死が二人を分かつまで

KAI

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”アイドル篇”

【スパーリング:カンVS芥川・・・・・・?】

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 主審は新樹だ。



「互いに礼!!」



 カンは平均身長ほど。体重はかなり軽い。



 一方で芥川は鍛え抜かれて、身長も一八八センチもある。



「無理っしょ・・・・・・」


「物は試しです・・・・・・さあ来い!!」



 その言葉通り、芥川は両腕を拡げて胸を貸した。



 よく分からないが・・・・・・カンは習ったばかりのキックを放った。



 パスン・・・・・・



 なんとも勢いのない、脆弱な蹴り・・・・・・!?



「いったぁぁぁ!」



 芥川が苦悶の表情を浮かべている。



 効いている!?



 た、たたみかけねば!!



 えっと・・・・・・さっきはローキックだったから・・・・・・腹への中段キック!?



 ・・・・・・と、そんな思考が丸わかりの棒立ち状態でいたカンが動き出した。



 前蹴りーーーー



 空手の最も基本的で最初に習う技だ。



 タスン・・・・・・



 これまた威力の『い』の字もない・・・・・・



「ぐふぅ!!」



 芥川の身体がくの字に曲がり、身をかがめる。



 こ・・・・・・ここか!?



 はい・・・・・・ハイキック!!



 パシィィン



 蚊を殺す程度の蹴り・・・・・・により、芥川はぐるんと一回転をした。



 そして・・・・・・



 ドオ・・・・・・



 倒れ伏した・・・・・・



「い、一本!!」



 一本・・・・・・?



 やった張本人であるはずのカンですら困惑している。



 この数日で嫌でも分かった、芥川の強さ。



 こんな、素人の蹴り技など、通用するわけが・・・・・・



 ピロン♪



 !?



「見つかっちゃった! 逃げよ!」


「カンちゃんチョーカッコイイ!!」



 ささっと逃げ去っていったのは、スマホを持った若い女子たち。



 道場の扉の隙間から、こっそりと覗き、あまつさえ録画までしていたらしい。



 とーーーー



 ムクッ!



「まったく・・・・・・無断での撮影はやめてもらいたいんですけどねぇ」



 無傷の芥川がすんなりと立ち上がり、作務衣についた埃をポンポン落としていた。



 ・・・・・・ようやく、新樹にもカンにも、遠くから見ていたレンと横になっているゴウにも理解できた。



「・・・・・・ワザと?」


「言い方が悪いですよカンさん~! 演武って言ってくださいよ~!」


「・・・・・・あの厄介ファンに、気づいてたんですか?」


「ええ。足音が通り過ぎないなぁと思っていたら、微かにスマホをいじっていたものですから」


「・・・・・・だったら、余計・・・・・・なんでワザと負けたりしたんです」



 カンは睨んでいるのか悲しんでいるのか分からない曖昧な表情になった。



「・・・・・・ボクらのこと、うざったいはず・・・・・・ファンの前で恥をかかせるくらい・・・・・・」


「弟子に恥をかかせるわけにゃ~いかにゃいですよ~」



 インプラントの歯をニカッと光らせて笑う。



「まあ助かりましたよ。ゴウさんとセツナさんの組手の後に来てくれたので」



 それに・・・・・・



「いいコンビネーションでしたよ! ローからの中段・上段の蹴り! お見事!」



 アッハッハッハと豪快に笑う芥川に畏怖の念を抱くカン。


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