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第1章
【龍敏逮捕】
しおりを挟む数分後・・・・・・赤いライトで辺りを煌々と照らしながら、十数台のパトカー・消防車・救急車が猛スピードでやってきた。
警察は周囲の風俗店から「強面の男たちが退去を求めてきた」という情報をいち早くキャッチしていたが、暴力団事務所が爆破されたという通報を受けて集めていた車らを走らせてきたのだった。
彼らの頭に浮かんでいたのはおびただしい死体の山?
それとも警官にも容赦なく発砲してくる理屈の通用しないヤクザか?
どれもハズレ。
そこにいたのはたった二匹のヤクザ者。
喪服姿の男が、険しい顔をしている警官たちにむけて、笑顔を浮かべる。
「サツの旦那方ぁ! お騒がせしましてえろうすんまへんでしたぁ!」
「な、なんだ!?」
「ワシは喧風一家総長の千石龍敏。ここにいる若頭・鬼道 猛と一緒に今晩の一件を起こしましたんや」
「はい!! 自分はダイナマイトとトラックを準備しました!!」
「んでもって・・・・・・あそこに転がっとる骸・・・・・・」
死んだブタ・・・・・・とも形容できる哀れな川田に向かってアゴをしゃくる龍敏。
「アレ、やったんはワシです。どうぞこの罪人にワッパかけて下さいな!」
怪訝な顔をしながら、両腕を差し出している龍敏に警官は恐る恐る手錠をかける。
そんな現場に一台のワンボックスが。
「緊急生中継です!! こちら、桜木町の暴力団『川田組』事務所前です!」
警官が「うわぁ」と声にしないうめきを上げる。
多分、警察無線を傍受していたのだろう。
警察が風俗店から情報を得たのと同時に、彼女らも準備していたらしい。
「ご覧ください! 爆発物でしょうか? 瓦礫と化した建物が、惨状を物語っています!!」
空からヘリのプロペラ音が降り、リポートしている女性キャスターはメイクバッチリ。
撮影クルーが現場に侵入せんとする勢いで迫ってくるので、警察官がなんとか押し止める。
それに抗うカメラマンたち。現場は混沌とした。
そもそも、救命士たちがどうにかこうにか血まみれになっている川田組構成員を救っている邪魔をしているので、騒がしくなるのもしょうがない。
そんな『カオス』を愛する男がこの場にひとり。
「おお、ベッピンさん!! ワシ、テレビに映ってるぅ?」
龍敏は手錠で自由にならない手で、イエーイと『ダブルピース』をするのだった。笑いながら、カメラに目線を合わせる。
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