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第十四話 沼地調査

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会議室のような部屋。爆破の他に、10人程度の人物がいる。大体が爆破よりも年上のように見える。

「前回の戦果を報告します」

爆破が話し出す。

「まず、被害報告から……一般人の被害者数0名。狩人隊員の死者16名」

「今度は狩人から死者が出たのか」

「おいおい、ただでさえこの支部は100人程度の場所なのに、多すぎやしないか?」

部屋の中はざわつき始めた。

「申し訳ございません。全て私の不注意が原因です。ここで陳謝させて頂きます。しかし、ゾムビーについて分かったことがあります」

「ほほう、それはどんな?」

爆破の言葉に興味を示す一人の男性。

「はい、ゾムビー化した人間ですが、ゾムビー化する前の能力をゾムビーに引き継ぐことが分かりました。今回で言うと、抜群の射撃能力を誇る狩人の隊員がゾムビー化し、銃を撃つゾムビーが発生しました」

「なんと!」

「信じられん」

爆破の言葉に、再び部屋の中がざわつく。

「はい、ですので今回はそのゾムビーに対してはまず、銃器の破壊を優先して戦いに挑みました。戦いを順を追って振り返りますと……」

爆破は現場に到着してから戦いが終わるまでを順に説明していった。



――シャワー室、入り口には女性用とある。

「シャ――――」

シャワーを浴びるスレンダーな女性が一人、爆破スマシである。肢体には傷跡一つ無く、如何に今までの戦いを無傷でくぐり抜けてきたかがうかがえる。

「ふぅ。理事会への報告、毎度ながら疲れるな」

「キュ」

シャワーを止め、シャワー室を出て、バスタオルで体を拭く。

(今回の戦い、大事な隊員を16名も死なせてしまった。済まない。……これで戦力は減る一方だ。ツトムの加入が本当にありがたい限りだな)

下着を着ながら、考える爆破。

「さて、特訓の方、そろそろ大詰めになるな」

服を着て、第2訓練場へ歩き出す爆破。

――、



爆破が訓練場に着いた時には、もう既に主人公が来ていた。

「スマシさん、今日は遅かったですけど、何かあったのですか?」

主人公が問う。

「ああ、理事会への戦果報告があってな。理事会の連中の前で話すのは気苦労が絶えないよ」

爆破が答える。

「そうなんですか。お疲れ様です。サケル君と副隊長は? 見当たりませんが」

キョロキョロと周りを見渡す主人公。

「ああ、あいつらなら第1訓練場で組手を行っている。サケルが自ら志願して申し出たんだ。せっかくだから身体副隊長にお願いして、相手してもらっている」

「へぇ。サケル君も頑張ってるんだ」

爆破の言葉を聞き、顔がほころぶ主人公。

「じゃあ特訓を開始するぞ、ツトム。お前のこれまでの全力をぶつけていけ!」

「ハイ!!」

配置に着く主人公。いつものように手袋をはめる。両手をサンドバックに向ける。

(集中……集中だ……この町で、ゾムビー達の好き勝手にはさせない!!)





「リジェクトォオオ!!」







「ドッガァアア!!」







物凄い勢いで吹き飛ばされるサンドバック。

「威力は!?」

表示記を見る主人公。



「ピピピピピピ……ピ」



502kgの表示。

「やった! 目標の500kg!」

喜ぶ主人公。

「パン、パン、パン」

手を叩く爆破。

「よくやってくれた、ツトム。この短い期間での特訓、ゾムビー討伐の中でよく成長してくれた。3週間にまけてやると以前言ったが、本日をもって特訓を修了とする」

「スマシさん……」

目を潤ませる主人公。

「どうしたツトム? そんなに嬉しいのか」

爆破が問う。

「はい、だって……これで、やっと宿題ができる」

「……切実なんだな」

主人公の言葉に、呆気にとられる爆破だった。





――、

夏休みが終わったある日、主人公の学校に足を運んだ爆破。そして主人公に爆破は言う。

「次の土曜日には沼地へ行ってゾムビー発見のための調査を行うことにする」

「ぬ……沼地……?」

――K県のとある沼地。主人公、爆破らを含む狩人の部隊が10名ほど、ぬかるんだ道を進んでいる。

(K県にこんなところがあったなんて……まるでジャングルみたいだ。サケル君ちもそうだったけど、意外と自然で溢れている所が多いんだな……)

そう考え事をしながら歩く。ふと、前を歩く爆破に話し掛ける。

「スマシさん。もう1時間近く歩いていますが、本当にここにゾムビーは居るのでしょうか?」

前を向き、歩きながら爆破が答える。

「分からん。……だが、調べてみる価値はあるんだ。前も言った通り、ゾムビー達は湿った場所を好みとするとされている。更には、ヘドロや腐敗物があったり、プランクトンがいる場所にも発生しやすいとされている。この前ゾムビーが発生した、ツトムの学校にある排水口も、その理由で徹底的に洗浄、殺菌を狩人で行っている。話は逸れたが、ここの沼地付近の地域に、過去8件のゾムビー発生事例があった。」

「そんなに集中しているのですか!」

主人公は驚く。

「ああ、だからこの沼地には何かあると踏んでいるんだ。……おや?」

爆破が何かに気付く。そこには大きな一本の木が立っていた。

「全員、止まれ!」

爆破の号令により、隊は立ち止った。

「全員、この木の周りに集まれ」

続けて爆破は言う。

「フム、丁度いいところに、こんな大きな木があったな。これより、探索の効率を上げるため、3つに隊を分ける! この木から見て、北東、南東、真西の方向へ進んで行く事とする! 北東へ隊員5名! 南東へは、副隊長! ツトム! サケル! 隊員1名! 真西には私一人で向かおう」



「ハイ!!」



一同が返事をする。

「コンパスは所持しているな!? それでは、散!」

隊は3方向に分かれ、進みだした。酷くぬかるんだ道無き道、草木生い茂る沼地を進む。



大木から真西――、爆破は一人、ゾムビー探索を遂行している。20分もしないうちに、爆破の目の前に3体のゾムビーが現れた。



「ゾォ……」

「ゾム……」

「ゾゾォ……」



「やはり……いたか。木端微塵にしてやる!!」



「ジリ……」



ゾムビーと爆破とで、間合いが詰められていく。

「(今だ!!)バースト!!!!」

「ゾ?」



「ボッ! ボッ! ボッ!」



ゾムビー達は一瞬にして、一気に3体同時に爆破された。

「ベシャアアア!!」

そこには、ゾムビーの残骸と体液のみが残った。

(ふむ……沼地のぬかるみと、体液……見分けがつかんな。体液に触れない様、気を付けねば……)



刹那――、

「バッシャァアアア!!」



「ゾムゥ!!!!」

「ゾムバァアア!!」



爆破の背後、沼地のぬかるみから2体のゾムビーが姿を現した。

「! ……」

しかし爆破は冷静だった。すぐに振り返り、左手をかざす。そして――、

「バースト……」



「ベシャアアア!!」



2体のゾムビーは、何もできずに、爆破のバーストの餌食となった。

(……ぬかるみからも現れるか……気を付けなければな)

爆破の探索は続く。
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