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二章「結婚の儀」

閑話「パクレットとパースラン」

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「ちょっと待っててね」姉につれて来られた家の庭で、小さな風車を回してあそぶ。

 ぼくの家ぞくは商人だ。いつもみんないそがしくて、姉や兄がこうたいであそんでくれるけど、こうして、ほうっておかれることもある。

「それなに?」同じくらいの子どもの声にふりむくと、じっと風車を見ている。
 手わたすと、色んなむきから見て、地めんに絵をかいて、風にむけて回そうとしている。

「風がほしい?」きくとうなずくから、言われるままにふかせた。強く弱く、上から下から。
「もっと」というから、いちばんよく回った風を送ると、クルクルと回る風車といっしょにあたまも回す。

 子どもの金ぱつもフワフワと風におどって、オレンジキャンディーみたいな目がキラキラしてる。ふわっとわらった顔がかわいくて、ドキッとした。

 ニコニコしている子どもの手をとって、
「ぼくはパクレット。きみの名まえは?」とたずねた。
「パースラン」目はキョトンとしているけど、口はわらったままで答えてくれた。

「友だちになろうね。いっぱいあそぼう」ドキドキしながら、にっこりわらうと、
「友だち」とくり返して、わらってくれた。ギュッとだきしめる。初めての友だちだ。


「ほら、絶対に気に入ると思ったんです」姉の声が聞こえる。
「どうして? うちの子は言葉も遅いし、一人で遊ぶのが好きだし」パースランのお母さんなんだろうな。ぼくとあそばせたくないのかな。

「すぐに飽きて、他の子の所へ行ってしまうんじゃない?」そういうことが、あったんだろうな。
「大丈夫ですよ。パクレットから友だちになって、と言うなんて初めてなんです」姉が笑う。

「可愛くて、小さくて、柔らかくて」そう。だきしめて、頭やほおをなでると気持ちいい。
「触っても嫌がらずに許してくれるし」ずっとニコニコしてる。

「何よりあの子、オレンジキャンディーが大好きなんです」大きな目がおいしそう。目もとにキスしたら、まっかになった。ほんとにかわいいなぁ。ぜったいに、はなさないよ。

「これ、かして?」風車をにぎりしめて、つき出してくるから
「いいよ、あげる」と答えたら、しんぱいそうな顔になった。

「こわしたら、おこる?」あぁ、どうなってるのか知りたいんだな。
「おこらないよ、あげたものだもの」頭をなでてあげたら、やっとわらって、ほおにそっとキスしてくれた。

 かわいいよ、かわいすぎる。家に帰ったらおもい出して、ベッドでばたばたしちゃいそう。
 姉がクスクスわらってるから、なにを考えてるか、ばれてるみたいだ。

 次のときは『かわいいものずき』の兄といっしょに行った。
「これ、つくったの」ものすごくがんばってつくってくれたのだろう、風車。

 手はバンソウコウだらけで、風車もガタガタで。ものすごく、うれしかった。パースランをだきしめてないた。兄もないていた。


 パースランに見つかったら怒られそうだから、今も実家の机の奥に大切に仕舞ってある。見つめていると、胸が温かくなるから。
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