2 / 18
第二話 配属先、決定
しおりを挟む
5月も終わり、まるで緊張感の無い研修期間も過ぎ、6月。俺は株式会社KMXの正社員として株式会社Dに派遣されるべく、配属先決定の面談を受けるコトとなった。
面談の会場は株式会社Dの1階、立てば顔が出るくらいの高さのつい立てで区切られた半個室でおこなわれた。因みにその半個室は1階だけでも100個くらいあった。流石大手企業。うちの会社と違い、施設だけでなく研修も立派なモノなのだろうなと考えつつ、100ほどある半個室の中で、どれが自分の面談が行われる場所か少し迷いそうになりながら歩いた。
幾つ半個室の席番号を数えながら歩いただろうか。漸く目的の場所につき、汗をかかない程度に緊張し、扉部分をノックした。
「どうぞー」
「ハイ!!」
それなりに元気よく入室し、名前を名乗った。
「田淵真司と言います!」
「係長の室井です」
「主任の加苅です」
「同じく主任の小林です」
3人居た年上の先輩上司達もお返しに名前を教えてくれた。軽く自己紹介をと言われ、学生時代にしてきた部活動、先行学科等を話した。緊張しなくていいよと、室井係長は話の途中で声をかけてくれた。そして、
「オームの法則が分かってればいいから」
(ハ!!?)
室井係長から衝撃の言葉が発せられた。
オームの法則!? あれって中学とかで習うやつ、下手すりゃ小学生でも理解できる内容の公式だよな……。まさか、配属後も緊張感の無い業務が続くのか? いや、あり得ない。KMXは中小企業でも、株式会社Dは日本屈指の大企業だ。その大企業が中坊でもできる内容の業務をやってるわけがない。時が止まったように、少しフリーズしてしまった。
「固まんなくていいよ。続けて」
「はい……」
室井係長の言葉を耳にし、やっと話の続きを話す。
数十分話しただろうか。最後に、あちらからこうしてほしい等といった要望があるかと問われた。想定外の急な質問に、少し考えこむ。そして口を開いた。
「理不尽な事が無ければ、特にはありません」
「なるほどね」
あぁ、そうかと半個室の面談会場は和やかな空気に包まれた。
かに思えた、矢先――、
「あー最近、理不尽な事で怒っちゃうなー」
口を開いたのは小林主任。
(ゲッ、マジかこの人。どのくらい理不尽なんだ?)
顔がこわばる。室井係長はやめてくれよー、と諭し、加苅主任は、ははと笑っていた。
「そんな人の下で、働きたくありません!」
その一声は、この田淵真司の口からは出てこなかった。その一声が出せなかったことに、深く後悔するコトとなるのをこの後、思い知るコトとなる。
面談が終わった。研修センターに帰ると、よっぽどのことが無い限り、配属が決定するよと、研修担当に言われた。しかし、引っかかる。
『あー最近理不尽な事で怒っちゃうなー』
アレは一体、どのくらいのコトを指すのだろうか? 少し昔を思い出す。
――、大学生時代、俺は居酒屋でアルバイトをしていた。その居酒屋で、俺は店長からパワハラに遭っていたのだ。俺は元来、理屈っぽい性格だ。
「何故……なんだ!?」
「……だからです」
「そういう事を聞いてるんじゃないんだよ!!」
(なら何を聞いているんだよ?)
店長とはそんなやり取りをしながら、大抵、殴られる。酷い時、そして意味不明な時ではこんな感じだ。キッチン担当で、オーダーがいつもより入ってきていたので、並行してやる締め作業が終わってなかった。そこで店長がやって来て、締め作業は終わったのか俺にと問う。俺はハイ、今やりますと答えた。すると、
「ハイ、今やりますだと!! お前また言い訳したな!? 言い訳するなと言っているだろうが!!」
店長はそう言い俺を殴ってきた。
言い訳とは? 『今やります』って返事の一種じゃないのだろうか……?
