死が二人を分かつまで

KAI

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”アイドル篇”

【師匠と弟子】

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 戦いを終え、服装を整えたカン・レン・ゴウが芥川の前で正座をしている。



 満足げな芥川は、三人の姿を目に焼き付けるように見つめ返していた。



 ケンカ三銃士は、すっかり意気消沈して壁により掛かっていた。



「お三方・・・・・・厳しい鍛錬、ご苦労様でした」



 深々とお辞儀をする。



 ここで三人の心にはクエスチョンマークが浮かんだ。



 感謝するのはこちらの方。



 なぜ、芥川が感謝するのか?



「・・・・・・弟子は師匠の鏡」



 彼らの心を読んだかのように、芥川が頭を上げて語る。



「弟子を見れば、その師の質が一瞬で判る・・・・・・何処に出しても恥ずかしくない・・・・・・なんて、日本人らしい言葉が存在しますが・・・・・・お三方は恥ずかしくないどころか、誇りです」



 ニンマリと笑った。



「よく頑張りました。おめでとうございます」


「・・・・・・先生のおかげです」



 カンが口を開いた。



「ボクらに・・・・・・戦いの素質なんてなかったボクらに短期間で叩き込んでくれた・・・・・・芥川先生のおかげ」


「師匠が何かを教えるのは当たり前のこと。それを飲み込むか、吐いて捨てるかは弟子次第です」



 仮に・・・・・・



「もしもお三方が今日・・・・・・負けるようなことがあったならば、撮影機材と監督を破壊してでも映画撮影を妨害するつもりでした・・・・・・弟子の恥を晒すようでは、師匠ではない」


「・・・・・・そこまで・・・・・・」


「アイドルだから・・・・・・じゃない。人間、生きる時間は決まってます。そんな大切で取り返しのつかない貴重な時間を、この道場に使ってくれた・・・・・・信頼して私に預けてくれた・・・・・・有り難いことだ」



 今後・・・・・・



「これから先、もしも困ったことがあれば私にご相談ください。全力で力をお貸しします」


「・・・・・・自分たちも、何か先生のために・・・・・・番組とかに出てくれませんか!? そうすれば、もっと多くの人に芥川道場の良さが・・・・・・」


「それはいらぬ世話です。貴方がたがどうしても恩返しをしたい・・・・・・と申すのなら」



 芥川は目を光らせた。



「幸多く、生きなさい」


「・・・・・・」


「容易いようで、難しい・・・・・・これから先、辛いこともあるでしょう。ですが、心に常に芯を持ち、生きなさい」



 それと・・・・・・



「欲に忠実に。我慢は良くありません」



 さらに・・・・・・



「よく食べて・・・・・・よく眠って・・・・・・よく学び・・・・・・」



 ポタリ・・・・・・ポタリ・・・・・・



「風邪などをひかないように・・・・・・笑顔を絶やさぬように・・・・・・」



 ひとつしかない瞳から、涙が滝のように流れている。



「まぁ・・・・・・楽しく・・・・・・それくらいですかね」



 グッと袖で拭う。



 ふと見やるとーーーー



「あらら・・・・・・貴方たちまで・・・・・・」



 三人は泣いていた。



 膝の上に置いた拳を強く握り、肩を鳴らして泣いていた。



「貴方たちのご活躍をお祈りいたします・・・・・・頑張れとは、言いません。ほどほどに、夢を魅せてください」


「・・・・・・先生」


「はい?」


「・・・・・・最後に・・・・・・写真を一枚だけ・・・・・・」


「・・・・・・いいですとも」



 新樹とセツナも入り・・・・・・なぜか北斗がカンのスマホを持って撮影していた。



「じゃあ・・・・・・撮りまーす」


「お願いします」


「せーのっ・・・・・・ピース」



 カシャッ



「ありがとうございます」



 その時だ。



「おっとっと!」



 三人が、芥川・新樹・セツナを包み込むように抱きついてきたのだ。



「「「ありがとうございました!!」」」


「子供みたいですねぇ・・・・・・まったく・・・・・・師匠泣かせは二人で充分です・・・・・・」



 そう言って、芥川もまた泣いた。



 新樹も、セツナも目を擦った。



 さんざん全員で目を赤くした頃には、夕暮れだった。


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