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異世界プロレス篇
【一番好かれている者】
しおりを挟む「やっぱし『吟遊詩人・ミッディ』じゃないっスか?」
「うむ。彼女以外に適任はおらんじゃろう」
二人が頷いているので、恭平は質問をした。
「その『吟遊詩人・ミッディ』とやらはそんなに好かれているのか?」
「どんなに人間を憎んでる魔族でさえ、殺せない・・・・・・」
「ほう」
「彼女は戦争孤児じゃった・・・・・・しかし、修道院で育てられ、その中で歌の才能に目覚めた」
「じゃあ歌手か?」
「歌手・・・・・・なんて言葉で形容できるかどうか・・・・・・」
学が微笑みながら首を振った。
「彼女は全てを持ってます。美貌・歌唱力・演出力に自己プロデュース力・・・・・・アレには脱帽っスよ」
「ほほう」
「僕自身、辛い過去に苛まれていたとき、彼女の歌声を聞いて『生きよう』と思えました」
「余も、退役軍人のためにミッディへ『一曲でも良いから歌ってくれ』と頼んだこともある・・・・・・彼女はその願いに、一曲どころか夜がふけるまで歌い続けてくれた・・・・・・優しい天使のような子じゃよ」
「それはそれは・・・・・・イイねぇ」
バン!
恭平が机を叩く。
「ミッディにコンタクトを取ってくれ。報酬はいくらでも出すと・・・・・・」
「いや、彼女は金目当てに動くようなタイプじゃ・・・・・・」
「だったら歯の浮くような『この国のために!』と懇願してくれ」
「うむ・・・・・・」
「今回の目玉は・・・・・・ミッディとやらのコンサートだ」
その言葉に、二人はギョッとする。
「ど、どういうことじゃ? プロレスをするのでは・・・・・・?」
「プロレスそのものの概念がねぇこの国で、いっくら宣伝しても客は来ねぇよ」
だが・・・・・・
「ミッディのワンマンライブ・・・・・・しかも歴史あるコロシアムで、全席無料ッッ!!」
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