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第一の封印
旅の目的
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「つまりだ。今のコレをアレするためには、あっちにあるアレに行ってクソつえーやつのアレがアレしてるアレをアレすればいいんだな?」
「うーん、たぶんアレじゃなくてソレだと思う的なー?」
「すまん。アレってどのアレだ? ソレするってのはアレするってことか?」
「もーっ、なんでアレしてくれないかなーっ! アレだからもう一回だけアレするよーっ! パパがアレしたアレは全部で四つあるんだけど、とりあえず一つでもソレすれば今のコレはアレになるはずーっ!」
ツインテールをぶんぶん振り回しながら、もう何度目になるかわからないアレとソレだらけの説明をセルデリカが叫ぶ。
「いや、何回言われてもソレがアレなのか、アレがソレなのかがわからねぇんだよ……」
とはいえ、情報量が圧倒的に少ない会話だろうと三時間以上も続ければ少しくらいは解読できる。
どうやら魔王に封印された語彙力を取り戻すためには、東西南北に存在するという古のダンジョンに行く必要があるらしい。
そこで何をすればいいのかまだよくわからんのだが……、まぁ要するにアレだ。なんかアレすれば、この状況は解決できるらしい。
まったく手掛かりが無いより幾分マシな現状に少しだけ希望が見えてくる。
しかし、ダンジョンに潜るとなればそれなりの準備が必要だ。
ダンジョンの中は魔族に率いられた魔物だらけという噂を聞いたことがあるし、なによりダンジョンの場所を俺は一つも知らない。長く険しい旅になることは必然だった。
となれば、まず重要なのは食料だ。
腹減っては戦えぬ。昔から戦士たちが伝えてきたように、戦いとメシには切っても切り離せない縁がある。
効果があるかどうかもわからない薬草を齧るより、ちょっと良い肉を食った方が力が出るものなのだ。そうさ、俺はそうやって魔王の元までたどり着いたんだ。
それに思えば、魔王との戦いから何も口にしていない。
空腹でぶっ倒れるようなヤワな鍛え方はしていないが、できることなら今すぐにでも美味いメシを腹いっぱい詰め込みたかった。
と、そんなことを考えていたタイミングで、
「あーっ、なんか見えてきたよー」
と、セルデリカがはしゃぐように声を上げた。彼女が指さす方を眺めると、アレア王国の北に位置するコルッテクの街がうっすらと見えた。
丁度いい。アレア王国と北の国々を繋ぐコルテックは貿易の中継地点として多くの品が揃っている。鉄板のウマイ飯から滅多に食えない珍味まで選びたい放題だ。
すぐに俺はコルテックの街に寄って準備を整えることを決めた。
「よし。ちょっとあそこに寄ってアレをするか」
「わーいっ! アタシ、人間のアレに入るのってアレなんだよねーっ」
おそらくセルデリカは人間の街に入るのが初めてだと言っているのだろう。子供のように喜ぶ姿はとても見ていて微笑ましかったが、俺はあることに気付いた。
セルデリカは魔族だ。
俺のように数多の魔族を見てきた人間とは違って、普通の人間は彼女の角と尻尾を見ただけで恐れおののいて逃げ出してしまうだろう。
俺は少し悩んでから、羽織っていた皮のマントをセルデリカに放り投げた。
「お前のコレとソレはアレだからソレをアレしてアレしとけ」
何言ってんのか、自分でも全然わっかんねぇ。
マントとフードで角と尻尾を隠せと言いたいのだが、仕方がないので角と尻尾を指さしながらジェスチャーを交えることにした。
おかげで何とかセルデリカに伝わったらしい。
「あ、そっかー。アレすればアレできるんだけど、今はアレだからアレできないんだよねー。わかったー、これあんまりアレじゃないけどアレする―」
前半は何を言っているのか全くわからなかったが、おそらく後半は『可愛くない』なんて文句を言っているのだろう。
これだから良いトコのお嬢様は……。
とはいえ、魔王を倒す旅でクタクタになったマントは確かに見栄えが悪い。
