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第八節 生体実験
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「尾坦子さん!」
ガラス張りの壁に駆け寄る主人公。
「ん? ツトム君? ツトム君じゃないの! どうしてここへ?」
こちらに気付いた尾坦子が椅子から立ち上がり、近寄ってくる。
「ああ、尾坦子さん……」
壁に手を当てる主人公、涙ぐんでいる。
「無事……だったんだね。尾坦子さん」
「全っ然元気よ。ゾムビー化しちゃったけどね」
全身紫色をした尾坦子が話す。
「私ね」
「うん」
「ここで対ゾムビーの研究の手伝いをしているの。ゾムビー達を怯ませる電波だとか、ゾンビ―達をいち早く発見するための電波だとかを浴びて、その結果を調べられているわけ」
「それって生体実験じゃないか! 大丈夫なの⁉」
「うん。平気よ」
淡々と話す尾坦子。
「しんどい時もあるけど、殺されるほどの電波を浴びるわけじゃないわ。私ね、誰かを助けたい、誰かの役に立ちたいってずっと思いながら生きてきて、それでナースになったの。だから今、ゾムビーを退治するための役に立ててとっても幸せなの」
「それでも! 尾坦子さんがひどい目に遭ってるのを! 僕は見過ごせない‼」
涙ながらに叫ぶ主人公。しかし――、
「小僧、次の実験が始まる。邪魔をするな」
研究者に腕を掴まれ、尾坦子から遠ざけられる主人公。
「尾坦子さん‼」
ガラス越しに笑顔で手を振る尾坦子。
「よし! 始めるぞ」
尾坦子は椅子に座る。部屋の両サイドから電波を出すらしき機械が出てくる。
「電波放射5秒前、4、3……」
研究室内にアナウンスが流れる。
「あぁ。尾坦子さん……」
「2、1……」
「ゆんゆんゆんゆん」
電波が尾坦子に向かって放射され始めた。
「ああ――――ん!」
体をのけ反らせ悶える尾坦子。
「…………嬉しそう」
唖然とする主人公。涙は乾いていった。
「再会の時間があまり取れなくて済まなかったな」
爆破が主人公に向かって話す。
「あの、……本当に尾坦子さんは大丈夫なのでしょうか?」
主人公が問う。
「生命維持に支障は無い程度の電波だ。これくらいは、こちらとしても協力してもらわなければならない」
「そうですか……」
「あ――ん!」
相変わらず叫んでいる尾坦子。
「……」
主人公の涙は完全に乾いた。
「ここを出ようか」
爆破が話を切り出す。
「えっ。次はどこへ?」
疑問を浮かべる主人公。
「ウィ――ン」
研究室を出る3人。逃隠がひそひそ声で話す。
「ツトム、なんか中学生が見てはいけないモノを見てしまったナ」
「……うるさいよ」
ラボの廊下を歩く3人。爆破が口を開く。
「会わせたい人がいると言って君を呼んだのだが、本題はそれではなかったんだ」
「どういうことですか?」
主人公が問う。
「あの女性をダシに使って悪かったのだが、ツトム、君に頼みたいことがあってな」
「?」
「一緒に、ゾムビー達と戦ってほしい」
「!」
「ゾムビー達は世界各地に出現し、人々を襲っている。このままでは人類の存亡に関わってくる。我々、狩人は強い。だが、特殊な訓練を耐え抜いてきた部隊だけあってその数は僅か、人手不足なのだ。この間の体育館裏の時も出動が遅くなってしまっただろう? それは随所に基地と隊員が少ないからなんだ。今、一人でも多くの強力な人材が欲しい」
「はぁ……」
「そこでだ。超能力が発現した君に、ぜひ協力してもらいたいのだ」
「そう言われても、僕、超能力を上手く使いこなせるかどうか……」
「心配しなくていい」
「ツカ……」
爆破が足を止める。そこには大きな扉が。
「君にはここで、1カ月間訓練を行ってもらう!」
「ガッ……ゴゴゴゴゴゴ……ガシャン」
大きな扉が開く。
「この、第2訓練場で超能力を! 完全にマスターしてもらう‼」
「!」
広い部屋になっていた。そこにはゾムビーをかたどった的のようなもの(サンドバックに似ている)が無数に有り、何かを測る7セグメントの大きな表示器のようなものも存在した。
(何かしら、訓練をするには充分な設備だ……でも!)
