10 / 27
第一の封印
セルデリカのシークレット
しおりを挟む
アレやコレやソレと言わずに済んだが、何かおかしい。
しかし何がおかしいのかと言われると……、なんだこの違和感は?
無駄に、無駄にオシャレな気がする。
「そうだね。これでボキャブラリーのパワーは少しグッドになったはずだよ」
確かに会話は成立している。
それはつまり語彙力が戻ったということを意味している訳だが、こうも無駄にオシャレな言葉回しをしてしまうのは、まだまだ完全には語彙力が戻っていないからだろうか。
そういえばセルデリカは以前、東西南北にある四つのダンジョンに行く必要があると言っていた。ここはまだ一つ目のダンジョン。同じようなことをあと三回ほど繰り返す必要があるって訳か。
しかし最初はノリと流れだけで安請け合いしてしまったので、少しでも語彙力が戻ってきたのなら、ここらでもう一度詳しい話を聞いた方が良いかもしれない。
そんなことを思いながらセルデリカの方に目を戻すと、俺は些細な変化に気付いた。
「あれ? セルデリカ、お前いつの間にヘアーのスタイルをチェンジしたんだ?」
無駄に。無駄にオシャレなんだよなぁ……。まあいい。
たしかセルデリカはさっきまでウェーブの掛かった髪をツインテールにしていたはずだ。それが今はどういう訳か、ストレートヘアーをポニーテールにしてまとめていた。
髪型を変えるだけならまだしも、髪質をストレートにするような時間はなかったよな?
「あ、これ? ソーリーソーリー、ちゃんとティーチしないとだよね。あたし実はボキャブラリーのパワーがロストしたタイミングに、あたし自身のパワーもロストしちゃったんだよ。それもこれもマイファザーが悪いんだけど……。でも、さっきのアーティファクトをデストロイしたからちょっとだけパワーがリターンしてきたんだ。ヘアーのスタイルがチェンジしちゃったのはそのせい。ほら、ちょっとだけだけどスタイルもアダルチックになってるでしょ?」
……。
おかしい。アレやらコレやらは言ってないはずなのに、何言ってるかぜんっぜん頭に入ってこねぇ……。
ただまぁ、語彙力が戻ってきたのと同時にセルデリカにもチカラが戻ってきたってことは伝わった。確かに喋り方も子供っぽさが抜けてる気がするし、ぺったんこだった胸もほんの少しだけ膨らんでるからな。
しかしそう考えると、今のセルデリカの姿とチカラは本物じゃないってことになる。
仮にも魔王の娘。全ての語彙力を取り戻したとき、もしかするとセルデリカには絶大なチカラが戻ってくるのかもしれない。
一抹の不安が俺の脳裏をよぎる。
だが、だからと言って語彙力の不完全な世界をこのまま放っておく訳にもいかない……。
果たして俺は、このままセルデリカと旅を続けていいのか?
少しだけ悩んで、俺は考えるのをやめた。
先のことはその時に考えればいい。親からは無鉄砲だとか大雑把だとか言われてきたが、これが俺の性格なのだ。
なにより初めて出会ったセルデリカは本当に困った様子だった。旅を始めた理由の一つとして、彼女を助けたいと思った気持ちが確かに有るのだ。
それに……、セルデリカの本当の姿ってのを見てみたいしな。
俺の見立てだと、すんごいスタイルの良い女の子に育つと思うんだよなぁ。
「勇者、どしたの?」
「おっ!? い、いや……、なんでもないぞ」
「そう?」
俺の動揺を見てセルデリカが首をちょこんと傾げるが、敢えて無視。
「とりあえず、もうここには用はないんだろ? ネクストはどこのダンジョンにゴーするかチョイスしなきゃいけないし、そろそろリターンしようぜ。俺はいい加減、このクレイジーなコールドうんざりだ」
「わかった。あたしもハングリーだし、そうだっ。またアレ食べたい!」
俺は思わず笑ってしまった。
これでまた一人、ラグンツェの串焼き愛好家が増えたって訳だ。
「オッケー。じゃあコルテックまでリターンするか」
しかし何がおかしいのかと言われると……、なんだこの違和感は?
