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”アイドル篇”
【稽古初心者あるある】
しおりを挟む「声が小さい!!」
「せいっ」
「せい・・・・・・」
三日経つ。
カンもレンも、気合いすらまともに出せていない。
『武』の真髄は、気合いにこそある。
強く見せるだけじゃなく、人体的にも合理的なのだ。
大声を張り上げると、筋肉に力が入り、さらに怪我の原因になりうる余計な力みを外に出す。
しかし、それすらもできていない・・・・・・
・・・・・・ひとりを除いて。
「せいッッ!! せいッッ!!」
汗を流し、喉を焼いているのはゴウだった。
入門の日以来、あれほど開けていたピアスも指輪などのアクセサリーも全て外し、稽古に向いた服装で来ている。
「ゴウさん! 姿勢が高くなっています!! もっと腰を低く!!」
「ウス!!」
基本稽古が終わると、次は移動稽古。
道場を突いたり蹴ったりしながら、往復するのだ。
これがかなり辛い。
「はぁはぁ・・・・・・」
「ぜぇぜぇ・・・・・・」
「ふぅ・・・・・・」
「お三方、深呼吸を忘れずに」
深呼吸・・・・・・?
それどころじゃない!!
地べたにへたり込み、大の字になって休みたい!!
深呼吸なんてなんの休み時間にもならない・・・・・・!!
稽古初心者なら誰でも思うことだった。
「深呼吸は鼻から吸って、口から吐く!」
「はい・・・・・・」
「は・・・・・・」
「ウスッ・・・・・・」
もう一ミリも動きたくない・・・・・・
「深呼吸ごとき・・・・・・と思っていませんか? 実戦の場において、呼吸が二回吸えるのと吸えないのではその後の結末に大きな違いが出てきますよ」
「だから・・・・・・ボクらがやるのは・・・・・・ケンカじゃないから・・・・・・って・・・・・・」
「無駄口が聞こえるうちはまだまだぁ! あと十往復!!」
「マジ・・・・・・かよ・・・・・・」
「ウス!!」
移動稽古が終わり・・・・・・
「それでは五分だけ休憩です。しっかりと水分補給を忘れずに」
日程と照らし合わせると、残りは一週間ほど。
いかに芥川が優秀といえども、一週間で一人前にはできない。
しかし、映画館の大スクリーンで格闘技経験者たちに「おっ! いいモン持ってンじゃん」と唸らせる程度にはできる。
ゆえに、芥川の技量も試されているわけだ。
「マジ・・・・・・殺される・・・・・・」
「・・・・・・」
汗を拭い、ミネラルウォーターを飲んでいるゴウに、カンが声をかけた。
「なあ、もう充分だって・・・・・・明日からはマネージャーに『怪我の心配があるから休む』って言わせよう」
「・・・・・・無理だな」
「はぁ?」
「・・・・・・アイツ、たぶん俺らの家にまで来て引きずってでも連れてくるぜ」
「有り得ないって・・・・・・」
「・・・・・・そう思うんなら休めばいいんじゃねぇか? 俺はやる」
「・・・・・・へいへい・・・・・・仲間が続けるって言うならやらなきゃいけない・・・・・・リーダーの辛いところだにゃ~」
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