死が二人を分かつまで

異種格闘技トーナメント篇

【ウォーミングアップ】

　芥川はその日、夜遅くまでカタカタとパソコンをいじっていた。



　動画配信サイトで、ひたすらにライブ配信を漁っていたのである。



「う～む･･････プロの試合に乱入･･････も面白いですが、大会に出る前に警察行きですしねぇ」



　カタカタ･･････



『ケンカ　ライブ　街角』



『挑戦者求む　ライブ配信』



　物騒なキーワードで検索をしていく。



「おっ！」



『ケンカ上等！　勝ったら一〇〇万差し上げます！　三〇人チャレンジ！』



　どうやらインフルエンサーとしては新参者の人間がやっているライブ配信らしい。



　しかし、登録者を伸ばそうとしているのだろう。



　決闘は法律で禁止されているが、構わずに路上でのタイマン勝負を求めている。



「ほうほう･･････すでに二六人･･････渋谷区･･････急がねば」



　芥川はタンスから黒の手ぬぐいを取り出し、セツナを起こさぬようにそっと出て行った。



　･･････



　･･････



　･･････



「ッシャァ！」


「ぶべ･･････」



　ストリートファイト･･････にしては仕上がっている身体。



　引き締まった肉体を上半身露わにして、路上で仁王立ちしている男がひとり。



　ドレッドヘアーにゴテゴテのイアリング･･････首筋にはタトゥー。



　その奇抜な出で立ちに、周囲のアスファルトの上には群衆が詰めかけている。



「マジ強ぇぇ！！」


「ったりめぇよ！！」



　男が太い腕を高らかに掲げる。



「俺は半年前までバリバリの格闘家だったんだぜ？　素人のケンカ自慢なんざ屁でもねえよ！！」



　一〇〇万と人目に引き寄せられた腕っ節自慢たちは転がっている。



　全く歯が立たないのだ。