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Ωが生まれない世界
15.
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美馬が申し訳なさそうに少し頭を下げる。
「や、あの、休んでたのは…… こっちの勝手なんで」
津田がそう言うと、隣から記入用紙を覗き込んでいた増井が「あれぇ」と声をあげた。
「里谷さん、なんでエントリーしてるんですか?まだ生まれてないでしょぉ?」
離れた席まで声を飛ばし、増井は里谷に問いかけた。
「母親の目だかへそだかを通して、見えてるらしいんだよ。胎児でも参加していいって、企画に確認は取ってる」
照れ隠しなのか、里谷がクールな表情を崩さずに答えた。
「それに、せっかくそういうイベントを企画してる人たちがいるんだから、積極的に参加すべきだと思うんだよ、俺はね」
最後の部分にアクセントがあったような気がする。「俺はね」?
「乾主任こういうの、参加しないですもんね」
美馬がぽつりとつぶやいた。
「あ、ほんとだ。主任書いてない。主任って、お子さんいくつでしたっけ」
増井の言葉に答えたのは副主任だ。
「上が来年から小学生。うちと一緒。下の子は3つ下じゃなかったかな」
「おしごと見学にぴったりの年じゃないですかぁ。なんで毎年不参加なんだろ」
「さあねぇ、仕事とプライベートは別にしたいんじゃないの?それか実は子どもにメロメロで、それを部下に見られたくないから連れてこないとか?」
「やだぁ!そんな主任想像できない!っていうかまじ鳥肌!」
副主任と増井が盛り上がるなか、美馬がそっと告げた。
「それ、締め切り今週中なんで、考えておいてください。うちの部署では津田さんが最後だから、持っててもらっていいです。戻り、私で」
津田は、真顔でただうなずいた。
まだ完全には終わっていない発情期のせいで身体は火照っているのに、腹の底が冷えるような感じがした。
「や、あの、休んでたのは…… こっちの勝手なんで」
津田がそう言うと、隣から記入用紙を覗き込んでいた増井が「あれぇ」と声をあげた。
「里谷さん、なんでエントリーしてるんですか?まだ生まれてないでしょぉ?」
離れた席まで声を飛ばし、増井は里谷に問いかけた。
「母親の目だかへそだかを通して、見えてるらしいんだよ。胎児でも参加していいって、企画に確認は取ってる」
照れ隠しなのか、里谷がクールな表情を崩さずに答えた。
「それに、せっかくそういうイベントを企画してる人たちがいるんだから、積極的に参加すべきだと思うんだよ、俺はね」
最後の部分にアクセントがあったような気がする。「俺はね」?
「乾主任こういうの、参加しないですもんね」
美馬がぽつりとつぶやいた。
「あ、ほんとだ。主任書いてない。主任って、お子さんいくつでしたっけ」
増井の言葉に答えたのは副主任だ。
「上が来年から小学生。うちと一緒。下の子は3つ下じゃなかったかな」
「おしごと見学にぴったりの年じゃないですかぁ。なんで毎年不参加なんだろ」
「さあねぇ、仕事とプライベートは別にしたいんじゃないの?それか実は子どもにメロメロで、それを部下に見られたくないから連れてこないとか?」
「やだぁ!そんな主任想像できない!っていうかまじ鳥肌!」
副主任と増井が盛り上がるなか、美馬がそっと告げた。
「それ、締め切り今週中なんで、考えておいてください。うちの部署では津田さんが最後だから、持っててもらっていいです。戻り、私で」
津田は、真顔でただうなずいた。
まだ完全には終わっていない発情期のせいで身体は火照っているのに、腹の底が冷えるような感じがした。
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