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発情
2.
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(いっそ…… 死のうか?このままあいつに醜態をさらすくらいなら、いっそ、いっそ…… 佐伯と凛花のところに…… )
打ち付けた拳が痛む。発情期には、痛覚が鈍っているはずだ。
痛みのある間は正気を保っていられるような気がして、津田は壁を打ち続けた。
(律は、佐伯の両親が引きとってくれるかな…… )
佐伯が死んだとき、凛花が死んだとき、後を追おうと思わなかったわけじゃない。でも自分の元には、守らなければいけない命が残されていた。
でも、今なら。
この状況なら、すべてを投げ出すことを、許してもらえるような気がした。
(もう…… いいのかな…… 俺、がんばったよな…… ?もう…… 佐伯のところに行っても、いいかな…… )
津田はベッドから下り、ふらりと立ち上がった。膝がわらう。身体中に甘い毒がまわったような、ふわふわした心許ない感覚だった。
部屋を見回しても、使えそうなものが何もない。ロープは河野が回収していった。フォークはプラスチックだ。バスルームにも、剃刀の用意はなかった。
(あいつ、もしかしてそれを警戒して…… ?)
河野は、いざとなれば津田が命を絶つ可能性まで、考えていたのだろうか。そういえば窓も少ししか開かないのだった。
舌を噛み切れば死ねると知っている。
でも、発情した力の入らない身体で、それが成し遂げられるとは思えなかった。
(だいたい、侍じゃあるまいし…… )
ふらふらと、冷蔵庫にたどり着いた。
プルトップで、手首が切れるだろうか。缶のプルトップすら、開けられるかどうか自信はないが。
(でも、死ななきゃ…… 早く、まだ、ちゃんと意識のあるうちに…… )
死ヌ…… ?
ドウセ死ヌナラ、一回、抜イテカラデイインジャナイ?気持チヨクナッテカラガイイ。αトシテカラ。αホシイ。ヤリタイ。ホシイ。αの種、ホシイ……
打ち付けた拳が痛む。発情期には、痛覚が鈍っているはずだ。
痛みのある間は正気を保っていられるような気がして、津田は壁を打ち続けた。
(律は、佐伯の両親が引きとってくれるかな…… )
佐伯が死んだとき、凛花が死んだとき、後を追おうと思わなかったわけじゃない。でも自分の元には、守らなければいけない命が残されていた。
でも、今なら。
この状況なら、すべてを投げ出すことを、許してもらえるような気がした。
(もう…… いいのかな…… 俺、がんばったよな…… ?もう…… 佐伯のところに行っても、いいかな…… )
津田はベッドから下り、ふらりと立ち上がった。膝がわらう。身体中に甘い毒がまわったような、ふわふわした心許ない感覚だった。
部屋を見回しても、使えそうなものが何もない。ロープは河野が回収していった。フォークはプラスチックだ。バスルームにも、剃刀の用意はなかった。
(あいつ、もしかしてそれを警戒して…… ?)
河野は、いざとなれば津田が命を絶つ可能性まで、考えていたのだろうか。そういえば窓も少ししか開かないのだった。
舌を噛み切れば死ねると知っている。
でも、発情した力の入らない身体で、それが成し遂げられるとは思えなかった。
(だいたい、侍じゃあるまいし…… )
ふらふらと、冷蔵庫にたどり着いた。
プルトップで、手首が切れるだろうか。缶のプルトップすら、開けられるかどうか自信はないが。
(でも、死ななきゃ…… 早く、まだ、ちゃんと意識のあるうちに…… )
死ヌ…… ?
ドウセ死ヌナラ、一回、抜イテカラデイインジャナイ?気持チヨクナッテカラガイイ。αトシテカラ。αホシイ。ヤリタイ。ホシイ。αの種、ホシイ……
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