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第1章
【クイン・キャベンディッシュ】
しおりを挟む「・・・・・・龍敏」
叫びすぎてしゃがれている龍敏の声とは対照的に、鈴が鳴るような透き通った、風鈴のごとき声。
眉目秀麗とはこのことを言うのだろう。
髪はショートカットで銀髪。目は猫のようにキツく、鼻は高く、頬やその他のパーツなどは彫刻のように見事なバランスだ。
ただ・・・・・・もうひとつ、龍敏・・・・・・いや彼らとは違う点がある。
それは耳だ。
流線型に尖っている。
彼らは、俗に言う『エルフ』だ。
厳密には少々事情があったりするのだが、まずは、この緊迫した状況を見ていこう。
「今度は何をやっているんだ?」
「『カッコいい殺し方選手権』や! どや? お前も混ざりたくならんか?」
「ハァ・・・・・・下らない」
血生臭い現場には相応しくないこの美青年は、複数人の仲間を連れてきていた。
いずれもドス黒い目をしていて濁っている。
他の共通点を挙げるとすれば・・・・・・やはりどいつもこいつも美しい点だろう。銀髪で透明とも形容できる肌。
ソース顔の日焼けをしている龍敏が虫に見えてくるほど、綺麗なのだ。
一方で拘束されている男らは、そのクインと呼ばれたエルフたちに身体をねじ曲げてでもすがりつこうとしていた。
「龍敏、お前は今、殺している・・・・・・あるいは殺そうとしているこの男たちが何者かを知っているのか?」
「ワシのシマでヤクを売ってたってことしか知らん」
「俺の顧客だ。解放してくれないか?」
「ほうかほうか・・・・・・ええで」
パァァァンッッ!!
パァァァンッッ!!
ドサドサ・・・・・・
「ほれ。解放してやったで」
「貴様・・・・・・」
「のう・・・・・・クインよぉ」
龍敏は仲間に持たせていた中折れ帽を被り、そのツバがクインに接着するほど近づいた。
グイッと。
「ワレもええ加減にせえよ・・・・・・これで何度目や」
アァ? と首を曲げながらクインの完璧な顔面を下から上へ、まるで甲羅から出てきた亀のようにニュッと睨みつける。
「言ったはずやで。ヤクは売るなと・・・・・・それも、エルフ印のヤクはタチが悪ぅてしゃーない。一回使えば人間じゃなくなる品や。これ以上、ワシを怒らせたらで? 何が起こるか分かっとるんか? オォ!?」
「フンッ・・・・・・自分の縄張りもまともにコントロールできない、パッとしないヤクザが偉そうに言うじゃないか」
クインも負けじと上から龍敏を見下ろす。背丈が五センチほど違うのであった。
龍敏の後ろで話を聞いていた舎弟のひとりが、言ってはならないことを口走った。
「うるせえなこの『シラミ』がよぉ!!」
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