ふと我に返る。あの時よりも理不尽な事は無いハズだ。しかし、もしかすると……。
俺は一抹の不安を拭いきれないでいたが、すんなりと俺の会社での配属先は、面談した課に決定した。
面談の会場は株式会社Dの1階、立てば顔が出るくらいの高さのつい立てで区切られた半個室でおこなわれた。因みにその半個室は1階だけでも100個くらいあった。流石大手企業。うちの会社と違い、施設だけでなく研修も立派なモノなのだろうなと考えつつ、100ほどある半個室の中で、どれが自分の面談が行われる場所か少し迷いそうになりながら歩いた。
幾つ半個室の席番号を数えながら歩いただろうか。漸く目的の場所につき、汗をかかない程度に緊張し、扉部分をノックした。
「どうぞー」
「ハイ!!」
それなりに元気よく入室し、名前を名乗った。
「田淵真司と言います!」
「係長の室井です」
「主任の加苅です」
「同じく主任の小林です」
3人居た年上の先輩上司達もお返しに名前を教えてくれた。軽く自己紹介をと言われ、学生時代にしてきた部活動、先行学科等を話した。緊張しなくていいよと、室井係長は話の途中で声をかけてくれた。そして、
「オームの法則が分かってればいいから」
(ハ!!?)
室井係長から衝撃の言葉が発せられた。
オームの法則!? あれって中学とかで習うやつ、下手すりゃ小学生でも理解できる内容の公式だよな……。まさか、配属後も緊張感の無い業務が続くのか? いや、あり得ない。KMXは中小企業でも、株式会社Dは日本屈指の大企業だ。その大企業が中坊でもできる内容の業務をやってるわけがない。時が止まったように、少しフリーズしてしまった。
「固まんなくていいよ。続けて」
「はい……」
室井係長の言葉を耳にし、やっと話の続きを話す。
数十分話しただろうか。最後に、あちらからこうしてほしい等といった要望があるかと問われた。想定外の急な質問に、少し考えこむ。そして口を開いた。
「理不尽な事が無ければ、特にはありません」
「なるほどね」
あぁ、そうかと半個室の面談会場は和やかな空気に包まれた。
かに思えた、矢先――、
「あー最近、理不尽な事で怒っちゃうなー」
口を開いたのは小林主任。
(ゲッ、マジかこの人。どのくらい理不尽なんだ?)
顔がこわばる。室井係長はやめてくれよー、と諭し、加苅主任は、ははと笑っていた。
「そんな人の下で、働きたくありません!」
その一声は、この田淵真司の口からは出てこなかった。その一声が出せなかったことに、深く後悔するコトとなるのをこの後、思い知るコトとなる。
面談が終わった。研修センターに帰ると、よっぽどのことが無い限り、配属が決定するよと、研修担当に言われた。しかし、引っかかる。
『あー最近理不尽な事で怒っちゃうなー』
アレは一体、どのくらいのコトを指すのだろうか? 少し昔を思い出す。
――、大学生時代、俺は居酒屋でアルバイトをしていた。その居酒屋で、俺は店長からパワハラに遭っていたのだ。俺は元来、理屈っぽい性格だ。
「何故……なんだ!?」
「……だからです」
「そういう事を聞いてるんじゃないんだよ!!」
(なら何を聞いているんだよ?)
店長とはそんなやり取りをしながら、大抵、殴られる。酷い時、そして意味不明な時ではこんな感じだ。キッチン担当で、オーダーがいつもより入ってきていたので、並行してやる締め作業が終わってなかった。そこで店長がやって来て、締め作業は終わったのか俺にと問う。俺はハイ、今やりますと答えた。すると、
「ハイ、今やりますだと!! お前また言い訳したな!? 言い訳するなと言っているだろうが!!」
店長はそう言い俺を殴ってきた。
言い訳とは? 『今やります』って返事の一種じゃないのだろうか……?
ふと我に返る。あの時よりも理不尽な事は無いハズだ。しかし、もしかすると……。
俺は一抹の不安を拭いきれないでいたが、すんなりと俺の会社での配属先は、面談した課に決定した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる