死が二人を分かつまで

KAI

文字の大きさ
上 下
202 / 300
”アイドル篇”

【稽古初心者あるある】

しおりを挟む


「声が小さい!!」


「せいっ」


「せい・・・・・・」



 三日経つ。



 カンもレンも、気合いすらまともに出せていない。



『武』の真髄は、気合いにこそある。



 強く見せるだけじゃなく、人体的にも合理的なのだ。



 大声を張り上げると、筋肉に力が入り、さらに怪我の原因になりうる余計な力みを外に出す。



 しかし、それすらもできていない・・・・・・



 ・・・・・・ひとりを除いて。



「せいッッ!! せいッッ!!」



 汗を流し、喉を焼いているのはゴウだった。



 入門の日以来、あれほど開けていたピアスも指輪などのアクセサリーも全て外し、稽古に向いた服装で来ている。



「ゴウさん! 姿勢が高くなっています!! もっと腰を低く!!」


「ウス!!」



 基本稽古が終わると、次は移動稽古。



 道場を突いたり蹴ったりしながら、往復するのだ。



 これがかなり辛い。



「はぁはぁ・・・・・・」


「ぜぇぜぇ・・・・・・」


「ふぅ・・・・・・」


「お三方、深呼吸を忘れずに」



 深呼吸・・・・・・?



 それどころじゃない!!



 地べたにへたり込み、大の字になって休みたい!!



 深呼吸なんてなんの休み時間にもならない・・・・・・!!



 稽古初心者なら誰でも思うことだった。



「深呼吸は鼻から吸って、口から吐く!」


「はい・・・・・・」


「は・・・・・・」


「ウスッ・・・・・・」



 もう一ミリも動きたくない・・・・・・



「深呼吸ごとき・・・・・・と思っていませんか? 実戦の場において、呼吸が二回吸えるのと吸えないのではその後の結末に大きな違いが出てきますよ」


「だから・・・・・・ボクらがやるのは・・・・・・ケンカじゃないから・・・・・・って・・・・・・」


「無駄口が聞こえるうちはまだまだぁ! あと十往復!!」


「マジ・・・・・・かよ・・・・・・」


「ウス!!」



 移動稽古が終わり・・・・・・



「それでは五分だけ休憩です。しっかりと水分補給を忘れずに」



 日程と照らし合わせると、残りは一週間ほど。



 いかに芥川が優秀といえども、一週間で一人前にはできない。



 しかし、映画館の大スクリーンで格闘技経験者たちに「おっ! いいモン持ってンじゃん」と唸らせる程度にはできる。



 ゆえに、芥川の技量も試されているわけだ。



「マジ・・・・・・殺される・・・・・・」


「・・・・・・」



 汗を拭い、ミネラルウォーターを飲んでいるゴウに、カンが声をかけた。



「なあ、もう充分だって・・・・・・明日からはマネージャーに『怪我の心配があるから休む』って言わせよう」


「・・・・・・無理だな」


「はぁ?」


「・・・・・・アイツ、たぶん俺らの家にまで来て引きずってでも連れてくるぜ」


「有り得ないって・・・・・・」


「・・・・・・そう思うんなら休めばいいんじゃねぇか? 俺はやる」


「・・・・・・へいへい・・・・・・仲間が続けるって言うならやらなきゃいけない・・・・・・リーダーの辛いところだにゃ~」



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...