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”アイドル篇”
【正拳中段突き】
しおりを挟む紳士が腰を割った。
深く深く重心を下ろす。
と、同時に右手を弓のごとく引いた。
左手はバーテンダーの胸の前に、狙いを定めるポインターのようにせり出されている。
「ひっ・・・・・・」
「・・・・・・コォォォォォッッ・・・・・・」
独特の呼吸法。
もう、誰がどう見ても次の動作が分かる。
正拳突きーーーー
「コォォォォォ・・・・・・コッッ!!」
全身の筋肉が余すことなく稼働準備に入り、エンジン内部ではガソリンが爆発して駆動している。
力みの頂点・・・・・・絶頂!!
「セイヤァッッ!!」
ドゴッッ!!
・・・・・・めり込んだ。
形容ではない。
本当に拳がめり込んでいる。
シャツと胸筋にクレーターを作り、その奥にある心臓を守護している胸骨さえも・・・・・・貫いた。
「ガハッ・・・・・・」
バーテンダーは吐血し、そのまま倒れ・・・・・・ることもできない。
両手をだらんと垂らし、舌も垂らして気を失っている。
「一発か・・・・・・やはりつまらん」
グポ・・・・・・
紳士が拳を引くと、バーテンダーもうつ伏せで倒れた。
「・・・・・・」
紳士はバーテンダーの身体を仰向けにして、脈を確認した。
どうやら、あの一撃で心臓が停止しているらしい。
「・・・・・・フンッ!」
心臓の上に手のひらを置くと、強く下へ押し込んだ。
ドクン・・・・・・
ドクン・・・・・・ドクン・・・・・・
「クハッ・・・・・・は~は~・・・・・・」
「やれやれ・・・・・・手のかかる暗殺者君だな」
紳士は気絶したままのバーテンダーの身体をまさぐる。
・・・・・・やはり出てきた。
黒い鞘に納められた小刀。
「悪いが、コレでラクになられちゃ困るんでな。没収させてもらうよ」
返事のないことを承知で短刀を奪いズボンの隙間に差す。
そして乱れた頭髪とネクタイを整えてーーーー
ピ♪ポ♪パ♪
プルルル・・・・・・
「山崎君。黒真会を一匹捕まえた。大丈夫だ・・・・・・今回は生きている」
『流石です・・・・・・』
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ピッ!
「では失礼するよ名もない刺客君・・・・・・次はもっと強くなってから、遊ぼうじゃないか」
「・・・・・・ちょう! 会長!!」
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