死が二人を分かつまで

KAI

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異種格闘技トーナメント篇

【生殺し】

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「しゃーねーな・・・・・・ほらよ」



 ゴウが大きな腕を拡げ、そこにセツナが包まれる。



 男性の安心感を与えてくれる包容力・・・・・・



 これなら、男が苦手なセツナでも恐くない。



 ポイントは、一番最初のようにゴウまでも腕を巻き付けないこと。



 彼にとっては生殺しもいいところだろうが、磔にされているかのように腕を拡げたまま、文字通り胸を貸すのだ。



 あの後・・・・・・何度も会っているうちに自然とできたこの習慣。



 しかし、ゴウが逞しい腕をセツナに押しつけると・・・・・・彼女は恐がる。



 まだまだ、立ち直れていない。



 そこで編み出されたのが、この大木にとまるセミのような状態。



 そりゃぁゴウだって腕を絡めて抱きしめたい・・・・・・と思う。



 それでも、彼女に不安を与えるくらいならば、生殺しを選ぶ。



「・・・・・・なあ」


「?」


「一度だけでいいし・・・・・・嫌ならすぐ言って欲しい」


「・・・・・・?」


「その・・・・・・頭撫でていいかな?」



 セツナは少しばかり逡巡したのちに、



 頷いた。



 ゴウはセツナの、シルクのような髪の毛に触れた。



 細かい毛が、一本一本、指で感触を味わい、撫でくりまわす。



 ・・・・・・これじゃあ甘い時間じゃなくて、ただ犬を撫でているかのような気が・・・・・・



 でも・・・・・・一歩前進だっ!



 パッと、二人は離れた。



「・・・・・・もういいのか?」


『・・・・・・あなたの鼓動・・・・・・私の頭に触れただけで早くなってた』


「し、心臓の音なんて聞くな!」


『うふふ・・・・・・ゴメン』


「ったく・・・・・・じゃあ、近くまで送っていく」


『ここでいいわ。あなたも、芸能人でしょ?』


「・・・・・・お気遣いどうも」



 歩き出したゴウが、数歩先から、振り返った。



「来週・・・・・・俺たち『ネコ・らぼ』のファンイベントがあるんだ・・・・・・よかったら来いよ」


『素直に来てくれないって言えないの?』


「む、無理に来いとは言ってない・・・・・・じゃあな!」



 ゴウは顔を緩ませながら、公園を出て行く。


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