死が二人を分かつまで

異種格闘技トーナメント篇

【真剣勝負】

「なに･･････噂で聞いたンじゃが、にーちゃんあの芥川に勝ったらしいやン？」


「･･････引き分け･･････百歩譲られても、辛勝ってところだ」


「ヒヒヒ･･････いいんやで？　謙虚にならンでも･･････誇ったらええ」


「･･････で、芥川さんとの立ち合いと何の関係が？」


「いやぁ～ワシはの･･････ゴッツい男が好きやねん･･････強いヤツがのぅ」


「･･････」


「芥川ちゃんなんかは一番のお気に入り･･････ワシの獲物やったンやが･･････それをにーちゃんが横取りしてもうた」


「横取りなんて･･････」


「･･････ワシが横取りされた言うたら･･････それが事実なんじゃぁぁぁ！！」



　ビリビリッッ



　タバコを真ん中でへし折り、唐突にぶち切れる丹波。



「･･････」


「･･････ヒヒヒ･･････すまんすまん。カルシウムが足らンのかのぉ～最近怒りっぽくなってもうてかなわンわぁ～」


「･･････答えてないぞ･･････本官に何の用だ？」



　丹波は吸い殻を捨てると、地面に置かれているブツを持った。



　それは紫色の布で覆われていたが･･････佐々木には中身がすぐに分かった。



　即座に腰の特殊警棒を取り出し･･････



　ポイッ！



　パシィ！



「え･･････？」


「使えや･･････無銘刀やが、青竹真っ二つにできる程度には良く斬れる業物や」



　言われるがまま、布をとり日本刀を握る。



　スウゥ･･････



　シン･･････



　鋒が夜空を斬り裂き、天まで貫くようにそそり立つ。



　立派な刀だった。



「･･････コレをどうしろと？」


「別に･･････ワシと勝負して欲しいだけや」



　丹波も愛用のドスを引き抜き、手で弄ぶ。



「真剣勝負をすると･･････正気か？」


「ヤクザに正気もキチガイもあらへんやろ･･････やるのかやらへんのか･･････」



　丹波の狂犬のような瞳が、一層光り輝いた。



「･･････選べぇぇぇ！！」



　眠っていたカラスたちが･･････



　蠢いていた虫たちが･･････



　ゴミを漁っていたネズミたちが･･････



　この二坪の空間から一斉に消えた。



　動物的本能が察知したのだ。



　喰われるッッ！！



　その一心で、逃げていったのだ。



　並々ならぬ･･････オーラ。



「･･････警官が真剣を人間に振るえるとお思いで？」


「見ろや･･････このドス･･････銃刀法違反やんなぁ？」



　それに･･････



「正当防衛なら安心して･･････殺し合えるやろぉ♡」


「･･････この変態が！！」



　チャキ･･････



　示現流の八相の構え･･････



　一の太刀で全てを無にする、最強の太刀筋･･････



「キヒヒ･･････楽しみやでぇ･･････ガッカリさせんなやぁぁぁ！！」