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第三の封印
復讐など許しませんわっ!
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「これ以上の戦いは許しませんっ。双方、剣を収めなさい」
その凛々しい声に、俺よりも先にディミトリアが反応した。
「その声! そのお姿っ! やはりあなたはセルデリカ様だったのですね!! いやしかし、どうしてセルデリカ様がこんな場所に……!?」
ディミトリアの分身が次々と消え、残った本体が祭壇へと目を向ける。
その視線を追いかけると――見事と言うしかないほど、俺好みの美女が立っていた。
美女がセルデリカであることはすぐにわかった。
また少し成長し、その姿はもはや俺ともそう年が離れていないように見える。そしてディミトリアの反応から察するに、この姿はセルデリカの本来の姿に限りなく近いようだ。
しかし……、なんというか。
今までの成長とは比べ物にならないほど、今のセルデリカは大人の色気を手に入れていた。
豊満と呼ぶべきほど膨らんだ胸に、艶やかとして言いようがないほど魅惑的な四肢――初めて出会ったころのちんちくりんな姿からは想像できないほど、セクシーな美女に変貌を遂げていたのだ。
さらに長かった銀髪は落ち着きのあるショートカットに変わっていて、それがまた大人の色気を振りまく。ショートカット好きの俺には……、もうたまらない。
何から何までドストライクな姿だった。口調もおしとやかな感じになってるしな。
それにしても、まさか俺とディミトリアが闘いに集中している隙を突いて神器を破壊するとは思わなかった。
おかげで命拾いしたぜ。
と、俺が一息ついたところで、
「あ――――っ!!」
ディミトリアが素っ頓狂な声をあげた。
「魔王様に守れと命じられていた神器がっ!! ま、まさかセルデリカ様が!? いったいどうして――いや、魔王様になんとお詫びすればっ!?」
どうやら、やっと神器が壊されたことに気付いたらしい。
頭を抱えてペタリと座り込んでしまったディミトリアには、もはや戦意が完全になくなっているように見える。俺は最低限の警戒をしながらも、聖剣を鞘に納めることにした。
だが、今のディミトリアのセリフに気になる点が一つあった。
もしかして、ディミトリアは俺が魔王を倒したことを知らないのか……?
その疑問を言葉にしたのは祭壇のセルデリカだった。
「ディミトリア。まさかあなたは父上が勇者に倒されたことをご存じないのですか?」
「えっ? なっ!! 魔王様が倒された――っ!?」
信じられないといった表情で立ち上がったディミトリアは、またすぐにペタリと座り込んだ。まったくせわしないと思うが、主を失った騎士とはこんなものだ。
深い忠誠心を目にして、俺の胸がズキンと痛んだ。
「セルデリカ様っ、いま勇者はどこに!? この私が魔王様の仇を――いや、まさかっ?」
がばっと顔を上げたディミトリアの視線が、今度は俺に向けられた。
直感とでも言うのだろうか。互いの剣を交わしたからこそ、わかったのかもしれない。
俺こそが、勇者であると。
ディミトリアの瞳に闘志が戻り、右手が再び炎の剣を握りしめる。同時に恐ろしいほど強い殺気を向けられて、俺は一瞬ひるんでしまった。
聖剣を抜くタイミングが一瞬遅れる。
それはあまりにも致命的な隙――やばい!!
そう思った瞬間。
ディミトリアの動きを止めたのは、セルデリカの強い言葉だった。
「お止めなさいディミトリア! 復讐など許しませんわっ!」
「なっ、何故ですセルデリカ様っ!!」
ディミトリアは当然として、俺もまた驚いた。
なにせずっと疑問だったのだ。セルデリカが俺のことをどう思っているのか、と。
今まで幾度となく可愛い表情を見せてくれたが、俺は紛れもなく彼女の親の仇だ。セルデリカのチカラが語彙力と共に封印されたという背景があったとしても、嫌われることこそあれど、好かれるはずがないと心のどこかで思い続けていた。
だが、いまのセルデリカは明らかに俺を守ってくれた。
「父上が負けたのは、父上が勇者よりも弱かったからです。決して不意を突かれた訳でも、汚い罠を使われた訳でもありません。正々堂々と勝負をし、そして負けた。ならば勝者にも敗者にも敬意を払うのが魔族の掟です。それを知らぬあなたではないでしょう?」
「……ぐっ」
どうやら魔族には魔族としての生き方と誇りがあるらしい。
納得いかない様子を見せながらも、ディミトリアは炎の剣を手放した。
しかし、こんな時にこんな事を思うのは場違いな気もするが――やっぱり語彙力って大切だな……。もうほとんど語彙力が戻っているのか、二人の会話に聞き苦しい点は一つもなかった。
なんて考えていると、セルデリカはディミトリアに歩み寄って何かを話し始めていた。きっと今までの起きたことや、こんな所まで来た理由なんかを教えているのだろう。
そして最後に、
「ディミトリア・ゴーディスよ。魔王の娘セルデリカ・マグ・ソリュートニス・エルルレリア・ギリアンヌの名において、あなたが父上から課せられた任を解きます。故郷に帰って、ゆっくり休みなさい」
「……かしこまりました」
こうして俺たちは、三つ目の封印を解除することに成功した。
その凛々しい声に、俺よりも先にディミトリアが反応した。
「その声! そのお姿っ! やはりあなたはセルデリカ様だったのですね!! いやしかし、どうしてセルデリカ様がこんな場所に……!?」
ディミトリアの分身が次々と消え、残った本体が祭壇へと目を向ける。
その視線を追いかけると――見事と言うしかないほど、俺好みの美女が立っていた。
美女がセルデリカであることはすぐにわかった。
また少し成長し、その姿はもはや俺ともそう年が離れていないように見える。そしてディミトリアの反応から察するに、この姿はセルデリカの本来の姿に限りなく近いようだ。
しかし……、なんというか。
今までの成長とは比べ物にならないほど、今のセルデリカは大人の色気を手に入れていた。
豊満と呼ぶべきほど膨らんだ胸に、艶やかとして言いようがないほど魅惑的な四肢――初めて出会ったころのちんちくりんな姿からは想像できないほど、セクシーな美女に変貌を遂げていたのだ。
さらに長かった銀髪は落ち着きのあるショートカットに変わっていて、それがまた大人の色気を振りまく。ショートカット好きの俺には……、もうたまらない。
何から何までドストライクな姿だった。口調もおしとやかな感じになってるしな。
それにしても、まさか俺とディミトリアが闘いに集中している隙を突いて神器を破壊するとは思わなかった。
おかげで命拾いしたぜ。
と、俺が一息ついたところで、
「あ――――っ!!」
ディミトリアが素っ頓狂な声をあげた。
「魔王様に守れと命じられていた神器がっ!! ま、まさかセルデリカ様が!? いったいどうして――いや、魔王様になんとお詫びすればっ!?」
どうやら、やっと神器が壊されたことに気付いたらしい。
頭を抱えてペタリと座り込んでしまったディミトリアには、もはや戦意が完全になくなっているように見える。俺は最低限の警戒をしながらも、聖剣を鞘に納めることにした。
だが、今のディミトリアのセリフに気になる点が一つあった。
もしかして、ディミトリアは俺が魔王を倒したことを知らないのか……?
その疑問を言葉にしたのは祭壇のセルデリカだった。
「ディミトリア。まさかあなたは父上が勇者に倒されたことをご存じないのですか?」
「えっ? なっ!! 魔王様が倒された――っ!?」
信じられないといった表情で立ち上がったディミトリアは、またすぐにペタリと座り込んだ。まったくせわしないと思うが、主を失った騎士とはこんなものだ。
深い忠誠心を目にして、俺の胸がズキンと痛んだ。
「セルデリカ様っ、いま勇者はどこに!? この私が魔王様の仇を――いや、まさかっ?」
がばっと顔を上げたディミトリアの視線が、今度は俺に向けられた。
直感とでも言うのだろうか。互いの剣を交わしたからこそ、わかったのかもしれない。
俺こそが、勇者であると。
ディミトリアの瞳に闘志が戻り、右手が再び炎の剣を握りしめる。同時に恐ろしいほど強い殺気を向けられて、俺は一瞬ひるんでしまった。
聖剣を抜くタイミングが一瞬遅れる。
それはあまりにも致命的な隙――やばい!!
そう思った瞬間。
ディミトリアの動きを止めたのは、セルデリカの強い言葉だった。
「お止めなさいディミトリア! 復讐など許しませんわっ!」
「なっ、何故ですセルデリカ様っ!!」
ディミトリアは当然として、俺もまた驚いた。
なにせずっと疑問だったのだ。セルデリカが俺のことをどう思っているのか、と。
今まで幾度となく可愛い表情を見せてくれたが、俺は紛れもなく彼女の親の仇だ。セルデリカのチカラが語彙力と共に封印されたという背景があったとしても、嫌われることこそあれど、好かれるはずがないと心のどこかで思い続けていた。
だが、いまのセルデリカは明らかに俺を守ってくれた。
「父上が負けたのは、父上が勇者よりも弱かったからです。決して不意を突かれた訳でも、汚い罠を使われた訳でもありません。正々堂々と勝負をし、そして負けた。ならば勝者にも敗者にも敬意を払うのが魔族の掟です。それを知らぬあなたではないでしょう?」
「……ぐっ」
どうやら魔族には魔族としての生き方と誇りがあるらしい。
納得いかない様子を見せながらも、ディミトリアは炎の剣を手放した。
しかし、こんな時にこんな事を思うのは場違いな気もするが――やっぱり語彙力って大切だな……。もうほとんど語彙力が戻っているのか、二人の会話に聞き苦しい点は一つもなかった。
なんて考えていると、セルデリカはディミトリアに歩み寄って何かを話し始めていた。きっと今までの起きたことや、こんな所まで来た理由なんかを教えているのだろう。
そして最後に、
「ディミトリア・ゴーディスよ。魔王の娘セルデリカ・マグ・ソリュートニス・エルルレリア・ギリアンヌの名において、あなたが父上から課せられた任を解きます。故郷に帰って、ゆっくり休みなさい」
「……かしこまりました」
こうして俺たちは、三つ目の封印を解除することに成功した。
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