DANCING・JAEGER

第1章

【世論】

　あらゆる思惑が渦巻くこの世から、隔絶された刑務所へ、彼は入ることとなった。



　裁判はまるでベルトコンベアの流れ作業のようだった。



　あっという間に龍敏は『傷害致死』によって懲役八年を言い渡された。



　若頭鬼道は『建造物損壊』で懲役二年・執行猶予四年。



　銃刀法違反によって逮捕されていた千石組系列の組長たちは、何事もなかったかのように保釈。



　ダイナマイト満載のトラックで襲撃し、暴力団幹部が拳銃を使って人ひとりを殺害した･･････それは当日流れた生中継で日本中が見ていた。



　あまりにも生ぬるい刑罰によって世間の轟々たる非難を警察・検察・裁判官は浴びせられたが、彼らは一切の無視を決め込んだ。



　これもエルフの圧力によるものだった。



　さらに驚くべきことは、生き残った川田組構成員の動き。



　病院からようやく退院できた川田組若頭は、松葉杖をつきながらその日すぐに組の解散届を警察に持って行き、声明を発表。



　川田組はあっさりと解散になった。



　本来のヤクザの抗争を考えれば、組長の仇討ちとして千石組々長重里を狙わなければいけない。



　それが『筋』というもんだ。



　だが、沈んだ夕日のごとく川田組は消え、一ヶ月もしたら噂のひとつすら流れなくなった。



　こうして『千石組・川田組抗争事件』は、千石組の完全なる勝利で終演となった。



　ヒミツという名の･･････漆黒のベールに包まれながら。