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”アイドル篇”
【やる気以前の問題】
しおりを挟むさっきまで愛嬌を振りまいていたはずのカンは、カラフルなシャツの上にダウンを着始めた。
おいおい・・・・・・これから稽古するんじゃないのかよ・・・・・・
「寒すぎ! 無理無理! 道着なんか着て稽古なんか!」
「マジ同感・・・・・・マネ。なんでこんな映画なんかの仕事受けたの?」
「そ、それは知名度アップに繋がると・・・・・・」
「チッ・・・・・・今どき映画の影響力なんか高が知れてるっつーの」
「す、すみません・・・・・・レンさん・・・・・・」
「・・・・・・お前ら」
逆に面白くなるほど豹変しまくっているアイドル(?)二人に対して、今まで沈黙を保ってきたゴウが口を開いた。
「仕事は仕事だ。金も、人手も、スポンサーもファンも動いている。それなのに俺たちがそんなんでどうする」
・・・・・・めっちゃ正論!!
てか・・・・・・真面目キャラポジお前かよ!!
「ゴウは難しく考えすぎなんだよ~」
カンは道場の靴脱ぎ用の段差に座ってへらへらと笑っていた。
「こんなん『頑張ってますアピ』に過ぎないって~」
「そうそう。第一、スタントマン使えば、俺らが頑張る必要ないって」
「スタントマンを使わないと言ったじゃねえか! ファンにウソつくのか!?」
「ダメ?」
「ぐ・・・・・・てめ・・・・・・!」
とーーーー
パアァァァァアンッッ!!
鼓膜を突き破るほどの破裂音!!
あまりの音に、温かいコーヒーを持ってきていたアシスタントらがこぼしてしまった。
気怠げだったカン・レンの二人の目も覚めたようだった。
「な、なんの音!?」
見ると・・・・・・芥川の両手が合掌している。
そこから、有り得ないことに湯気が立っていた。
「・・・・・・ここは神聖な道場・・・・・・無駄口は許しても、口喧嘩は許さない」
芥川からゆらゆらとオーラが漲っていた。
「これより、お三方には道着に着替えてもらい、稽古を始めます。あまり時間的猶予もないので、叩き込みますので覚悟してください」
ひと息にこう言うと、三人の背丈に合わせた新品の道着を持ってきた。
「ちょ、オッサン待ってよ」
カンがネコっぽい丸い目を大きくさせている。
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