無駄に、無駄にオシャレな気がする。
「そうだね。これでボキャブラリーのパワーは少しグッドになったはずだよ」
確かに会話は成立している。
それはつまり語彙力が戻ったということを意味している訳だが、こうも無駄にオシャレな言葉回しをしてしまうのは、まだまだ完全には語彙力が戻っていないからだろうか。
そういえばセルデリカは以前、東西南北にある四つのダンジョンに行く必要があると言っていた。ここはまだ一つ目のダンジョン。同じようなことをあと三回ほど繰り返す必要があるって訳か。
しかし最初はノリと流れだけで安請け合いしてしまったので、少しでも語彙力が戻ってきたのなら、ここらでもう一度詳しい話を聞いた方が良いかもしれない。
そんなことを思いながらセルデリカの方に目を戻すと、俺は些細な変化に気付いた。
「あれ? セルデリカ、お前いつの間にヘアーのスタイルをチェンジしたんだ?」
無駄に。無駄にオシャレなんだよなぁ……。まあいい。
たしかセルデリカはさっきまでウェーブの掛かった髪をツインテールにしていたはずだ。それが今はどういう訳か、ストレートヘアーをポニーテールにしてまとめていた。
髪型を変えるだけならまだしも、髪質をストレートにするような時間はなかったよな?
「あ、これ? ソーリーソーリー、ちゃんとティーチしないとだよね。あたし実はボキャブラリーのパワーがロストしたタイミングに、あたし自身のパワーもロストしちゃったんだよ。それもこれもマイファザーが悪いんだけど……。でも、さっきのアーティファクトをデストロイしたからちょっとだけパワーがリターンしてきたんだ。ヘアーのスタイルがチェンジしちゃったのはそのせい。ほら、ちょっとだけだけどスタイルもアダルチックになってるでしょ?」
……。
おかしい。アレやらコレやらは言ってないはずなのに、何言ってるかぜんっぜん頭に入ってこねぇ……。
ただまぁ、語彙力が戻ってきたのと同時にセルデリカにもチカラが戻ってきたってことは伝わった。確かに喋り方も子供っぽさが抜けてる気がするし、ぺったんこだった胸もほんの少しだけ膨らんでるからな。
しかしそう考えると、今のセルデリカの姿とチカラは本物じゃないってことになる。
仮にも魔王の娘。全ての語彙力を取り戻したとき、もしかするとセルデリカには絶大なチカラが戻ってくるのかもしれない。
一抹の不安が俺の脳裏をよぎる。
だが、だからと言って語彙力の不完全な世界をこのまま放っておく訳にもいかない……。
果たして俺は、このままセルデリカと旅を続けていいのか?
少しだけ悩んで、俺は考えるのをやめた。
先のことはその時に考えればいい。親からは無鉄砲だとか大雑把だとか言われてきたが、これが俺の性格なのだ。
なにより初めて出会ったセルデリカは本当に困った様子だった。旅を始めた理由の一つとして、彼女を助けたいと思った気持ちが確かに有るのだ。
それに……、セルデリカの本当の姿ってのを見てみたいしな。
俺の見立てだと、すんごいスタイルの良い女の子に育つと思うんだよなぁ。
「勇者、どしたの?」
「おっ!? い、いや……、なんでもないぞ」
「そう?」
俺の動揺を見てセルデリカが首をちょこんと傾げるが、敢えて無視。
「とりあえず、もうここには用はないんだろ? ネクストはどこのダンジョンにゴーするかチョイスしなきゃいけないし、そろそろリターンしようぜ。俺はいい加減、このクレイジーなコールドうんざりだ」
「わかった。あたしもハングリーだし、そうだっ。またアレ食べたい!」
俺は思わず笑ってしまった。
これでまた一人、ラグンツェの串焼き愛好家が増えたって訳だ。
「オッケー。じゃあコルテックまでリターンするか」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる