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第1章
【情報屋タッチー】
しおりを挟む「僕これ買う~」
「じゃあ俺は子供ビール!」
「あたしたちはオマケ付きのグミ~」
「せやったら、ワシは川田を潰す情報」
昭和の香りを残す駄菓子屋。
放課後の子供たちが少ないお小遣いで何を買おうか吟味し、わいわい楽しくしているところへ素肌革ジャン男が割り込んできたのだ。
空気がピキッと凍りつく。
「おやおやこれはこれは」
店のレジから離れて近づいてきたのは、今時の兄ちゃんという感じの男。
ダボッとした服にジーパン。そして青地のエプロンには『駄菓子屋(ヤ)ネン』と書かれている。
背はひょろっと高く、首からはシャカシャカ爆音の音楽が聞こえるヘッドホンが下げられていた。髪は金髪でバンドマンのように伸ばしている。外見は三十代前半。
「ちょっと~アンタがいるだけでさ、営業妨害なんですケド」
飄々とした口調。
それは龍敏も知っていることだった。
「すまん。ボウズ・嬢ちゃん・・・・・・好きな物箱ごと全部買うたるさかい。堪忍してや」
「本当!?」
「やったー!」
「オジさん見かけによらず良い人だね!」
龍敏は万札をレジに置き、喜んでいる子供たちを見送った。
「まいど~」
「タチはんアンタのことや。用件は分かっとるやろ?」
「え~? 川田さんのこと? それともバラスのこと? それとも・・・・・・クインさんのこと?」
「全部や。全部教えてくれんか?」
この男は『タッチー』と呼ばれている。
本名は誰も知らないが、彼自身は全てを知っている。
表の顔は善良な一般駄菓子屋店長。
しかし、裏の顔は、関東を網羅する情報屋。
情報源は定かではないが、それを知ろうとしてタッチーの足元に探りを入れて行方知れずとなった者も少なくない。
「タチはん・・・・・・ワシはクインとドンパチしたくはないんや」
「デショーネー。古い仲ですものネ」
「しっかし、ワシの頭が悪いんかどうか・・・・・・なんでクインのような切れ者が、川田みたいなクズに従うてるんか・・・・・・そこが分からんのです・・・・・・そこさえ分かりゃぁ、こっちとしてもやりやすいンやけどな」
「クインさんたちの羽振りが良くなったじゃなイ」
「・・・・・・違う。そんなモンで義理人情を違えるタマじゃない・・・・・・タチはん、からかわんといて」
「ムフフ~僕の情報は安くないヨ」
龍敏はタッチーの言葉が終わる前に、トランクを舎弟から奪い、古びたレジ台の上に音を立てて置いた。
「二千万」
「まいど~!」
「で・・・・・・なんでクインたちは川田のガキに?」
「じゃあ今から言うからメモってネ~」
「ケンッッ! メモの準備や!!」
「はいっっ!!」
駄菓子屋のシャッターが、商売時の放課後にもかかわらず、静かに閉じたのであった。
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