死が二人を分かつまで

KAI

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”アイドル篇”

【空手とは】

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 高級レストランーーーー



 聞こえは良いが、権力者たちが富の象徴として通うような場所ゆえに、特別美味かと言われればそうではない。



 ただ、この店に立ち入ることが許されている・・・・・・このステータスが欲しいのだ。



 レストランのVIP席ーーーー



 大きなテーブルには御馳走の大海が拡がり、名前が覚えられないような高級な酒も夢一夜・・・・・・ぞろりと揃えられている。



 通常、大衆居酒屋などとはもちろん違い、酒瓶がテーブルの上にあることなどないのだが・・・・・・今夜が特別なのだ。



 大手製薬会社に国内最大の広告代理店、テレビに出ている資産家に、権力者・・・・・・あらゆる富を手にした者たちが集まっていた。



 そして、一点を見つめている。



「・・・・・・」



 そこに立っているのはひとりの男。



 高いスーツで隠れているが、鍛え抜かれたその男は『闘神』と呼ばれている。



 そんな男が、日本人男性の平均年収よりも高額なブランデーの瓶を前に、構えている。



 著名人・権力者・富人たちはワクワクと胸を躍らせていた。



「・・・・・・シィィ!」



 シュカッ!!



 男の右手が刀となり、そのまま瓶に直撃させる。



 ストン・・・・・・



 コロリ・・・・・・



 瓶の上部が芸術的なほど綺麗に切断され、栓抜きは不要となった。



 その瞬間に、拍手喝采!!



 男は丁寧に腕でクロスを描き「押忍」と彼ら彼女らが求めている自分を演出していた。



 タイミングを見計らったボーイたちが切れた瓶を持ち、各々のグラスに注いでいく。



「流石は武山会長! いやはや人間業とは思えない!!」


「素晴らしい手刀ざますぅ~! 次はロマネコンティを開けてもらいましょうか?」


「皆さん、そんなにねだったら武山会長が食事する時間がなくなるじゃないですか」



 やんややんやと盛り上がるバカ共を諫めるのは、権力者のひとり。



 東山財務大臣である。



「大臣。心配は御無用。この武山早食い大食いも得意中の得意!」


「お見それいたしました! ささ! 武山さんも飲んで飲んで!!」


「社長さん。では、いただきます」



 この、なんとも言えない・・・・・・集まり。



 ここにおいて、東山財務大臣は完全な権力者として居座ることができるが・・・・・・武山の状況は微妙だ。



 まず、そもそもが財界人ではない。



 権力者でもない。



 選挙には協力しないし、パーティーにも積極的ではない。



 しかし、世界最大の空手道団体の維持のためには、こうした場に出て行き『道化』を演じる必要も出てくるのだ。



 他にやったことは?



 わざわざ厨房から巨大な板氷を持ってきてもらい粉々に。



 誰かが余計なお世話で持ってこさせたコンクリブロックを砕いた。



 野球選手が来た日には、圧縮バットを指で割って見せた。



 ・・・・・・この一連の行動のどこに、空手が・・・・・・ひいては『武』があるだろうか?



 物を壊して、喜ばせる。



 鍛錬さえすれば、素人にだってできる芸当だ。



 それでも、武山は笑みを絶やさない。



 気丈に振る舞い、皆様が想像している空手家を演じているのだ。


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