「僕、まだ中学生ですし、学校生活とかに支障が出たら……。今、夏休みといっても宿題もあるし……」
最後は小声になったが、主人公が反論する。すると、声高に爆破は言う。
「はっはっは。なぁに、宿題、勉強なんてものは受験の年の夏休みからすればいい。君はまだ2年生だろ? それと、自分の友達や家族、恋人をゾムビー達に奪われてしまってもいいのかい?」
「友達、家族……恋人……」
友出、両親、尾坦子が頭に浮かぶ主人公。
(もう、誰も尾坦子さんのようにはしたくない!)
「……分かりました。あまり……自信はありませんが、やってみます」
少しばかりではあるが決意を固めた主人公。
「よろしい」
爆破が頷く。
「俺もやってやるゼィ!」
逃隠が右手を上げながら声高らかに宣言する。
「そうだなぁ、君は……ツトムのサポートを頼む。器材運びとか」
「ガ――――ン」
爆破の言葉にショックを受ける逃隠。
「まぁ最初の方は、器材運びも必要ないと思うが」
「?」
爆破の言葉に疑問を持つ主人公。
「まあいい、始めるぞ!」
ゾムビーをかたどったサンドバックが無数に現れる。表示記が灯り、0が表示される。
(やるぞ! コガレ君を、家族を、尾坦子さんを! 守るんだ‼)
ーーーー
あとがき
さあ、急な微エロ描写に、面食らった方も多いのでは!? シリアス展開になるや否やのところで、このノリです。のらりくらり行きます。
ガラス張りの壁に駆け寄る主人公。
「ん? ツトム君? ツトム君じゃないの! どうしてここへ?」
こちらに気付いた尾坦子が椅子から立ち上がり、近寄ってくる。
「ああ、尾坦子さん……」
壁に手を当てる主人公、涙ぐんでいる。
「無事……だったんだね。尾坦子さん」
「全っ然元気よ。ゾムビー化しちゃったけどね」
全身紫色をした尾坦子が話す。
「私ね」
「うん」
「ここで対ゾムビーの研究の手伝いをしているの。ゾムビー達を怯ませる電波だとか、ゾンビ―達をいち早く発見するための電波だとかを浴びて、その結果を調べられているわけ」
「それって生体実験じゃないか! 大丈夫なの⁉」
「うん。平気よ」
淡々と話す尾坦子。
「しんどい時もあるけど、殺されるほどの電波を浴びるわけじゃないわ。私ね、誰かを助けたい、誰かの役に立ちたいってずっと思いながら生きてきて、それでナースになったの。だから今、ゾムビーを退治するための役に立ててとっても幸せなの」
「それでも! 尾坦子さんがひどい目に遭ってるのを! 僕は見過ごせない‼」
涙ながらに叫ぶ主人公。しかし――、
「小僧、次の実験が始まる。邪魔をするな」
研究者に腕を掴まれ、尾坦子から遠ざけられる主人公。
「尾坦子さん‼」
ガラス越しに笑顔で手を振る尾坦子。
「よし! 始めるぞ」
尾坦子は椅子に座る。部屋の両サイドから電波を出すらしき機械が出てくる。
「電波放射5秒前、4、3……」
研究室内にアナウンスが流れる。
「あぁ。尾坦子さん……」
「2、1……」
「ゆんゆんゆんゆん」
電波が尾坦子に向かって放射され始めた。
「ああ――――ん!」
体をのけ反らせ悶える尾坦子。
「…………嬉しそう」
唖然とする主人公。涙は乾いていった。
「再会の時間があまり取れなくて済まなかったな」
爆破が主人公に向かって話す。
「あの、……本当に尾坦子さんは大丈夫なのでしょうか?」
主人公が問う。
「生命維持に支障は無い程度の電波だ。これくらいは、こちらとしても協力してもらわなければならない」
