α嫌いのΩ、運命の番に出会う。

むむむめ

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誤解

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ガラッとドアが開き保険医が入ってくる。

「……君たち?」

保健室にΩとαが二人きり、そしてΩの方は服が乱れている。

その状況で保健医が考えたことは。

グレイヴは顔が青ざめていき、ソファから勢いよく立ち上がった。

「先生、これは違う!決してやましいことなどはしていない!」

そういう割にはグレイヴはとても焦って見える。

「グレイヴ?なんでそんなオドオドしてるんだ!何もやましいことはしてないんだから、堂々としていろ!」

「状況的に分が悪い!」

お前が焦った顔で弁解しているから、なおさら悪くなっていっている。

「グレイヴ!お前は、やましいことはしていないし、やましい気持ちもなかった!そうだろ?」

「……そう、だな」

どうして妙に歯切れが悪いんだ。

「お前がやった事はどちらかというといいことだろ?」

廊下で動けなくなっていた俺を保健室まで連れてきて介抱してくれた。

何もおかしいところはない、人道的な行動じゃないか。

「その言い方は大分やっていたように聞こえる」

「なんでだ!」

そう聞こえる方がおかしいだろ!

「保健室はそういうことをするところじゃないんだけどなあ?」

「違うんだ!」

どうしてそうなるんだ!


 ◇ ◇ ◇


「それなら初めから助けてくれたって言ってよ」

俺はずっとそう言っていた。いや、言ってなかったかもしれない。

けど、保健医が考えているようなことではないと主張していた。

「すみません」

「なんで謝るんだ」

勝手に勘違いしたのは先生の方だろ。

「そうだよ。謝らないでグレイヴくん。君がしたことは誇っていいことなんだから」

そうだ。グレイヴが元から堂々としてれば、変な誤解もされなくて済んだことだ。

「ユリウスくんは体調とか大丈夫?」

「いまのところは大丈夫です」

抑制剤を飲んだから大分落ち着いている。

「良かった。何かあったらここに来ていいからね。同じΩとして相談乗ったりも出来るし」

「はい。ありがとうございます」

先生は番がいるΩだ。

少し前なら番を持つことなど考えられもしなかったが、今は少し興味が湧いている。

「ユリウスくんは寮生?」

「はい」

「じゃあ今日はもう寮に帰って、ゆっくり休みな。先生には連絡しておくから」

「そうします」

少なくとも今日このまま授業を受けるのは難しい。

汗でベトついて少し気持ち悪い。部屋でシャワーを浴びて着替えたい。

「俺、送るよ」

「ああ、うん」

抑制剤を飲んで落ち着いているとはいえ、一人で帰るのは少し不安だ。

「失礼します」

俺たちは保健室を出て、Ω寮へ向かった。
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