8 / 27
第一の封印
ダンジョン
しおりを挟む
ダンジョンの入り口は、まるで芸術のように凍りついた滝の裏にあった。
明かりが必要かと思ったが、ダンジョンの中は思っていたよりも何倍も明るかった。どうやら光を放つ鉱石が壁のあちらこちらに埋まっているようだ。
鉱石に感謝しながらさっそく中に入る。するといきなり毛むくじゃらの大男のような魔物が襲い掛かってきたのだが――、
ふんっ、あまり俺を舐めるなよ。
瞬時に聖剣を鞘から引き抜いた俺は、一切無駄のない動きで矛先を魔物の急所に突き刺した。
「おー、すごーいっ!」
セルデリカに感嘆の声を上げられて少しだけ気恥ずかしくなった。いままでずっと一人で旅をしてたから、こんな風に褒められるのって慣れてないんだよな……。
とはいえ、浮かれる訳にはいかなかった。魔王の娘とは言うものの、どうやらセルデリカには魔物と戦えるほどのチカラは無いらしい。つまり俺は自分の身だけでなく、彼女のことも守らなくてはならないのだ。
「ごめんねー、今はアレだけど、アレがアレされればちょっとはアレできると思うからー」
受け取り方によってはそのうち手伝うつもりがあるように聞こえるが、セルデリカ一人くらいならなんとか守り切れるだろう。
それより気になるのは、俺が魔物を倒すことをセルデリカはどう思っているかだ。
俺の知る限り、魔物ってのは魔族が率いていることがほとんどだ。自分たちの手足のように使役する魔物を倒されるってのは、仲間を傷つけられているのと同じなんじゃないだろうか。
あまりにも気になったので、俺は思い切って訊いてみることにした。
「なぁ、セルデリカ。俺がこいつらをアレするのって、お前的にどうなんだ?」
「んー? あー、全然アレしなくていいよー。この子たちはもうアレになっちゃってるから、アタシたちのアレをアレしてくれないんだよねー。だからー、勝手に人をアレしないうちにアレしてくれた方がアタシたちにもアレが掛からないから、どんどんアレしちゃってー」
……多少慣れてきたとはいえ、ここまでアレだらけだと全くわからねぇ。
だがどういう理屈か知らないが、気にせずに倒して良いという事だけは伝わった。
遠慮しなくていいなら願ったりかなったりだ。飛び出してくる魔物は片っ端から倒すことにして、俺たちはダンジョンの奥へ足を進める。
程なくして、一番奥だと思われる場所にたどり着いた。
そこは一際広大な空間であり、祭壇と呼ぶべきような場所だった。祭壇の中央には……、壺だろうか。禍々しい魔力を放つ祭器のようなモノが置いてある。
「あったーっ! アレだよアレ! アレをアレすれば今のコレがちょっとアレになるはずっ!」
その壺を見るなりセルデリカが騒ぎ出した。どんな仕組みになっているか検討もつかないが、どうやらアレをぶっ壊せば語彙力を取り戻せるらしい。
俺はさっそく壺の元へ足を向けたが――、
「あーっ、ちょっとまってーっ!」
セルデリカに思い切りマントを引っ張られて、俺の首がガクンと揺れる。
「いってぇ……。いきなり何すんだよ」
「たぶんねー、ここにはアレがアレしてると思うから気を付けてー」
「うん? アレって」
なんだよ。と訊こうとしたところで、突然地面がゴゴゴゴゴと揺れ出した。それから地面に突き刺さっていた巨大な鉱石が勝手に動き出し、祭壇の前で何かの形を作り始める。
嫌な予感がする……。
「なぁ……。アレってのは……、まさかコレのことか?」
「うん。アレってのはコレのことー」
俺たちの目の前に、巨大なゴーレム現れた。
明かりが必要かと思ったが、ダンジョンの中は思っていたよりも何倍も明るかった。どうやら光を放つ鉱石が壁のあちらこちらに埋まっているようだ。
鉱石に感謝しながらさっそく中に入る。するといきなり毛むくじゃらの大男のような魔物が襲い掛かってきたのだが――、
ふんっ、あまり俺を舐めるなよ。
瞬時に聖剣を鞘から引き抜いた俺は、一切無駄のない動きで矛先を魔物の急所に突き刺した。
「おー、すごーいっ!」
セルデリカに感嘆の声を上げられて少しだけ気恥ずかしくなった。いままでずっと一人で旅をしてたから、こんな風に褒められるのって慣れてないんだよな……。
