死が二人を分かつまで

KAI

文字の大きさ
上 下
217 / 300
”アイドル篇”

【セツナの気遣い】

しおりを挟む


「ありがとうございました!!」


「お気をつけて帰ってください。また明日・・・・・・」



 カンとレンは他の仕事もあるのでタクシーで帰った。



 しかし、夜になってもゴウは今だにマットの上で跳び蹴りの反復練習をしていた。



「あまりやり過ぎも良くないですよ」



 芥川がタオルを手にゴウに声をかけた。



「ウス・・・・・・でも、時間がないんで・・・・・・」


「貴方は身体が大きい分、跳ぶのは難しいかもしれません・・・・・・丹波さんが言っていたように、廊下の壁を蹴り上げて戦う・・・・・・といった魅せ方もあると思いますよ」


「・・・・・・諦めたくないッス」


「では・・・・・・私とやりましょうか・・・・・・見本があった方がやりやすいでしょう?」


「! ありがとうございます!!」


「コツは上へ跳ぼうとしないこと・・・・・・学校でやった幅跳びのように弓なりに放物線を描くようなイメージで・・・・・・」



 ワンツーワンのこの練習を、新樹は羨ましく思い、セツナはジッと見学していた。



 そして時刻は七時になろうとしていた。



 稽古時間としてはむしろ始まりの時間だったが、ゴウにも仕事がある。



「今日はここまでです。身体を柔らかくした方がいいので、お風呂上がりに股関節と足を伸ばしてみてください」


「ウスッッ! ありがとうございました!!」


「いい返事です・・・・・・では」



 着替え終わり、ゴウが出て行った。



 すると・・・・・・



「先生・・・・・・」



 新樹が苦い顔をして近づいてきた。



「どうなされました?」


「・・・・・・コレ!!」



 差し出してきたのはスマートフォン。



『『ネコ・らぼ』カンはセンスの塊!? 組手を盗み見ました!!』



「早速、先日の組手が拡散されてますよ!?」


「あ~盗撮されてたアレですか」


「先生がまるでカンにぶちのめされているかのように・・・・・・いいんですか!?」


「いいんじゃないですか?」


「いや! いいわけないだろ!!」



 二人が喧しく騒いでいた・・・・・・



 ポツポツ・・・・・・



 ザー・・・・・・



 セツナが窓の外を見ると、急に雨が降ってきていた。



 ・・・・・・ゴウはたしか歩きで帰ると言っていた。



 そして、傘のようなものは持っていなかった・・・・・・



 ・・・・・・チラリ。



「ですから!! 先生が『弱い』とか言われてるんですって!!」


「顔も知らない人間に言われても、なんとも思いませんねぇ~」


「そういう問題じゃないって!!」



 あの二人・・・・・・気がついていない。



 ・・・・・・行こう。



 セツナは道着姿のまま、道場の玄関に置かれている傘を掴んで外に出た。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

あやかし温泉街、秋国

桜乱捕り
キャラ文芸
物心が付く前に両親を亡くした『秋風 花梨』は、過度な食べ歩きにより全財産が底を尽き、途方に暮れていた。 そんな中、とある小柄な老人と出会い、温泉旅館で働かないかと勧められる。 怪しく思うも、温泉旅館のご飯がタダで食べられると知るや否や、花梨は快諾をしてしまう。 そして、その小柄な老人に着いて行くと――― 着いた先は、妖怪しかいない永遠の秋に囲まれた温泉街であった。 そこで花梨は仕事の手伝いをしつつ、人間味のある妖怪達と仲良く過ごしていく。 ほんの少しずれた日常を、あなたにも。

今日から、契約家族はじめます

浅名ゆうな
キャラ文芸
旧題:あの、連れ子4人って聞いてませんでしたけど。 大好きだった母が死に、天涯孤独になった有賀ひなこ。 悲しみに暮れていた時出会ったイケメン社長に口説かれ、なぜか契約結婚することに! しかも男には子供が四人いた。 長男はひなこと同じ学校に通い、学校一のイケメンと騒がれる楓。長女は宝塚ばりに正統派王子様な譲葉など、ひとくせある者ばかり。 ひなこの新婚(?)生活は一体どうなる!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

下宿屋 東風荘

浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。 ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。 その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで? 妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。 ※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。 ※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。 読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。 エブリスタ様にて。 2017年SKYHIGH文庫最終選考。 2018年ほっこり特集掲載作品

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

大阪の小料理屋「とりかい」には豆腐小僧が棲みついている

山いい奈
キャラ文芸
男尊女卑な板長の料亭に勤める亜沙。数年下積みを長くがんばっていたが、ようやくお父さんが経営する小料理屋「とりかい」に入ることが許された。 そんなとき、亜沙は神社で豆腐小僧と出会う。 この豆腐小僧、亜沙のお父さんに恩があり、ずっと探していたというのだ。 亜沙たちは豆腐小僧を「ふうと」と名付け、「とりかい」で使うお豆腐を作ってもらうことになった。 そして亜沙とふうとが「とりかい」に入ると、あやかし絡みのトラブルが巻き起こるのだった。

処理中です...