異世界プロレス！！～君はウソをつけるか？～

”主人公になりたい”

【無情な手】

　バチンッッ！！



　仁王立ちで待ち構えていた社長に、ビンタをされた。



『オーガ・秀木』は巨体の持ち主だ。



　年齢も恭平より五つ下で、高級スーツに身を包まれている。香水の香りを漂わせ、巨大な肉体に合わせたオーダーメイドの衣服。浅黒い肌は日焼けサロンで作っている。



　擦り切れたジャージ姿の恭平とは、月とスッポン。



「てめえ･･････どこに行ってた？」


「･･････別にどこへも･･････」



　ガツン！！



　ダイヤモンドのはまった指輪で殴られた。



　口の中に鉄の味が広がる。



「もう一度訊く。どこへ行ってやがった？　アァ？」


「･･････病院っス」



　パァン！！



　間髪入れずにもう一発。



「よこせ」


「ウス･･････」



　大人しく、薬の入ったプラスチックの袋を渡す。



　中身を検分し始める『オーガ・秀木』



「ふむ･･････安定剤に眠剤、ハハッ漢方までもらってきやがった」



　それをそのまま･･････



　ボスン。



　道場のゴミ箱に捨てる。



「恭平よぉ･･････腑抜けてンなぁ？」


「･･････すんません」


「ウサギ跳び1000回だ。分かったな？」


「ウス･･････」



　スポーツ界に蔓延る根性論を、秀木社長は信仰している。



　うつ病に1000回のウサギ跳びが有効か否かなど、どうでもいいのだ。



　華があるスター選手には愛情を。



　持たざる者には鞭を。



　それが『オーガ・秀木』そして『ネオ・プロレス』なのである。



　夜ーーーー



　足首と膝が悲鳴を上げている。



　階段を上がるのすら、ゆっくりだ。



　ようやく布団に横になれる。



　･･････眠れるわけが無い。



　いよいよだ。



　来るとこまで来てしまったワケだ。