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第三の封印
最も強いと言われた四人のうちの一人
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予想していた通り、オルガス火山は恐ろしく暑かった。
まぁ、周囲にはまぶしいくらいオレンジ色に輝くマグマが山ほど流れているのだから、当然と言えば当然だが。
「あっついわねぇ。もう服脱いじゃおうかしら」
「まっ、待てセルデリカ! 飛び火でやけどするから肌は出さない方が良い……」
「えー。暑いのにぃ」
一瞬ドキっとしながらも、冷静を心掛けて注意を促す。
薄着のセルデリカを見てみたいという欲望は確かに有るが、そこは勇者として理性で何とか押さえ込んだ。まったく。ついこの間まで可愛らしいの少女だったってのに、最近は色気が出てきて困るぜ。
さておき、ダンジョンの捜索は暑さとの戦いなので水分摂取が欠かせない。
しかし持ち運べる飲み水には限度があるので、水が無くなればその日の探索は終了することにした。決して無理はせず、万全の準備をしてダンジョンを探す。
樹海での経験を活かした形だ。
そうしてダンジョンの捜索を始めてから四日が経ったこの日。
「ねぇ勇者、アレじゃない!?」
「おお、確かにアレっぽいな!」
語彙力が戻っているのにアレアレと叫ぶ自分たちを少し可笑しく思いながらも、俺たちはついにダンジョンの入り口を見つけることに成功した。
ダンジョンの中は外に比べると随分と涼しかった。
だが、そのせいなのか魔物のねぐらになっているようだ。
「さっそく出やがったな。セルデリカ、手伝ってくれるか?」
「帰ったら美味しい物を食べさせてくれるなら、手伝ってあげる」
「はいはい、言うこと聞いてやるから頼んだぞ」
腹の中に溜め込んだマグマを吐き出してくる魔物や、マグマを固めた硬い殻を背中に背負う魔物といった具合に、北のダンジョンで戦った魔物より何倍も手強い魔物を相手にしながら奥に進む。
セルデリカの魔法によるサポートもあったので、それほど苦労なく進むことができたのだが、たた一つだけ気がかりなことがあった。
ダンジョンの壁には等間隔に松明が設置してあるのだ。
そのおかげで俺たちは足元を気にすることなく進める訳だが、まさかこの松明を人間が設置したとは思えない。そもそも人間はオルガス火山には近寄らないのだ。
おそらく、この奥に待ち構えている神器の守護者が用意したのだろう。
ゴーレムやスライムとは違い、知能が高い相手のようだ。
なんてことを考えながら進んでいると、ついにダンジョンの最奥にたどり着いた。もはや見慣れた祭壇。そこに設置してあるのは水晶か。
禍々しい魔力のせいで紫色に染まっている水晶。間違いない。あれをセルデリカに壊して貰えば、また語彙力が戻ってくるに違いない。
と、その時だった。
『――ほう、ここまで人間が来たのは初めてですね』
周囲の壁を震わせる男の声がした。
俺は反射で聖剣を抜いた。すると次の瞬間、炎の塊が俺に向かって飛んできた。
一瞬だけ驚いたものの、聖剣を振り下ろして炎の塊を真っ二つに切り裂く。
『――なるほど。いい腕をお持ちの様だ』
「誰だ!」
どこからともなく聞こえてくる声に向かって叫ぶと、不思議なことが起きた。俺たちの目の前――何もなかったはずの空間に、突然一人の男が姿を現したのだ。
「ふふふっ、よくぞ聞いてくれました」
正確には魔族の男と言うべきだろう。男には雄々しい角と尻尾が生えていた。
それから男は芝居じみたポーズを取りながら、やけに嬉しそうに自己紹介を始めた。
「私は魔王様の手下の中で最も強いと言われた四人のうちの一人であり、魔王様の言い付けによりこの場所を守る者。焼け付くように熱く、身分の高い家に生まれし若き男。ディミトリア・ゴーディスと申します」
……うん?
「すまん、何を言ってるかよくわからなかった。もう一度言ってくれないか?」
まぁ、周囲にはまぶしいくらいオレンジ色に輝くマグマが山ほど流れているのだから、当然と言えば当然だが。
「あっついわねぇ。もう服脱いじゃおうかしら」
「まっ、待てセルデリカ! 飛び火でやけどするから肌は出さない方が良い……」
「えー。暑いのにぃ」
一瞬ドキっとしながらも、冷静を心掛けて注意を促す。
薄着のセルデリカを見てみたいという欲望は確かに有るが、そこは勇者として理性で何とか押さえ込んだ。まったく。ついこの間まで可愛らしいの少女だったってのに、最近は色気が出てきて困るぜ。
さておき、ダンジョンの捜索は暑さとの戦いなので水分摂取が欠かせない。
しかし持ち運べる飲み水には限度があるので、水が無くなればその日の探索は終了することにした。決して無理はせず、万全の準備をしてダンジョンを探す。
樹海での経験を活かした形だ。
そうしてダンジョンの捜索を始めてから四日が経ったこの日。
「ねぇ勇者、アレじゃない!?」
「おお、確かにアレっぽいな!」
語彙力が戻っているのにアレアレと叫ぶ自分たちを少し可笑しく思いながらも、俺たちはついにダンジョンの入り口を見つけることに成功した。
ダンジョンの中は外に比べると随分と涼しかった。
だが、そのせいなのか魔物のねぐらになっているようだ。
「さっそく出やがったな。セルデリカ、手伝ってくれるか?」
「帰ったら美味しい物を食べさせてくれるなら、手伝ってあげる」
「はいはい、言うこと聞いてやるから頼んだぞ」
腹の中に溜め込んだマグマを吐き出してくる魔物や、マグマを固めた硬い殻を背中に背負う魔物といった具合に、北のダンジョンで戦った魔物より何倍も手強い魔物を相手にしながら奥に進む。
セルデリカの魔法によるサポートもあったので、それほど苦労なく進むことができたのだが、たた一つだけ気がかりなことがあった。
ダンジョンの壁には等間隔に松明が設置してあるのだ。
そのおかげで俺たちは足元を気にすることなく進める訳だが、まさかこの松明を人間が設置したとは思えない。そもそも人間はオルガス火山には近寄らないのだ。
おそらく、この奥に待ち構えている神器の守護者が用意したのだろう。
ゴーレムやスライムとは違い、知能が高い相手のようだ。
なんてことを考えながら進んでいると、ついにダンジョンの最奥にたどり着いた。もはや見慣れた祭壇。そこに設置してあるのは水晶か。
禍々しい魔力のせいで紫色に染まっている水晶。間違いない。あれをセルデリカに壊して貰えば、また語彙力が戻ってくるに違いない。
と、その時だった。
『――ほう、ここまで人間が来たのは初めてですね』
周囲の壁を震わせる男の声がした。
俺は反射で聖剣を抜いた。すると次の瞬間、炎の塊が俺に向かって飛んできた。
一瞬だけ驚いたものの、聖剣を振り下ろして炎の塊を真っ二つに切り裂く。
『――なるほど。いい腕をお持ちの様だ』
「誰だ!」
どこからともなく聞こえてくる声に向かって叫ぶと、不思議なことが起きた。俺たちの目の前――何もなかったはずの空間に、突然一人の男が姿を現したのだ。
「ふふふっ、よくぞ聞いてくれました」
正確には魔族の男と言うべきだろう。男には雄々しい角と尻尾が生えていた。
それから男は芝居じみたポーズを取りながら、やけに嬉しそうに自己紹介を始めた。
「私は魔王様の手下の中で最も強いと言われた四人のうちの一人であり、魔王様の言い付けによりこの場所を守る者。焼け付くように熱く、身分の高い家に生まれし若き男。ディミトリア・ゴーディスと申します」
……うん?
「すまん、何を言ってるかよくわからなかった。もう一度言ってくれないか?」
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