異世界プロレス！！～君はウソをつけるか？～

”VSジル公爵篇”

【学の悲哀】

　先頭の青年は、フードを目深に被っており、顔を隠している。



「･･････」



　何も喋らず、何もせず･･････ただジィッと磔のジル公爵を見つめていた。



「学か」


「･･････」



　恭平の呼びかけにも、応じない。



　ひたすらに見続ける。



　自分を苛めた男。



　陵辱した男。



　消えない傷をつけた男。



　そいつを、見ていた。



　色のない瞳で、氷のように冷たい炎が宿った心で･･････



「ママ･･････どこに居るのぉ･･････ママぁ･･････」


「･･････」



　彼は懐に右手を差し込んでいた。



「やめておきな」



　恭平がその腕を握る。



　力は入れていない。



　添える程度だ。



「お前はあっちに墜ちちゃいけねぇ･･････」


「･･････」


「お前のご要望通りに、死ぬよりも辛いようにした･･････これ以上、痛めつけようがねぇよ」


「･･････そうっスね」



　懐の奥で、カチンと金属音が微かに聞こえた。



「ありがとうございます。僕やコイツらの復讐を･･････」


「何度も言わすンじゃねえ。関係ない」



　恭平は葉巻を吹かすと、地面ににじり潰した。



「それもこれも、パフォーマンスさ。プロレスだ」


「そうですか･･････」


「でも」



　恭平が笑顔で大きな手を学の頭に乗っけた。



「お前さんの苦しみが少しでも軽くなったら･･････俺もプロレスのしがいがあったってモンだな」


「･･････あざっす」



　小さく呟いた学は目が潤んでいた。



　･･････さぁて･･････



　このまま湿気っちゃいけねえ･･････



　大事なチャンス･･････無駄にはできない！！



「国民よ！！　聞いてくれ！！」