死が二人を分かつまで

”アイドル篇”

【久々の丹波ちゃん】

　撮影まで四日を切ったーーーー



　三人はあらかたの型ができ、スタミナもついてきた。



　残るは･･････大スクリーンで映ばえる戦闘描写。



　それに耐えうる肉体と精神、それと技だった。



　通常、こういった『魅せる』ために『武』が用意できるのは『演武』だ。



　実際の戦闘では起こり得ないシチュエーションでの戦いや、攻撃を想定しての約束組手である。



　しかし、芥川のある意味狂った頭にはそんな考えはなかった。



　むしろ、数日で演武を叩き込んで覚えさせるよりも、もっと効率的な方法を思いついたのである。



　それはーーーー



「呼ばれて飛び出て丹波ちゃんやで～！！」



　道場に真っ赤なスーツを身に纏った、ヤバいヤツを呼ぶことだった。



「･･････芥川さん」


「はい？」


「その人知ってますよ･･････ヤクザですよね･･････」


「流石！　こちらの方は大和組系仁侠会会長　丹波　市郎さんです」


「シクヨロやで～」


「いや･･････アイドルに反社はマズいですって！！」


「御安心を･･････この道場に通じる道路全てに変装した仁侠会の方々が見張りとして配置されており、ネズミ一匹入って来れないように手配しております」


「なんや芥川ちゃんおもろいことがあるって言うから来てみたら、大人気のアイドルさんやないか！」



　坊主頭をざらりと撫でて、指をコキコキ鳴らしている。



「でぇ･･････このガキたちに何せい言うの？」


「丹波さんのありのままの姿を見せていただきたい」


「あぁ？　全裸になればええんか？」


「違う違う･･････ケンカです」



　ケンカ･･････その三文字を聞いた瞬間に丹波の脳みそからイケナイ物質が分泌された。



「ヒーヒヒ･･････ヒャヒャヒャ！！　なんや芥川ちゃ～ん！！　ケンカしたいならそう言ってやぁ～！！」


「ええ。思う存分、ケンカしていただきます･･････ただし」


「なんや？」


「ドスは禁止です」


「･･････まあ、ええけど」


「ちょっと！！」



　新樹が慌ててセツナと『ネコ・らぼ』たちの輪に芥川を引っ張っていった。



「何考えてるんですか！？」


「いや～こう映えって必要でしょ？　パッと一番最初に思いついたのが丹波さんでして」


「はぁ？」


「映画はたしか『高校の生徒会の裏の顔は、放課後不良たちを成敗しているヒーロー』って設定でしたよね？」


「はい」


「つまりは･･････相手は乱暴な悪漢です」


「そうですね･･････白真会で修行中の」


「そうなれば、やはり映えるケンカが必要･･････丹波さんの戦いを見たことのある新樹さんとセツナさんは知ってますよね？」



　たしかに･･････いや、しかし･･････



「丹波さんの動きに注目して下さい。もちろん、録画します･･････貴方がた三人が理解するまで何回でも私たちは戦います･･････脳みそに焼き付けて下さい」


「芥川ちゃん！！　もうたまらんわぁ～！！　早うやろうや！！」


「はいはい･･････」


「で？　ワシはホンマにケンカするだけでええねんな？」


「はい。私と」


「ヒヒヒ･･････ほんじゃあ･･････行くでぇ！！」