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発情
6.
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乾はエレベーターを降り、エントランスの壁にもたれて床に座った。
津田のフェロモンが、マンションに充満している。身体もきついし、理性を保つのに一時も気を抜けない。それでも、今までは忌み嫌っていたこの甘い匂いが、津田の無事を如実に語っていて、ずっと浸っていたいほどの喜びを感じた。
1時間半前、電車で千葉に向かっていた乾の携帯がブルブルと震えた。車中で申し訳ないと思いながら、乾は優先座席からできるだけ離れたところに移動し、通話をタップした。
着信の相手が、佐伯だったからだ。
短い通話を終えると、乾は次に停車した駅で電車を降りた。走って駅舎を抜け、ロータリーでタクシーに飛び込んだ。
「北千束まで、お願いします」
佐伯からの電話の後、もどかしく電車に揺られながら、乾は現在地と北千束の位置関係を調べた。電車で引き返すよりも湾岸線を走ったほうが早そうだ。
車が走り出してから、詳しい住所を運転手に告げた。
その住所は、河野の父親が所有するマンションのものだ。興信所からの報告があったと、先ほどの電話で佐伯から聞いた。
興信所の調べによると、そのマンションは全国にいくつもある、いわゆる愛人用賃貸住宅であった。αが番のΩを住まわせるために作られており、全部屋に軽い防音が施されている。
料亭つば喜から車で1時間程度の距離。
小づくりなマンションの7階。
河野の助手が言った条件にも、ぴたりとあてはまる。
おそらく間違いない。きっとそこに、津田がいる。湾岸線を走るタクシーの後部座席で、乾は焦燥と安堵の板挟みになり、意味もなく脚を揺らした。
マンションの前につけたタクシーを降りるとすぐに、乾には分かった。
当たりだ。
この半年、毎月嗅いだ、甘い匂い。先月は、間近で自分を誘った、濃厚な誘引力。
それが、目の前のマンションから漏れ出ていた。
津田のフェロモンが、マンションに充満している。身体もきついし、理性を保つのに一時も気を抜けない。それでも、今までは忌み嫌っていたこの甘い匂いが、津田の無事を如実に語っていて、ずっと浸っていたいほどの喜びを感じた。
1時間半前、電車で千葉に向かっていた乾の携帯がブルブルと震えた。車中で申し訳ないと思いながら、乾は優先座席からできるだけ離れたところに移動し、通話をタップした。
着信の相手が、佐伯だったからだ。
短い通話を終えると、乾は次に停車した駅で電車を降りた。走って駅舎を抜け、ロータリーでタクシーに飛び込んだ。
「北千束まで、お願いします」
佐伯からの電話の後、もどかしく電車に揺られながら、乾は現在地と北千束の位置関係を調べた。電車で引き返すよりも湾岸線を走ったほうが早そうだ。
車が走り出してから、詳しい住所を運転手に告げた。
その住所は、河野の父親が所有するマンションのものだ。興信所からの報告があったと、先ほどの電話で佐伯から聞いた。
興信所の調べによると、そのマンションは全国にいくつもある、いわゆる愛人用賃貸住宅であった。αが番のΩを住まわせるために作られており、全部屋に軽い防音が施されている。
料亭つば喜から車で1時間程度の距離。
小づくりなマンションの7階。
河野の助手が言った条件にも、ぴたりとあてはまる。
おそらく間違いない。きっとそこに、津田がいる。湾岸線を走るタクシーの後部座席で、乾は焦燥と安堵の板挟みになり、意味もなく脚を揺らした。
マンションの前につけたタクシーを降りるとすぐに、乾には分かった。
当たりだ。
この半年、毎月嗅いだ、甘い匂い。先月は、間近で自分を誘った、濃厚な誘引力。
それが、目の前のマンションから漏れ出ていた。
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