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第四十四話 消失

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「ガッ! ……ドガッ!!」





「ぐあッ!!」





身体が主人公を殴り飛ばした。主人公はそのまま壁にぶつかる。

「見損なったぞ! ツトム!!」

身体は悔しそうに言う。一行はインド洋近海から陸地に移動し、現在はスリランカの軍事施設に駐在させてもらう事となった。

「絶対に元の御姿に戻すんじゃなかったのか!?」

身体は涙ながらに言う。

「ハ……ハイ。だって、絶対元に戻せるって信じてたから……」

主人公は腹部を押さえながら言う。



「ほ……他にどうすれば良かったんですか!?」





「! ……」





言葉が出ない身体。

「畜生ゥ」

逃隠がぼそっと呟いた。



そこへ、hunter.N州支部からトランシーバーで、こちらと明らかに空気の違う、そんな声が聞こえて来た。N州支部の者は、あちらのエース格の隊員と、こちらの隊長がやられたというのにも関わらず、今回のミッションは成功と豪語する。今回のミッションは、宇宙という未開の地での戦い、不慣れで何が起こるか不透明な状況の中、ゾムビー達を見事、撤退させ、犠牲者は2名と軽微なモノで済んだ。それを成功と見て良いと話す。

そう話すN州支部の者に対し、俯く身体。悔しさを抑えきれない。

「クッ(隊長が居なければ、今回のミッションは到底成功しえなかっただろう。それなのに! 犠牲者は2名と軽微なモノだと……? あのお方の死はそんな言葉で片付けられてしまうのか……!!)」

『それでは、今後の活動にツイテ、話しマース。狩人部隊はスリランカから直帰で帰国してもらいマース。こちらのhunter部隊はそこからN州へと帰国させマース』

『ハッ!』

N州支部の者に対し、心を殺し敬礼する身体。

『……』

『……』

英語での会話が続く中、主人公は一人、考え事をしていた。



(あの時――)



(回想)

爆破の体は、みるみるうちに溶け出すかのように小さくなっていった。

「そっ、そんな!? スマシさん!!」

主人公は叫ぶ。

「……」

爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。

(回想終了)



(スマシさん……何であんな言葉を……?)

「ム……ツトム」

顔を上げる主人公。そこには身体が居た。

「ツトム! k県に帰るぞ……。ひとまずコロンボまで移動だ……」

コロンボから成田空港への便を利用する一行。チェックインを済ませ。搭乗して行く。その誰もが俯いていた。飛行機内、主人公は寝ることもなく、機内食も食べず、景色を見る事さえせず、自分の犯した行動を悔やんでいた。一行は成田空港へ到着した。

「ひとまずここで解散だな……」



「ハッ!」



身体に敬礼する隊員達と逃隠。主人公は下を向いたままだった。

(どうしたんだ、ツトム……と言いたいところだが、無理もない、か……せめてそっとしておいてやろう)

電車に乗る主人公。虚ろな目をしている。

「ガタンガタン」

(スマシ……さん……)





主人公は自宅へと到着した。

その日、主人公は夕食を食べたが、半分以上残してしまった。自室に居る主人公。

「どうすれば良かったんだろう……ねぇ、どうすれば良かったの……? 誰か、答えてよ……」

主人公はその晩、一睡もできなかった。次の日、主人公は学校に行けずに、学校を休む。



四日後――、

主人公は学校へ通った。そして放課後、逃隠を誘い、狩人ラボへ足を運んだ。未だ本拠地襲来時の傷跡が消えない狩人ラボ。そのラボ内を歩き、身体の元へと進む。身体の自室まで辿り着いた。





「バタン」





「副隊長!」



扉を開ける。

「おお! ツトムにサケルか。丁度明日くらいに呼び出そうと思っていたところだ」

そう身体は言う。

「! 何かありましたか? 僕とサケル君は次の戦いに備えて、トレーニングをしに来たのですが……」

「だい!」

主人公と逃隠は口々に言う。

「まあ話すよりは見せた方が早いだろう。論より証拠、百聞は一見に如かず、だ。会議室に移動するぞ」



身体はそう言い、3人は会議室に足を運んだ。



「見せるって何を見せるのですか?」

主人公は身体に問う。

「そう焦るな。見てからのお楽しみ……とまでは行かないが。少し待ってくれ」

会議室に着いた。

「一体何を……」

主人公は思いを巡らせる。会議室のスクリーンに何かが映った。それは文章の様だった。

「これは……?」

「だい……?」

主人公と逃隠は疑問を持つ。

「爆破隊長の遺書だ」

身体は答えた。



「!」

「!?」



主人公と逃隠は驚愕した。

「スマシさんはいつ、こんなモノを……?」

主人公は問う。

「ひとまず言えるのは、この前のアメリカ遠征前だ」

身体は答える。

「隊長は、死ぬ覚悟であの遠征に臨んだんだい?」

逃隠は問う。身体は再び答え、話を進めた。

「まあ読んでいけば分かる、読むぞ。この文章は、爆破スマシが書いた遺書だ。この手紙を読んでいる者が居るとすれば、アメリカ遠征中に私に何かあったのだろう」



――、

『今後の指揮は全て身体スグル副隊長に委ねるとする。さて、ここでは私の言い残した指令の様なモノを書き連ねていくとしよう、少々長くなるが、読み手の者は覚悟して読んでもらいたい。私達狩人は、ゾムビー達と常に対立してきた。存在するゾムビーは全て倒す、全て殺すといったスタンスで行動してきた。しかし、今となって思う。何か別の方法があったのではないか、と。私達は自分たちの行っている事を正しいとしてきた。ゾムビーこそ悪で、悪は倒す、悪は全て殺す、そうしてきた。だが、正義の反対は悪ではない。正義の反対はもう一つの正義だ。片方に家族、友人、恋人がいる様に、もう一方にも家族、友人、恋人がいる。私たちとて同じだ。私達に家族、友人、恋人がいる様に、ゾムビー達にも家族、友人、恋人がいるかも知れない。双方が対決するのが歯がゆく、厄介で、煩わしい。

さて、この星には、多種多様な生物が生息している。互いに共存している部分もあれば、殺し合い、命を奪い合って生きている部分もある。更に人々は、犯罪に手を染め、他人を無暗に殺す事だってある。何故そうなってしまうのか……。犯罪者について少し考えてみよう。彼らも、生まれたての頃はどんな汚れ無き眼でどんな明るい未来を夢見ていたかは、犯罪に手を染めた後では当の本人すら分からないだろう。

物事には必ず原因と結果がある。ヒトラーを知っているか? ユダヤ人等に対する組織的な大虐殺、ホロコーストを引き起こした張本人だ。彼は幼少期、酷いいじめに遭っており、彼を助ける者は、誰一人として居なかったという。彼に救いの手を差し伸べる者が居れば、ホロコーストは起きなかったかも知れない。少し重たい話で済まない。

もう一度言う。物事には必ず原因と結果がある。犯罪に手を染めた者も、幼少期や今、抱えている問題が有るのかも知れない。

そこで、だ。手を差し伸べる、という道は無いだろうか? 犯罪者になってしまいそうな状況に立たされている者、過酷な状況に置かれている者らに手を差し伸べるという道だ。そうやって手を差し伸べていくうちに、犯罪という行為は消えてなくなっていくのではないだろうか?

それはゾムビーとて同じかも知れない。攻撃や威嚇に対して返って来るものは攻撃だ。元々ゾムビーの住処に無断で侵入して行ったのは私たち人間だ。ゾムビー達が大切にしている石を奪ったのも私たち人間だ。そこは反省すべき点だと、私は切に思う』
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