
1.
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街を彩ったクリスマスのデコレーションは、発情休暇明けに出勤した27日には、すっかり片付けられていた。あの大量の電飾や装飾品は、シーズンオフにはどこに収納されているのだろうかと、津田は毎年不思議に思う。
「休みをいただき、ありがとうございました」
朝一番で乾の席に行ってお決まりのあいさつをすると、
「明日で仕事納めですね。年始には社食でちょっとした会があるので、詳細は社内メールで確認してください」
しっかりと髪を固め、仕事モードの乾にそう告げられた。
プライベートのラフな姿を見たのはまだ2回だけだ。オフの乾は朗らかでよく笑う。職場で見る彼は、真顔と不快そうに眉をひそめた顔の2種類しかないように思えるほどの鉄仮面ぶりだ。そのギャップに、津田はまだ慣れずにいた。
乾は津田が席に戻るのを待たずに立ち上がり、里谷の席に行って何かを話し始めた。年末進行で忙しいのだろうか。席を立つ動作も、少し慌しかったように思う。席に戻り、PCを起動したところで、津田は別の可能性に思い当たった。
(もしかして俺、臭かったのかな…… )
発情期に街を歩くと、通りすがりのαから「臭ぇな」と言われることがある。駅や満員電車ではよく舌打ちされる。襲い掛かられないだけまだマシだが、慣れたこととはいえやはり地味に傷つく。
発情期の匂いは、自分では分からない。今朝の通勤時は文句も舌打ちも聞かなかった気がするが、今日の自分はまだフェロモン臭いのだろうか。
そんなことを考えていると、隣席の飯野に小声で話しかけられた。
「津田さん、ちょっといい?」
臭いと言われるのではないかと身構えた津田に、飯野は鳥の餌のようなものが入った袋を見せてきた。
「これ、知ってる?」
「休みをいただき、ありがとうございました」
朝一番で乾の席に行ってお決まりのあいさつをすると、
「明日で仕事納めですね。年始には社食でちょっとした会があるので、詳細は社内メールで確認してください」
しっかりと髪を固め、仕事モードの乾にそう告げられた。
プライベートのラフな姿を見たのはまだ2回だけだ。オフの乾は朗らかでよく笑う。職場で見る彼は、真顔と不快そうに眉をひそめた顔の2種類しかないように思えるほどの鉄仮面ぶりだ。そのギャップに、津田はまだ慣れずにいた。
乾は津田が席に戻るのを待たずに立ち上がり、里谷の席に行って何かを話し始めた。年末進行で忙しいのだろうか。席を立つ動作も、少し慌しかったように思う。席に戻り、PCを起動したところで、津田は別の可能性に思い当たった。
(もしかして俺、臭かったのかな…… )
発情期に街を歩くと、通りすがりのαから「臭ぇな」と言われることがある。駅や満員電車ではよく舌打ちされる。襲い掛かられないだけまだマシだが、慣れたこととはいえやはり地味に傷つく。
発情期の匂いは、自分では分からない。今朝の通勤時は文句も舌打ちも聞かなかった気がするが、今日の自分はまだフェロモン臭いのだろうか。
そんなことを考えていると、隣席の飯野に小声で話しかけられた。
「津田さん、ちょっといい?」
臭いと言われるのではないかと身構えた津田に、飯野は鳥の餌のようなものが入った袋を見せてきた。
「これ、知ってる?」
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