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ヒート
しおりを挟む図書館に借りていた本を返した帰り。
αも通るここの廊下を通るときは、いつも気を張っている。
心なしか、心拍数も上がっている気がする。
いつもよりドクドクとうるさい心臓に、違和感を覚える。
違う、これは。ヒートだ。
こんな時に、来るなんて……!
手足に力が入らなくなり、上手く歩けない。
ようやく曲がり角を曲がったところで、蹲り動けなくなってしまった。
非常にまずい。
見えにくい物陰とはいえ、決してバレないとは言えない。
もしも、この状態をαに見られたりしたら、そのまま襲われて俺の人生は終わりだ。
とりあえずどこかに移動しなければ。
「どうした!」
最悪だ。
「……ッやっぱりヒートか」
よりにもよって一番見つかりたくない奴に見つかってしまった。
声の方に目をやると、やはりグレイヴとかいうあのαだった。
「行くぞ」
ヒート中のΩがαに見つかり、連れて行かれる。
それが指し示すことはただ一つ。
「ぃ、やだ……」
抱き上げられればもう、そこに待っているのは絶望だけだ。
だるい体に力を込めて必死の抵抗をするが、グレイヴはそれを物ともせずに歩いていく。
「少しの辛抱だから、我慢してくれ」
嫌だ、今すぐに逃げ出したい。
「すぐに楽にしてやるからな」
お前とシたって楽になんかならない。
そうこうしていると、保健室につく。
あそこから一番近いベッドのある場所か。
一番奥のベッドに寝かされる。
グレイヴが、離れたと思うとすぐにコップに入った水を持って帰ってきた。
「薬は持ってるか?」
避妊薬でも飲ませる気なのか?妙なところで冷静なのが本当に腹が立つ。
「ない……」
「は?常備してないのか?」
何を言っているんだ。常備なんかする訳ないだろ。
「……すまない」
何か考え込んだあと、徐にこちらに手を向けた。
「……っや」
その手は俺の胸を撫ぜた。
腕を掴んで抵抗するが、気にも留めていないようだった。
ひとしきり弄ぶと満足したのか、今度は腰の辺りを撫で始める。
「は、ぁ……」
腰から股の辺りまで、決して中心を触らない。その焦らすような手つきに熱が高まっていくばかりだった。
「……仕方ない」
「んん……ぅあ」
グレイヴがベルトに手をかけた。嫌な予感がした。
その予感の通り、遂にズボンを脱がされた。
「ひぃうっ」
喉の奥から掠れた空気の音がした。
ぽろりと涙が出てこめかみを流れていく。
αに何の抵抗も出来ずに犯されそうになっているのに、それでも感じてしまうこの体に嫌気が指す。
「辛いだろう。これを飲めば治るはずだから、大丈夫だ」
いつの間にかグレイヴの手には錠剤があった。
そんなもの絶対に飲んでたまるかと、口を結ぶ。
「お願いだから、飲んでくれ」
口を無理矢理開かせようとしてきたので、顔を横に逸らす。
鼻をつままれ、息が出来ずに口を開けたところに錠剤が放りこまれる。
そのまま水も流し込まれ、口を押さえられる。
息も出来ず、吐き出すことも出来ない。
ほとんど反射的に薬を飲み込んでしまった。
あぁ、もう、最悪だ。
「ちゃんと飲めたか?」
また口をこじ開け、舌の下まで確認してくる。
口内を滑る指先に少し感じてしまっているのが憎い。
指を引き抜かれ、少し寂しいとも思ってしまった。
ふざけるな。
「……っ俺は外に出てるから、楽になったら君も出てきてくれ」
あいつはそのまま出て行った。
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