社畜戦士

いぶさん

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第二話 配属先、決定

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5月も終わり、まるで緊張感の無い研修期間も過ぎ、6月。俺は株式会社KMXの正社員として株式会社Dに派遣されるべく、配属先決定の面談を受けるコトとなった。

面談の会場は株式会社Dの1階、立てば顔が出るくらいの高さのつい立てで区切られた半個室でおこなわれた。因みにその半個室は1階だけでも100個くらいあった。流石大手企業。うちの会社と違い、施設だけでなく研修も立派なモノなのだろうなと考えつつ、100ほどある半個室の中で、どれが自分の面談が行われる場所か少し迷いそうになりながら歩いた。

幾つ半個室の席番号を数えながら歩いただろうか。漸く目的の場所につき、汗をかかない程度に緊張し、扉部分をノックした。

「どうぞー」

「ハイ!!」

それなりに元気よく入室し、名前を名乗った。

「田淵真司と言います!」

「係長の室井です」

「主任の加苅かがりです」

「同じく主任の小林です」

3人居た年上の先輩上司達もお返しに名前を教えてくれた。軽く自己紹介をと言われ、学生時代にしてきた部活動、先行学科等を話した。緊張しなくていいよと、室井係長は話の途中で声をかけてくれた。そして、

「オームの法則が分かってればいいから」

(ハ!!?)

室井係長から衝撃の言葉が発せられた。

オームの法則!? あれって中学とかで習うやつ、下手すりゃ小学生でも理解できる内容の公式だよな……。まさか、配属後も緊張感の無い業務が続くのか? いや、あり得ない。KMXは中小企業でも、株式会社Dは日本屈指の大企業だ。その大企業が中坊でもできる内容の業務をやってるわけがない。時が止まったように、少しフリーズしてしまった。

「固まんなくていいよ。続けて」

「はい……」

室井係長の言葉を耳にし、やっと話の続きを話す。

数十分話しただろうか。最後に、あちらからこうしてほしい等といった要望があるかと問われた。想定外の急な質問に、少し考えこむ。そして口を開いた。

「理不尽な事が無ければ、特にはありません」

「なるほどね」

あぁ、そうかと半個室の面談会場は和やかな空気に包まれた。

かに思えた、矢先――、

「あー最近、理不尽な事で怒っちゃうなー」

口を開いたのは小林主任。

(ゲッ、マジかこの人。どのくらい理不尽なんだ?)

顔がこわばる。室井係長はやめてくれよー、と諭し、加苅主任は、ははと笑っていた。

「そんな人の下で、働きたくありません!」

その一声は、この田淵真司の口からは出てこなかった。その一声が出せなかったことに、深く後悔するコトとなるのをこの後、思い知るコトとなる。

面談が終わった。研修センターに帰ると、よっぽどのことが無い限り、配属が決定するよと、研修担当に言われた。しかし、引っかかる。

『あー最近理不尽な事で怒っちゃうなー』

アレは一体、どのくらいのコトを指すのだろうか? 少し昔を思い出す。

――、大学生時代、俺は居酒屋でアルバイトをしていた。その居酒屋で、俺は店長からパワハラに遭っていたのだ。俺は元来、理屈っぽい性格だ。

「何故……なんだ!?」

「……だからです」

「そういう事を聞いてるんじゃないんだよ!!」

(なら何を聞いているんだよ?)

店長とはそんなやり取りをしながら、大抵、殴られる。酷い時、そして意味不明な時ではこんな感じだ。キッチン担当で、オーダーがいつもより入ってきていたので、並行してやる締め作業が終わってなかった。そこで店長がやって来て、締め作業は終わったのか俺にと問う。俺はハイ、今やりますと答えた。すると、

「ハイ、今やりますだと!! お前また言い訳したな!? 言い訳するなと言っているだろうが!!」

店長はそう言い俺を殴ってきた。

言い訳とは? 『今やります』って返事の一種じゃないのだろうか……?

ふと我に返る。あの時よりも理不尽な事は無いハズだ。しかし、もしかすると……。

俺は一抹の不安を拭いきれないでいたが、すんなりと俺の会社での配属先は、面談した課に決定した。
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