とはいえ、浮かれる訳にはいかなかった。魔王の娘とは言うものの、どうやらセルデリカには魔物と戦えるほどのチカラは無いらしい。つまり俺は自分の身だけでなく、彼女のことも守らなくてはならないのだ。
「ごめんねー、今はアレだけど、アレがアレされればちょっとはアレできると思うからー」
受け取り方によってはそのうち手伝うつもりがあるように聞こえるが、セルデリカ一人くらいならなんとか守り切れるだろう。
それより気になるのは、俺が魔物を倒すことをセルデリカはどう思っているかだ。
俺の知る限り、魔物ってのは魔族が率いていることがほとんどだ。自分たちの手足のように使役する魔物を倒されるってのは、仲間を傷つけられているのと同じなんじゃないだろうか。
あまりにも気になったので、俺は思い切って訊いてみることにした。
「なぁ、セルデリカ。俺がこいつらをアレするのって、お前的にどうなんだ?」
「んー? あー、全然アレしなくていいよー。この子たちはもうアレになっちゃってるから、アタシたちのアレをアレしてくれないんだよねー。だからー、勝手に人をアレしないうちにアレしてくれた方がアタシたちにもアレが掛からないから、どんどんアレしちゃってー」
……多少慣れてきたとはいえ、ここまでアレだらけだと全くわからねぇ。
だがどういう理屈か知らないが、気にせずに倒して良いという事だけは伝わった。
遠慮しなくていいなら願ったりかなったりだ。飛び出してくる魔物は片っ端から倒すことにして、俺たちはダンジョンの奥へ足を進める。
程なくして、一番奥だと思われる場所にたどり着いた。
そこは一際広大な空間であり、祭壇と呼ぶべきような場所だった。祭壇の中央には……、壺だろうか。禍々しい魔力を放つ祭器のようなモノが置いてある。
「あったーっ! アレだよアレ! アレをアレすれば今のコレがちょっとアレになるはずっ!」
その壺を見るなりセルデリカが騒ぎ出した。どんな仕組みになっているか検討もつかないが、どうやらアレをぶっ壊せば語彙力を取り戻せるらしい。
俺はさっそく壺の元へ足を向けたが――、
「あーっ、ちょっとまってーっ!」
セルデリカに思い切りマントを引っ張られて、俺の首がガクンと揺れる。
「いってぇ……。いきなり何すんだよ」
「たぶんねー、ここにはアレがアレしてると思うから気を付けてー」
「うん? アレって」
なんだよ。と訊こうとしたところで、突然地面がゴゴゴゴゴと揺れ出した。それから地面に突き刺さっていた巨大な鉱石が勝手に動き出し、祭壇の前で何かの形を作り始める。
嫌な予感がする……。
「なぁ……。アレってのは……、まさかコレのことか?」
「うん。アレってのはコレのことー」
俺たちの目の前に、巨大なゴーレム現れた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww
刺狼(しろ)
ファンタジー
ニートの主人公は一回50万の報酬を貰えるという治験に参加し、マッドサイエンティストの手によってサイボーグにされてしまう。
さらに、その彼に言われるがまま謎の少女へ自らの血を与えると、突然魔法陣が現れ……。
という感じの話です。
草生やしたりアニメ・ゲーム・特撮ネタなど扱います。フリーダムに書き連ねていきます。
小説の書き方あんまり分かってません。
表紙はフリー素材とカスタムキャスト様で作りました。暇つぶしになれば幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
魔法力0の騎士
犬威
ファンタジー
この世界グランディアには魔法が存在する。
魔法は誰でも扱うことができ、人によって個人差があった。
魔法が当たり前のように日常に溢れている中、アリア=シュタインは生まれながらにして魔法力の値が完全に0であった。それでもアリアはその事を嘆くわけでもなく魔法が無いなら無いなりに努力を重ね、念願であった騎士になり、それから五年という月日が経った。
このころから見るようになった悪夢はアリアの人生を大きく変える物語になっていき、さらに激化する大陸戦争にアリアもまた巻き込まれていく……
イラストはぎどら(@KING GIDORA)様の力作ですので無断転載、無断使用はお止めください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる