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”アイドル篇”
【セツナの気遣い】
しおりを挟む「ありがとうございました!!」
「お気をつけて帰ってください。また明日・・・・・・」
カンとレンは他の仕事もあるのでタクシーで帰った。
しかし、夜になってもゴウは今だにマットの上で跳び蹴りの反復練習をしていた。
「あまりやり過ぎも良くないですよ」
芥川がタオルを手にゴウに声をかけた。
「ウス・・・・・・でも、時間がないんで・・・・・・」
「貴方は身体が大きい分、跳ぶのは難しいかもしれません・・・・・・丹波さんが言っていたように、廊下の壁を蹴り上げて戦う・・・・・・といった魅せ方もあると思いますよ」
「・・・・・・諦めたくないッス」
「では・・・・・・私とやりましょうか・・・・・・見本があった方がやりやすいでしょう?」
「! ありがとうございます!!」
「コツは上へ跳ぼうとしないこと・・・・・・学校でやった幅跳びのように弓なりに放物線を描くようなイメージで・・・・・・」
ワンツーワンのこの練習を、新樹は羨ましく思い、セツナはジッと見学していた。
そして時刻は七時になろうとしていた。
稽古時間としてはむしろ始まりの時間だったが、ゴウにも仕事がある。
「今日はここまでです。身体を柔らかくした方がいいので、お風呂上がりに股関節と足を伸ばしてみてください」
「ウスッッ! ありがとうございました!!」
「いい返事です・・・・・・では」
着替え終わり、ゴウが出て行った。
すると・・・・・・
「先生・・・・・・」
新樹が苦い顔をして近づいてきた。
「どうなされました?」
「・・・・・・コレ!!」
差し出してきたのはスマートフォン。
『『ネコ・らぼ』カンはセンスの塊!? 組手を盗み見ました!!』
「早速、先日の組手が拡散されてますよ!?」
「あ~盗撮されてたアレですか」
「先生がまるでカンにぶちのめされているかのように・・・・・・いいんですか!?」
「いいんじゃないですか?」
「いや! いいわけないだろ!!」
二人が喧しく騒いでいた・・・・・・
ポツポツ・・・・・・
ザー・・・・・・
セツナが窓の外を見ると、急に雨が降ってきていた。
・・・・・・ゴウはたしか歩きで帰ると言っていた。
そして、傘のようなものは持っていなかった・・・・・・
・・・・・・チラリ。
「ですから!! 先生が『弱い』とか言われてるんですって!!」
「顔も知らない人間に言われても、なんとも思いませんねぇ~」
「そういう問題じゃないって!!」
あの二人・・・・・・気がついていない。
・・・・・・行こう。
セツナは道着姿のまま、道場の玄関に置かれている傘を掴んで外に出た。
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