死が二人を分かつまで

KAI

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”アイドル篇”

【刺客と闘神】

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 ・・・・・・人工的に作られた公園内の林の中で。



 喉を圧迫されていたサスペンダーの男が、解放されて咳き込んでいた。



「ゲホッ・・・・・・ゴホッ・・・・・・」


「まったく、なっていない」



 地響きのようなドスの利いた声・・・・・・



 高級スーツの紳士が、やれやれと首を振った。



「君たちにルールがないとは言え、甘い甘い若者の青春を邪魔してはいけない・・・・・・そうじゃないかね?」


「だ・・・・・・誰だお前は!?」



 雨が・・・・・・上がった。



 雲の隙間から、月の淡い光りが差し込み、二人を照らす。



 サスペンダーの男は自分が対峙している人物を視認して、驚きを隠せなかった。



「き、貴様は・・・・・・ッッ!!」


「君らが会いたくて会いたくてたまらなかったのではなかったかな? 会いに来てあげたよ」



 紳士は太い首をバキボキと鳴らしながら、先ほどとはまるで逆の笑みを浮かべていた。



「さて・・・・・・そう言えば聞いてなかったね。君の目的を」


「・・・・・・昨年、私は芥川 月を殺し損ねた」


「ほう」


「その責を問われ・・・・・・『背水の陣』を刻んだ!」



 男は自分のシャツをめくり、腹を見せる。



 そこには一本の濃い横線が、腹部を横断している。



 刺青・・・・・・だが、どこかその源流である罪人の証のような・・・・・・そんな代物だ。



「次に失敗をすれば、この線に沿って腹を切る・・・・・・そして、今日あの御方から命じられたのだ・・・・・・芥川 月の首を!!」


「・・・・・・京月きょうげつ 冬紀ふゆき

 腹に刺青を彫られたこの男性は・・・・・・芥川が昨年、冬紀と談笑していたBARのバーテンダーだった。



 あの時、功を焦って青酸カリによる毒殺を仕掛けたが、芥川には見破られ、師匠である冬紀には呆れられ、大失敗を期していた。



 その後に刺青を入れられ、汚名返上の最後のチャンスを与えられたのであった。



「ハッハッハ・・・・・・君ごときが芥川に勝てるとでも?」


「『』に負けは許されない・・・・・・勝つしかない」



 だが・・・・・・



「目標は変わった・・・・・・貴様を殺せば、あの御方もさぞやお喜びになられるだろう」


「・・・・・・この私の首をとると?」


「卑怯がない我々の方が強いに決まっている・・・・・・それを証明する!!」



 ブンッ!!



 ビュボボボッッ!!



 鎖鎌が目にも留まらぬ早さで回転を始めた。



 手首の動きだけで切れ味のよい鎌を、そして重い鎖を操るのだ。



 並大抵の武芸じゃない。



 しかも・・・・・・



「スンスン・・・・・・ふむ。毒が塗られているな」


「だから言っただろう? 卑怯を許容し、殺人術を極めた我らに敗北はない!!」


「であれば・・・・・・今夜、君は勝つと?」


「その通り・・・・・・」


「ククク・・・・・・ハーハハハ!!」



 紳士が大笑い。



「面白いジョークがあったものだ・・・・・・そんなモンでこの私を殺せる?」


「・・・・・・そろそろ行かせてもらうぞ・・・・・・シュッ!」


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