新しい旅が始まるわけだしマントも新しく買い替えるか。そうだな、もしセルデリカが気に入るような品があればついでに買ってやるとしよう。
「うーん、たぶんアレじゃなくてソレだと思う的なー?」
「すまん。アレってどのアレだ? ソレするってのはアレするってことか?」
「もーっ、なんでアレしてくれないかなーっ! アレだからもう一回だけアレするよーっ! パパがアレしたアレは全部で四つあるんだけど、とりあえず一つでもソレすれば今のコレはアレになるはずーっ!」
ツインテールをぶんぶん振り回しながら、もう何度目になるかわからないアレとソレだらけの説明をセルデリカが叫ぶ。
「いや、何回言われてもソレがアレなのか、アレがソレなのかがわからねぇんだよ……」
とはいえ、情報量が圧倒的に少ない会話だろうと三時間以上も続ければ少しくらいは解読できる。
どうやら魔王に封印された語彙力を取り戻すためには、東西南北に存在するという古のダンジョンに行く必要があるらしい。
そこで何をすればいいのかまだよくわからんのだが……、まぁ要するにアレだ。なんかアレすれば、この状況は解決できるらしい。
まったく手掛かりが無いより幾分マシな現状に少しだけ希望が見えてくる。
しかし、ダンジョンに潜るとなればそれなりの準備が必要だ。
ダンジョンの中は魔族に率いられた魔物だらけという噂を聞いたことがあるし、なによりダンジョンの場所を俺は一つも知らない。長く険しい旅になることは必然だった。
となれば、まず重要なのは食料だ。
腹減っては戦えぬ。昔から戦士たちが伝えてきたように、戦いとメシには切っても切り離せない縁がある。
効果があるかどうかもわからない薬草を齧るより、ちょっと良い肉を食った方が力が出るものなのだ。そうさ、俺はそうやって魔王の元までたどり着いたんだ。
それに思えば、魔王との戦いから何も口にしていない。
空腹でぶっ倒れるようなヤワな鍛え方はしていないが、できることなら今すぐにでも美味いメシを腹いっぱい詰め込みたかった。
と、そんなことを考えていたタイミングで、
「あーっ、なんか見えてきたよー」
と、セルデリカがはしゃぐように声を上げた。彼女が指さす方を眺めると、アレア王国の北に位置するコルッテクの街がうっすらと見えた。
丁度いい。アレア王国と北の国々を繋ぐコルテックは貿易の中継地点として多くの品が揃っている。鉄板のウマイ飯から滅多に食えない珍味まで選びたい放題だ。
すぐに俺はコルテックの街に寄って準備を整えることを決めた。
「よし。ちょっとあそこに寄ってアレをするか」
「わーいっ! アタシ、人間のアレに入るのってアレなんだよねーっ」
おそらくセルデリカは人間の街に入るのが初めてだと言っているのだろう。子供のように喜ぶ姿はとても見ていて微笑ましかったが、俺はあることに気付いた。
セルデリカは魔族だ。
俺のように数多の魔族を見てきた人間とは違って、普通の人間は彼女の角と尻尾を見ただけで恐れおののいて逃げ出してしまうだろう。
俺は少し悩んでから、羽織っていた皮のマントをセルデリカに放り投げた。
「お前のコレとソレはアレだからソレをアレしてアレしとけ」
何言ってんのか、自分でも全然わっかんねぇ。
マントとフードで角と尻尾を隠せと言いたいのだが、仕方がないので角と尻尾を指さしながらジェスチャーを交えることにした。
おかげで何とかセルデリカに伝わったらしい。
「あ、そっかー。アレすればアレできるんだけど、今はアレだからアレできないんだよねー。わかったー、これあんまりアレじゃないけどアレする―」
前半は何を言っているのか全くわからなかったが、おそらく後半は『可愛くない』なんて文句を言っているのだろう。
これだから良いトコのお嬢様は……。
とはいえ、魔王を倒す旅でクタクタになったマントは確かに見栄えが悪い。
新しい旅が始まるわけだしマントも新しく買い替えるか。そうだな、もしセルデリカが気に入るような品があればついでに買ってやるとしよう。
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