α嫌いのΩ、運命の番に出会う。

むむむめ

文字の大きさ
上 下
8 / 9

誤解

しおりを挟む
ガラッとドアが開き保険医が入ってくる。

「……君たち?」

保健室にΩとαが二人きり、そしてΩの方は服が乱れている。

その状況で保健医が考えたことは。

グレイヴは顔が青ざめていき、ソファから勢いよく立ち上がった。

「先生、これは違う!決してやましいことなどはしていない!」

そういう割にはグレイヴはとても焦って見える。

「グレイヴ?なんでそんなオドオドしてるんだ!何もやましいことはしてないんだから、堂々としていろ!」

「状況的に分が悪い!」

お前が焦った顔で弁解しているから、なおさら悪くなっていっている。

「グレイヴ!お前は、やましいことはしていないし、やましい気持ちもなかった!そうだろ?」

「……そう、だな」

どうして妙に歯切れが悪いんだ。

「お前がやった事はどちらかというといいことだろ?」

廊下で動けなくなっていた俺を保健室まで連れてきて介抱してくれた。

何もおかしいところはない、人道的な行動じゃないか。

「その言い方は大分やっていたように聞こえる」

「なんでだ!」

そう聞こえる方がおかしいだろ!

「保健室はそういうことをするところじゃないんだけどなあ?」

「違うんだ!」

どうしてそうなるんだ!


 ◇ ◇ ◇


「それなら初めから助けてくれたって言ってよ」

俺はずっとそう言っていた。いや、言ってなかったかもしれない。

けど、保健医が考えているようなことではないと主張していた。

「すみません」

「なんで謝るんだ」

勝手に勘違いしたのは先生の方だろ。

「そうだよ。謝らないでグレイヴくん。君がしたことは誇っていいことなんだから」

そうだ。グレイヴが元から堂々としてれば、変な誤解もされなくて済んだことだ。

「ユリウスくんは体調とか大丈夫?」

「いまのところは大丈夫です」

抑制剤を飲んだから大分落ち着いている。

「良かった。何かあったらここに来ていいからね。同じΩとして相談乗ったりも出来るし」

「はい。ありがとうございます」

先生は番がいるΩだ。

少し前なら番を持つことなど考えられもしなかったが、今は少し興味が湧いている。

「ユリウスくんは寮生?」

「はい」

「じゃあ今日はもう寮に帰って、ゆっくり休みな。先生には連絡しておくから」

「そうします」

少なくとも今日このまま授業を受けるのは難しい。

汗でベトついて少し気持ち悪い。部屋でシャワーを浴びて着替えたい。

「俺、送るよ」

「ああ、うん」

抑制剤を飲んで落ち着いているとはいえ、一人で帰るのは少し不安だ。

「失礼します」

俺たちは保健室を出て、Ω寮へ向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

嘘の日の言葉を信じてはいけない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

処理中です...