「そうですか……」
「あ――ん!」
相変わらず叫んでいる尾坦子。
「……」
主人公の涙は完全に乾いた。
「ここを出ようか」
爆破が話を切り出す。
「えっ。次はどこへ?」
疑問を浮かべる主人公。
「ウィ――ン」
研究室を出る3人。逃隠がひそひそ声で話す。
「ツトム、なんか中学生が見てはいけないモノを見てしまったナ」
「……うるさいよ」
ラボの廊下を歩く3人。爆破が口を開く。
「会わせたい人がいると言って君を呼んだのだが、本題はそれではなかったんだ」
「どういうことですか?」
主人公が問う。
「あの女性をダシに使って悪かったのだが、ツトム、君に頼みたいことがあってな」
「?」
「一緒に、ゾムビー達と戦ってほしい」
「!」
「ゾムビー達は世界各地に出現し、人々を襲っている。このままでは人類の存亡に関わってくる。我々、狩人は強い。だが、特殊な訓練を耐え抜いてきた部隊だけあってその数は僅か、人手不足なのだ。この間の体育館裏の時も出動が遅くなってしまっただろう? それは随所に基地と隊員が少ないからなんだ。今、一人でも多くの強力な人材が欲しい」
「はぁ……」
「そこでだ。超能力が発現した君に、ぜひ協力してもらいたいのだ」
「そう言われても、僕、超能力を上手く使いこなせるかどうか……」
「心配しなくていい」
「ツカ……」
爆破が足を止める。そこには大きな扉が。
「君にはここで、1カ月間訓練を行ってもらう!」
「ガッ……ゴゴゴゴゴゴ……ガシャン」
大きな扉が開く。
「この、第2訓練場で超能力を! 完全にマスターしてもらう‼」
「!」
広い部屋になっていた。そこにはゾムビーをかたどった的のようなもの(サンドバックに似ている)が無数に有り、何かを測る7セグメントの大きな表示器のようなものも存在した。
(何かしら、訓練をするには充分な設備だ……でも!)
「僕、まだ中学生ですし、学校生活とかに支障が出たら……。今、夏休みといっても宿題もあるし……」
最後は小声になったが、主人公が反論する。すると、声高に爆破は言う。
「はっはっは。なぁに、宿題、勉強なんてものは受験の年の夏休みからすればいい。君はまだ2年生だろ? それと、自分の友達や家族、恋人をゾムビー達に奪われてしまってもいいのかい?」
「友達、家族……恋人……」
友出、両親、尾坦子が頭に浮かぶ主人公。
(もう、誰も尾坦子さんのようにはしたくない!)
「……分かりました。あまり……自信はありませんが、やってみます」
少しばかりではあるが決意を固めた主人公。
「よろしい」
爆破が頷く。
「俺もやってやるゼィ!」
逃隠が右手を上げながら声高らかに宣言する。
「そうだなぁ、君は……ツトムのサポートを頼む。器材運びとか」
「ガ――――ン」
爆破の言葉にショックを受ける逃隠。
「まぁ最初の方は、器材運びも必要ないと思うが」
「?」
爆破の言葉に疑問を持つ主人公。
「まあいい、始めるぞ!」
ゾムビーをかたどったサンドバックが無数に現れる。表示記が灯り、0が表示される。
(やるぞ! コガレ君を、家族を、尾坦子さんを! 守るんだ‼)
ーーーー
あとがき
さあ、急な微エロ描写に、面食らった方も多いのでは!? シリアス展開になるや否やのところで、このノリです。のらりくらり行きます。
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