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本編

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 陽は完全に落ち、夜が訪れた。

 燭台の灯りは消え、星あかりだけが天井が消え去った裁定の間を照らしている。

 冗談のような光景に誰もが言葉を失っている。

 沈黙が支配する裁定の間に、アリスの声はまるで舞台役者のように軽やかに響き渡った。

「ダモス王! そしてディオーネ! 約束通り、聖女アリスはここに戻ってきましたよ!」
「きっ、貴様……! なにをした……なぜここに来た……!」

 堂々たる足取りで、アリスは裁定の間を歩いた。
 ダモス王が憤怒の目で見つめる。
 だが、アリスは艶然と微笑みを浮かべた。

「なにをした? 斬ったまでのこと。なぜ来た? それは異な事を。自分の仰ったことをお忘れのようですね」
「なんだと?」
「霊廟の最下層まで踏破し、魔物のことごとくを打ち倒して来るが良い。もしそれが叶ったときはすべての罪を許そう……。私はしかとこの耳で聞きましたとも」
「ば、馬鹿な……! 『天の聖女』ならまだしも、『人の聖女』ごときがあの地獄……幽神霊廟に送られて、生き残れるはずがなかろう! 者共、この罪人を殺せ!」

 ダモス王が命令を下した。

 しかし、側近の兵たちの士気は低い。
 彼らはすでにアリスの圧倒的な力を感じ取り、ダモス王の言葉に空々しささえ感じ始めていた。

「下がりなさい。この場において、権能なき者に戦う資格はありません」
「その通り。雑兵が幾らいたところで我らが戦いには無用」

 そこに、流麗な美女が進み出た。
 『天の聖女』ディオーネだ。
 冷ややかな殺気を隠すことなく、アリスの前に立ち塞がる。

「追放などと甘い処分などせず、決着を付けておくべきでしたね。どんなまじないを使ったかは知りませんが、王を仇なすというのであれば疾く地獄へ落ちるべし」
「ディオーネ」
「しかし、天井を壊したのは迂闊でしたね。我が権能は空の下でこそ最高の力を発揮する。それは夜であろうが昼であろうが同じこと……」

 ディオーネが指を弾いた瞬間、しとしとと雨が降り始めた。
 そして数秒の後には雷鳴が轟く。

 天候を自在に操る『天の聖女』の力。
 事態の成り行きを見守っていた王の側近たちはそれを見てすぐさま逃げ出した。
 見守ることさえままならないことに気付いたのだ。

 しかし、アリスは静かに溜め息をついただけであった。

「話を聞いておりませんでしたか? 権能を持たざる者は去れ、と申したのです」
「なっ……」

 アリスが凄まじい勢いで巨剣を振るった。
 余波は地面を切り裂く。
 だがそれはダモス王の前でぴたりと止まる。
 見えない壁が、アリスの放った衝撃を止めたのだ。

「貴様の相手は私だ……!」

 そしてアリスにディオーネが斬りかかった。
 凄まじい剣撃がアリスに襲いかかる。
 だがアリスも一切動揺することなくすべて防ぎ切る。

「あまりに器用すぎるのです。王へ向かう攻撃を完璧に防ぎながらも、私に対する攻撃を欠かさない」
「それは貴様より強いと言うことだ!」
「いいえ、それは違います……。幽神の名のもとに出でよ地獄の氷と炎よ! 【獄氷】!【獄炎】!」

 アリスが二つの魔法を同時に放った。
 生み出された氷が凄まじい熱を当てられ、爆発するような勢いで水蒸気が広がっていく。

「くっ、目くらましか……!」

 そして、視界が封じられた中で凄まじい剣撃の音が鳴り響いた。
 刃と刃が触れ合った瞬間の火花や、魔法を放つときの魔力の光芒が、真っ白い闇の中で花のように咲き乱れる。

「風よ、我が身を守れ!」

 その言葉が叫んだ瞬間、その白く曇った景色はすぐに吹き飛ばされた。
 風を操り、水蒸気のすべてがどこかへ消え去っていく。
 アリスはその声の主を見て呟いた。

「……やはりそういうことでしたか。ダモス王よ」
「貴様……!」
「『天の聖女』、権能を自由自在に使いこなす一方、剣と魔法の技量もまた一流。すべてが私やセリーヌよりも上だった。その絡繰りは思わぬほどに単純なものでした」

 ディオーネを抱きかかえて空を浮遊するダモス王を、アリスは厳しい目で見つめた。

「『天』の権能の持ち主はダモス王。あなただ」
「おのれ……!」
「そしてディオーネ。あなたはただの人間です。弛まぬ鍛錬によって誰よりも強くなっただけの。あなたたちは二人で一人。強い絆で結ばれた『天の聖女』……。なるほど、敵わぬわけです」

 アリスの推理通り、ダモス王こそが『天の聖人』であった。
 ディオーネを空へ飛ばして遠くから自在に操り、ディオーネがあたかも『天の聖女』であるかのように見せかけていた。

 この事実に気付いたのはセリーヌだ。
 スプリガンと共にドローンを飛ばしたり、FPSのゲームをプレイする内に気付いた。『天の聖女』としての権能……自在に空を飛んだり、誰かを飛ばしたり、あるいはそれを天から眺める『天眼』の能力さえあれば、誰かを代役に立てるのは決して不可能ではない、と。

 そして二人で一人の『天の聖女』である利点を存分に利用し、ダモスとディオーネはこれまで数々の勝利を打ち立ててきた。

「……これを見られたからには生かして返すわけにはいかんな。逃げ遅れた側近共も殺さねばならぬ」
「遺言はそれで良いのですか」

 アリスの言葉に、ダモス王は美麗な顔を歪めて盛大に笑った。

「遺言? 遺言だと? お笑い草だ! 見たところ『人の聖女』として信奉者を増やして力を付けたようだが、貴様に10万や20万の味方が居たところで何の意味もない。すべてを隠さずに全力を出せる俺とディオーネに勝てるつもりとは滑稽だな!」
「ええ、勝つつもりです。私には500万の大軍が付いているのと同じですからね」
「ならばそれごと叩き潰してやるわ!」

 ダモス王とディオーネが空中に浮遊した。

 そして再び稲光が光ったと思えば、なんと稲光が数十本の槍や剣へと姿を変えた。
 雷の槍の一振りをダモスが持ち、ディオーネは雷の剣を二本、両手に携えた。
 今まで誰も見たことのない、ダモスとディオーネの必勝の策だとアリスは気付いた。

 だがそれでも、アリスはまるで負ける気がしなかった。

「アルファビデオ、シールドオブゴールド受賞、同サイト注目新人クリエイター賞受賞! フォロワー534万7253人、累計good評価4億2150万3458pt! 『聖女アリスの生配信』が!!! あなたの運命です!!!」







 雷鳴が轟いた。

 雹が降り注いだ。

 嵐が巻き起こった。

 灼熱のような暑さが襲いかかった。

 かと思えば、豪雪と共に凍えるような寒さが訪れた。

 空から岩が落ちてきた。

 天が千変万化してエヴァーン王国の王都を襲った。

 民は、『天の聖女』の怒りであるとすぐに悟った。

 神話の如き闘争が終わりを迎えますようにと、ひたすらに祈った。

 だがそれは、反逆者の敗北を祈るものではなかった。

 下々の民が暮らす街の上に突然大きな盾が現れて、天から降り注ぐすべての災厄のすべてを防ぎきったからである。

「セリーヌ様だ……!」

「セリーヌ様が、俺たちを守ってくれている!」

「それじゃあ、戦ってるのは誰だ?」

「誰かが叛逆したんだ」

「アリスだ!」

「アリスが来た!」

「ああ、アリス様が来たぞ! 門番が騒いでた!」

「なんだって!? アリス様が!?」

「アリス様!」

「セリーヌ様! アリス様!」

 多くの民衆が、アリスたちの勝利を信じ、祈った。

 そして夜が明け、朝日が昇るころには、天が轟くことはなかった。







「ダモス王……いえ、ダモスよ。すべて調べはついています」

 裁定の間に朝日が差す頃、セリーヌがやってきた。

「ふん……セリーヌか……」

 アリスとの戦いが終わり、ダモスもディオーネも完全に力が尽きた。

 権能を振るうにも限界があり、すべてを出し切ったダモスには指一本動かす力さえなく、またディオーネも満身創痍だ。二人重なるように、息も絶え絶えになっている。

 アリスは、二人が再び立ち上がらないよう不動の構えで見守っていた。息が上がってさえいなかった。今まで決して誰にも見せてこなかったダモス王の真の力のすべてを防ぎきり、完璧な勝利を手にしていた。

「魔王との戦争で功績を上げたことも、王位を握って圧政を敷いたことも、ディオーネの出自を隠すため。そうですね?」
「よく喋りおって……無礼者め……!」

 ディオーネは殺気立った視線を送る。
 だが、セリーヌは怒ることはなく、むしろ憐れみの視線を送る。

「……『天の聖女』であり、王女であるはずのディオーネよ。あなたは……王の血を継いでいない。あなたの母は王の子であると偽り、王女として育てた」
「くっ……」
「そしてあなたの母は、すべてを闇に隠そうとするダモスに殺された」

 ディオーネが顔を背ける。
 だが、ダモスは呆然とした顔のまま、話を始めた。

「……母は愚かだった。不義をなし、王を騙し、我が妹ディオーネを育てた。だがディオーネの背中に不義の相手と同じ痣があると知るや、ディオーネの背中に松明をあてた。勘付いた人間に毒を盛った。果てには王に露見されることを恐れて心を病み、当初の目的さえ忘れてディオーネを殺そうとした。だからこちらから殺した。母が過去を消したいのであれば、すべてを知る母こそが死ぬべきだったからな。それがすべての始まりであった」

 そして、ダモスが血で血を洗う陰謀と殺戮を決意したと同時期に、魔王が活動を始めた。更に、当時王子であったダモスに『天の聖人』の権能が与えられていることがわかった。ここでダモスは「すべてを有耶無耶にして封じる好機だ」と悟ったのだと言う。

 司教を買収してディオーネを聖女として扱い、そして戦争の最中に口封じをし、似たような手口を繰り返してディオーネにとって有利な状況を作り上げた。ダモスが王となったのはあくまでついでに過ぎなかった。ディオーネに確かな身分と功績を与え、長きに渡って妹の人生を補償するために、あらゆる人間を騙し、殺してきた。

「多くの陰謀を図りながらも、兄妹の絆だけは真実だったわけですか。皮肉ですね」
「殺すがよい。流石の余も、ここまで来て敗北を悟らぬ愚か者ではない」

 そこに、ディオーネが血相を変えて口を挟んだ。

「やめろ! ダモス様は本物の王の血筋だ、王殺しをするつもりか! 殺すのは私だけで良いはずだ!」
「やめよ、ディオーネ……。権能を与えられた者は死ぬか殺されるしかない。魔王もいないのに力を持ち続けるのは危機をもたらすだけのこと。なにも俺は、貴様が憎くて殺したかったわけではないのだ」
「嘘をおっしゃい。ディオーネの真実に気付きかねない者はすべて憎かったのでしょう。だからこそ王の座を狙い、王となってからは圧政を敷き、貴族や王族、聖戦で功績を上げたものに冤罪をなすりつけた」
「さあて、どうだろうな……」

 ダモスは力なく笑った。
 ディオーネが、悔しそうに俯く。

 そこで唐突に、アリスが口を挟んだ。

「ダモス。あなたは一つ、真実を言いました。魔王もいないのに力を持った者がいるのは危機をもたらす……まったく同感です」

 その言葉に、ダモスが顔を上げた。

「ならば貴様が死んでくれるのか?」
「いいえ。死ぬか殺すか、という話については大間違いですから」
「む、どういう意味だ……?」
「幽神の名において、かの者に与えられし力をお返し致します。……【権能剥奪】」

 アリスが、ダモスの額に指を当てて呪文を唱える。
 するとダモスの体から、なにか白く光るものが現れ、天へと消えていった。

「なっ……ま、まさか……!」
「幽神に教わった秘術です。本当は異世界に旅立つ前に自分の権能をお返しするために教わったものですが……こうして役立てられるとは思いませんでしたよ」
「き、貴様、本当に幽神霊廟を攻略したのか……!?」
「まだ疑っていたのですか……私は嘘をつきません。あなたと違って」
「くそっ……!」

 ダモスがわなわなと震え、手で顔を覆った。
 そこにアリスが、静かに言葉を掛けた。

「戦場で名誉ある死を遂げて、あなたの信奉者やセリーヌに与しない者への旗頭となりたかったのでしょう。あるいはそれを危惧したセリーヌがあなたたちをしばらく生かし、その間に『権能』を使って脱走でもしようと考えていたのでしょう。そうはさせません」

 アリスの言葉と共に、セリーヌの部下たちが現れた。
 引っ立てなさい、とセリーヌが端的に指示を飛ばす。
 ダモスとディオーネは捕縛され、完全に状況は定まった。
 この場にいる誰もが、セリーヌの方を王であると認識している。

「ダモスよ。そしてディオーネよ。あなたたちの行く末が生か死かはまだわかりません。ですが、まずは裁きを受けなさい。私のときとは違って公明正大で、誰もが納得する裁きを。そして罪を償うのです」
「最後まで嘘は通じなかったか……はは……」

 その後のダモスとディオーネの二人は様々な取り調べを受け、最終的に身分や財産のすべてを剥奪されて国外追放の刑を受けることとなった。

 二人は幽神霊廟とは正反対の方角に旅立ったが、その後の行方を知る者はいない。すぐさま野垂れ死んだという説もあれば、海を小舟で渡って冒険者として身を立てたという説も流れたが、どれも噂話の域を出ることはなかった。

 こうしてエヴァーン聖王国の動乱は終わりを迎えたのだった。



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