死が二人を分かつまで

”アイドル篇”

【カンVSイブキ】

　アイドルとのケンカ？



　楽勝に決まってンじゃん！



　自分の彼女を口説き落とすくらい、楽勝楽勝！



　･･････そんな予想は砕かれた。



　対峙すると小さな身体に宿る決意が伝わってくる。



（･･････はいはい･･････そういうパターンね）



　イブキは粗暴な見た目とは裏腹に、バカじゃなかった。



　冷静に相手を分析して、合理的に攻めたてるタイプのファイター。



　ゆえに分かる。



　あの知らぬ者無しの仁侠会･･････そのてっぺん張ってる丹波会長から話しをもらって本気で喜んだ。



　ヤクザ冬の時代ーーーー



　それでもなお、闇はなくならない。



　表があれば、裏がある。



　それは、おそらくこれから百年経っても変わらない現実だ。



　そして、過去も現在も未来も･･････裏社会の頂点捕食者は誰か？



　極道だ･･････



　ゆえに、目指すのはむしろ自然なことだった。



　その辺のカラーギャング・暴走族・チーマー・半グレくらいなら、簡単に入れたであろう。



　しかし、極道にこだわり続けた。



　そうだ･･････



　今、俺は就活中なのだ。



　第一志望は『仁侠会』



　冬の時代において、隆盛を誇っている日本でも有数の組織。



　憧れ、そしてスカウトの声がかかった。



　努力が実った･･････



　そんな、善良な市民のような感覚･･････持ってたら、仁侠会なんざ入ることできねえ･･････



　これは間違いなく罠だ･･････ッッ！！



　今更気がついた･･････



　目の前の、イケメンアイドルが何をするのか、それは知らねぇ･･････



　だが、その礎にされることくらい･･････分かる。



　ハナから･･････噛ませ犬ってワケか･･････



「･･････」



　イブキは両手を拡げ、大きなヒグマのような構えをした。



　･･････だからどうした！？



　噛ませ犬が必ずしも負けるとは限らねぇ！！



　噛み千切ってやる･･････



　今までもそうだった･･････渋谷でシャブを売ってた外国人グループとのタイマン。



　仁侠会に潰されはしたが、最大級の暴走族『暴走列島』との抗争。



　プロ格闘家との素手ゴロ。



　何度だって負けるヤツだと思われてきた･･････それを覆してきた！！



　やってやる･･････



　今日、この日に夢を希望をぶっ壊して･･････ヤクザでイイ思いしてやるンだ！！



「･･････ラァァァ！！」



　噛ませ犬の意地を･･････挟持を乗せて、トラックのようなタックルをくり出した。