DANCING・JAEGER

第1章

【兄弟盃】

　おーい！　と龍敏が呼ぶと喧風一家の組員たちがぞろぞろと真っ白な布と、神前に添える品々、さらに小さな盃をふたつ、大急ぎで持ってきた。


　それらをジャリの上に敷き、用意をして、即席の兄弟盃の場ができあがった。


「こ、こんなに慌ててやるものなのか？」

「いや、ちいとばかし事情があってな･･････とりま、座って座って」


　見届け人は喧風一家とバラスの構成員全員。


　本来は見届け人は、地位の高い者がするべきなのだが、即席なのでしょうがない。


　ケンが、鉄骨から降りてきたモルにビビりながらも、口上を述べる。


「･･････腹が決まりましたらその盃一気に飲み干し懐中深くにお収め下さい！」


　龍敏とクイン、ふたりは同時に盃の中の酒を飲み干した。


「これにて、お二人は晴れて兄弟と相成りました！」


　拍手が送られるが、龍敏はクインにとんがり耳を疑うことを言うのだった。


「ほんじゃあ･･････これから川田組に行くか」

「へ？」

「もう準備は万端や」

「待ってくれ･･････子供たちが･･････」

「ああ？　もう助け出したで？　関内かんないの狭い倉庫に押し込められて可哀想やったわぁ」


　……


「･･････そんな重要なこと言わないで･･････騙したなぁ！！」


　クインが殴りかかりそうになったので、龍敏が「まぁまぁ」と止める。


「『兄弟』硬いことは言わんと」

「はぁ･･････で、これからは？」

「言ったやろ。川田組にこれまで味あわされた苦渋を･･････返すんや！！」


　用意した車で数十分。